Unreal Engineはゲーム制作の現場で広く利用されているプラットフォームです。
高度なプログラミングを必要とすることなくゲーム制作が可能であるため、これから学びたいと思っている方は多いはずです。
2022年4月には最新バージョンのUnreal Engine5がリリースされています。
本記事ではそんなUnreal Engine5の概要から、新たに可能になった機能を中心に解説していきます。
|Unreal Engineとは
Unreal Engineとは、アメリカのEpic Games社が開発した3D制作プラットフォームです。
1998年に「Unreal Engine1」が発表され、バージョンアップを重ねてきました。
そして、2022年4月には最新バージョンとなる「Unreal Engine5」がリリースされています。
Unreal Engine5ではプログラミング技術を必要とすることなく、高品質なゲーム制作が可能となりました。
基本的に無料で利用できる点も大きな魅力ですが、制作物の総収入が100万ドル(約1億3千万円)を超えた場合には5%のロイヤリティを支払う必要があります。
また、ゲームだけではなく建物や自動車の設計、映画、アニメーションといった幅広い分野において活用されています。
Unreal EngineとUnityの違い
ゲーム市場においてUnreal Engineは、Unityに次ぐ第二位のシェアです。
Unityは一部の機能が有料であるのに対し、Unreal Engineは基本無料。
そして、2Dゲーム開発が得意なUnityと、3Dゲーム開発が得意なUnreal Engineと差別化がなされています。
使用言語についても、言語に関してもUnreal Engineは「C++」、Unityは「C#」が一般的など、若干の違いがあるので制作物に応じて選択する必要があるでしょう。
|UE5とUE4との違い
2022年4月にリリースされたUnreal Engine5ですが、一世代前のUnreal Engine4からどのように変化したのでしょうか。
こちらでは、主な変更点について3つの項目に沿って解説していきます。
UIの変更
ゲームの制作手法やエディタ自体の機能についてはほとんど変更がありませんが、大きな違いとしてUI(User Interface)の一部が変更されています。
Unreal Engine5では、それぞれのウィンドウの開閉が簡単にできるようになり、ビューポート(ゲーム画面)の視認性が向上しました。
そのため、制作作業をよりスムーズに進めることができるようになったといえるでしょう。
細かい設定や機能ボタン等はそれぞれで共通していますので、Unreal Engine5を利用する場合でも、前バージョンのノウハウをそのまま流用できるはずです。
ショートカットキーについては、若干の変更が入っていますので、制作過程において多様されている場合は注意が必要となります。
グラフィックがさらに美しく
Unreal Engine5は全バージョンと比較して、グラフィック性能が大幅に向上しました。
グラフィック性能の向上の大きな要因については、「Nanite」や「Lumen」という新機能が搭載されたからです。
それぞれの機能詳細については後述しますが、映画さながらの映像を手軽に再現できることは大きな進化といえるはずです。
より綺麗でリアルなゲーム描写の実現は、多くのクリエイターにとって喜ばしい出来事でしょう。
近年のゲームは現実世界と見分けがつかないレベルのグラフィックを持ち合わせているものも少なくありません。
プレイヤーがゲームの世界観に没頭するには、映像表現の幅は重要な要素です。
Unreal Engine5の圧倒的なグラフィック性能によって、これから多くのゲームが制作されることになるでしょう。
ゲーム素材を簡単にゲームに追加できるようになった
Unreal Engine5には無料で利用できるゲーム素材が大量に用意されており、それらを簡単にゲーム上に追加できるようになりました。
この機能は「QuixelBridge」というツールを導入したことで実現しています。
追加できる素材としては草木、石や建設物の3Dモデルや地面の柄などのテクスチャが存在しています。
コンテンツブラウザで追加してQuixelコンテンツを追加を選