近年、ブロックチェーン技術の進化により、新たな組織形態が注目を集めています。
その中でも特に注目されているのが「DAO(Decentralized Autonomous Organization)」です。
日本語では「分散型自律組織」と呼ばれる概念で、この先進的な組織形態は、従来の中央集権型組織とは異なる仕組みを持ち、参加者全員が意見を出し合い、意思決定を行い、自らを運営する形態を取っています。
本記事では、DAOの基礎知識から実際の事例、気になる将来性についてわかりやすく解説しますので、是非最後までご覧ください。
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目次
|分散型自律組織(DAO)とは?
DAOとは「分散型自律組織(Decentralized Autonomous Organization)」の略で、
Web3にまつわるバズワードのなかで最も世間をにぎわせている言葉のひとつです。
具体的には、人々が組織のように集合体をつくれるという概念を指します。
DAOに参加するには特別なトークン(暗号資産)を購入するか、すでに参加しているメンバーから受け取らなくてはなりません。
そのトークンにはDAOのメンバーであることの証明と、DAO内での投票権が付与されています。
これまでDAOは、「銀行口座を共有するインターネットコミュニティ」と表現されてきました。
理論的には個人またはグループが管理するわけではなく、運営の権利は分散されています。
DAOの構成員は過半数のメンバーから承認を得ることで、自動的に実行される「スマートコントラクト」のかたちでリソースの使い道を提案できます。
|Web3.0とは?
Web3.0は近年になって生まれた新しい概念であり、まだはっきりとした定義はありません。
既存のWebの問題点を解決できると期待されていて、次のあるべき姿を示す方向性のようなものと考えた方がよいでしょう。
これまでのWebの進化の流れを確認すると、Web3.0がどのようなものかを理解しやすくなりますのでこれまでの流れを解説していきます。
「Web1.0」は一般的に言われる特徴として「情報の伝達が一方向・一方的」だということが挙げられます。
インターネットの誕生により、誰でも広く情報を発信することができるようになりました。
しかし、黎明期は発信するためにサイト構築の知識が必要で、一部の発信者が作ったホームページを大多数が閲覧するのが一般的でした。
「Web2.0」は、現在我々が利用しているWebのことです。
SNSでの投稿に対する「いいね」やコメントなどで誰でも反応することができ、双方向のコミュニケーションができるのが大きな特徴です。
「Web3.0」は、分散とトラストレスが特徴となる次世代のWebのあり方です。
ブロックチェーンの技術などを用いたデータの分散管理が実現されると期待されています。
Web3.0ではブロックチェーンの技術が中心的な存在となります。Web2.0は双方向でありながらも大企業に情報が集中していました。
それに対してWeb3.0では情報・権限が分散され、多方向の情報伝達も可能になると考えられています。
|DAO(分散型自律組織)で何ができるのか?
ここでは、DAO(分散型自律組織)の特徴や仕組みについてより詳しくご紹介していきます。
DAO(分散型自律組織)の最も大きな特徴として中央集権的な管理者がいないことが挙げられます。
上述したように、組織のリーダーや支配者が存在しないので突然の運営方針の変更などが起こり得ず、組織の意思決定はブロックチェーン上に書き込まれたスマートコントラクトにより自動的に行われます。
投票権の機能を有するガバナンストークンの保有者は意思決定やルールの変更などを決める権利があります。
自律的に運営されるという点は従来の組織形態とは大きく異なる特徴と言うことができるでしょう。
DAOの仕組みの一つとして、国籍や性別などに縛られず誰でも運営に参加することができる特徴が挙げられます。
近年、性別や国籍によって職業の選択が制限されない傾向になってきたとはいえ、それでも世界的に見れば依然として自由に職業を選ぶことができない方は多いでしょう。
しかし、DAOであれば国籍や性別による制限を受けることはなく、世界中のどの地域からでも自由にDAOの活動に参加することが可能です。
また、基本的にDAOでは匿名性も認められているので、実名を明かさずに働くことができる点も株式会社などとは大きく異なる点と言えます。
|DAO(分散型自律組織)のメリット
ここからはDAOのメリットについてご紹介いたします。
透明性が高い
DAOは常に第三者から監視されており、透明性が高く、一部の人にしかメリットのないルールや制度が作られることはありません。
すべての取引がブロックチェーン上に記録されチェックされているため、不正が起きにくい特徴があります。
DAOに参加するユーザーは自由に提案を行い、多数決や投票によって提案の可否を決定します。
DAOでは、全員に責任が分散化しているので、自律的かつ透明性が高い組織として成長していきます。
だれでも参加できる
DAO関連の仮想通貨を保有している人であれば、誰でも参加することができます。
DAOは自由度が高く、簡単に購入できるだけでなく、組織設立までのハードルも高くありません。
そのため、フリーランスとして活動している人が資金調達のためにDAOを設立したり、慈善団体が寄付を集めるためにDAOを設立することもあります。
誰でも参加でき、誰でも設立できる「自由度の高さ」は、従来の組織との大きく違った特徴と言えます。
ガバナンストークンを発行することにより資金調達もできる
上でも説明した通り、DAOではガバナンストークンを購入することで意思決定の投票権を得ることができます。
現在サービスを行っているDAOの多くがこのガバナンストークンを発行し、組織運営の資金調達を行っています。
ガバナンストークンの保有者にもメリットは存在し、Compoundなどの人気DAOでは「どの流動性プールにどれだけの報酬を分配するか」などの投票に参加することもできます。
このようにガバナンストークンの保有者が金融面でのメリットも受けられるようにすることで、注目のプロジェクトに対して多くのガバナンストークンを購入してもらえ、資金調達が容易になることが特徴です。
無駄なコストをカットできる
DAO最大の特徴は、組織から特定の管理者を排除して、取引に関する無駄なコストや処理を最小限に抑えることです。
組織の運営方針を利害関係の一致しているユーザーに任せることになるので、すべての投資家たちがDAOに参加することになります。
DAOでは、すべての取引がスマートコントラクトによって実行されます。よって、契約に関して、人が一つひとつ契約書を作成したり、印鑑をついたりする必要がありません。
一般的な組織の様にヒエラルキーがないため、いたずらに多くの部署を設けたり、人間関係で余計な気を遣ったり、忖度したりといったことも不要で、組織構造が簡潔化され、ストレスフリーな中で仕事が進められます。
スピーディーかつ低コストな組織体制になるため、ユーザー側のメリットは大きいです。
|DAO(分散型自律組織)の事例
次にDAOの事例について紹介していきます。DAOの「A」は「Autonomous(自律的)」という意味ではありますが、実際、現存するDAOは未だ自律的ではない(設立者や意思決定者が存在している)ケースが多いといわれています。
アメリカの暗号資産取引所Coinbaseの元最高技術責任者であるBalaji Srinivasan氏もその点について述べ、権限分散の仕方という視点から、DAOを3つに分類しています。
その分類は以下です。
1.Autonomous DAO(自律的なDAO):管理者やCEOが存在せず、スマートコントラクト上で真に自走する
2.Bureaucratic DAO(官僚主義的なDAO):複数の意思決定者が存在し、混乱が生じている
3.CEO DAO(最高責任者が存在するDAO):1人の明確な意思決定者が存在する
自律的なDAOと1人の意思決定者が存在するDAOの方が、官僚主義的なDAOよりも「メンバーの権利を守る」という点で優れています。
・The DAO-世界初のDAO

出典:https://www.decentral.ee/2018/08/15/decentralized-autonomous-future/
次に世界で初めて実用されたDAOについて紹介いたします。
昨今耳にする「DAO」が初めて誕生したのは、2016年4月にイーサリアムのブロックチェーン上に構築された「The DAO」です。
ドイツのIoTベンチャー企業であるStock.it社により設立されました。
The DAOは、VCファンドのような機能を期待して設立され、世界中の投資家がトークンを購入し、約1億5000万ドルの資金を集めることに成功しました。
しかし、The DAOは失敗に終わります。
その要因は主に「技術的要因」と「法的要因」の二つです。
まず「技術的要因」としては、スマートコントラクトの脆弱性を見抜かれ資金の3分の1ほどが盗まれてしまうという事件が起きました。
そして「法的要因」は、資金提供の見返りに得るトークンが「証券」に該当する可能性があるとし、DAOの運営にまつわる課題が多く浮上しました。
・MakerDAO-DeFi(分散型金融)運動を行うDAO

出典:https://thedefiant.io/makerdao-is-piling-on-fees-as-dai-demand-booms/
MakerDAOは、2015年に設立されたDAOで、イーサリアムブロックチェーンでの借入、貯蓄、および安定した暗号通貨を実現するための技術を開発しています。
MakerDAOは、ひとつの「DeFi(分散型金融)」運動と捉えるとわかりやすいかもしれません。
つまり、中央の金融機関が不在で、仲介を必要としない暗号通貨の貸し借りを可能にしたサービスです。
従来は、暗号資産を借りることはとても大変というイメージがありました。
というのも、暗号資産の多くが不安定で、その価値が乱降下することもあったため、借入額と返済額が短期間のうちに変わってしまう可能性が大いにあったのです。
そこで、返済額を見通せるようにしようという考えのもと、MakerDAOが生まれたとされています。
・PleasrDAO-NFT共同購入のためのDAO

出典:https://cryptosaurus.tech/pleasrdao-partners-with-amber-group-defi-leaders-early-nft-collectors-and-digital-artists/
PleasrDAOは、NFTの共同購入を目的として設立されたDAOです。
高価値のNFTに共同で投資し、スマートコントラクトを通じてそれらの所有権を共有しています。
元々は、デジタルアーティストpplpleasrがUniswapV3の設立を記念して作成したNFTを購入するためにTwitterを通じて設立されました。
このオークションでの収益は、アジア系アメリカ人と太平洋諸島に住むマイノリティのコミュニティを支援するために使われたそうです。
現在もその活動は続いており、Edward SnowdenのNFTや、ヒップホップ史上において最大級のインパクトを残したクルーWu-Tangの、世界に1枚しか存在しないアルバム「Once Upon a Time in Shaolin」などを共同購入しています。
|DAO(分散型自律組織)の将来性
ここではDAOの将来性や今後どのようになっていくのかについてご紹介していきます。DAOへの参加に興味が出てきた方はぜひ確認してみてください。
株式会社→DAOへ変容していく
今後DAOが一般に浸透していくことで、株式からDAOへ運営形態を変えていく企業が増えていくことが考えられます。
最近では、元ZOZO代表取締役の前澤友作さんが「MZDAO(エムズィダオ)」というDAOによるコミュニティを立ち上げ、その注目度が高まりました。
MZDAOで具体的にどのような事業を行っていくのかはまだ明らかになってはいませんが、事業内容から議論に参加できることが話題を集めているようです。
DAOは組織としての透明性が非常に高いことをメリットとして挙げていますので、寄付金を募集するチャリティー事業やクラウドファンディング形式の有志による新規事業とも相性が良いとされています。
これまで株式会社やNPO法人などが組織形態の主流でしたが、今後は様々な業種でDAOによる組織運営がされていく可能性も十分に考えられます。
DAOへの注目が高まることで多くの投資が集まる
今後、さらにDAO自体が注目を浴びることで、様々なDAOのプロジェクトに多くの投資が集まることが考えられます。
特に近年ではDeFi(分散型金融)と呼ばれる金融システムの市場規模が大きく伸びており、DeFiプロトコルを開発・運営しているDAOには継続して投資がされているようです。
多くの投資の資金が集まることで、今後様々なサービスを提供するDAOが新しく誕生することが期待できます。
ガバナンストークンの価値が高まる
DAOへの注目が集まることで、ガバナンストークンの価格も上昇することが考えられます。実際に先ほど例に挙げたCompoundなどのDAOが発行するガバナンストークンは大きく価格を伸ばしています。
今後さらにDAOへの注目が高まることで通貨自体の上昇も期待することができるでしょう。
また、ガバナンストークンは保有することでCompoundのように「どの流動性プールにどれだけの報酬を分配するか」といった投票権を得られるので、一般層にDAOが広まることでDAOへの参加者数も伸びることが期待されています。
|DAO(分散型自律組織)の今後の課題
ここまで紹介した通り DAO には透明性や公平性を保てるなどのさまざまなメリットがあります。
しかし、同時に DAO ならではの課題も抱えています。
ここからは、DAO の欠点やリスクについて紹介していきます。
ハッキングされるリスクをはらんでいる
1つ目は、ハッキングの可能性があることです。
ブロックチェーン上で取引が行われる DAO では、どうしてもハッキングのリスクが残ります。
実際に、上述のように「The DAO 」がハッキングを受け、約 360 万 ETH(当時の価格で約52億円)を盗まれる事件が発生しています。
同事件では、参加者の合意により、ブロックチェーンを盗難前の状態に戻すことで資産を取り戻しています。
しかし、DAO では法的な整備が追い付いていない部分も大きいため、たとえ被害を受けても補償されるとは限りません。
このようなリスクを理解した上で参加する必要があるでしょう。
業界のスピードに法的土台が整っていない
2つ目は、意思決定に時間がかかりやすいことです。
先述の通り、DAO の大きな特徴は中央に管理者を置かずに民主的に運営することです。
これはメリットでもありますが、一方で意思決定が遅くなってしまうというデメリットにも繋がります。
原則として、意思決定の際にはガバナンストークンによる投票が必要になるので、万が一サービスがハッキングにあった場合や、欠陥が見つかった場合などの不測の事態に対して、スピーディに対応できないリスクがあります。
中央集権的な従来の企業組織などのように、問題に迅速に対応できないことは一つのデメリットと言えるでしょう。
|DAO(分散型自律組織)を運営してみたい方へのアドバイス
先述の通り、DAO への参加は組織が発行しているトークンを購入すれば可能となります。
それでは、自分で DAO を運営したい場合にはどうすれば良いのでしょうか。
DAO が成立するためには、「投票メカニズム」「ガバナンストークン」「コミュニティ」「資金管理・投票・提案のシステム」が必要となります。
従って、DAO を運営するにあたっては、このような技術を提供してくれるサービスを利用する必要があります。
特に代表的な DAO を作成・運営するアプリケーションとしては「 Aragon 」が挙げられます。
DAO を作成しガバナンストークンを発行したり、それを使って意思決定したりできるサービスで、いくつもの有名プロジェクトが Aragon を利用しています。
|DAO(分散型自律組織)の将来性まとめ
最後に、DAOは仮想通貨の歴史に新たな1ページを刻んでいます。
DAOがどの程度まで人間が造った組織を壊していくのかは分かりませんが、DAOのガバナンスモデルは、特に仮想通貨関連のコミュニティにおいて成功しています。
まだまだ課題があるもののWeb3.0の実現において必要不可欠な要素であり、これからどんどん発展していくことになります。
現在は、仮想通貨界隈でのDAOが多いですが、今後は、他分野でも活躍することが予想されます。
いつか、何万ものDAOが存在する日がやって来るでしょう。
この革新的な波に乗り、DAOに参加するには今が絶好の機会ではないでしょうか。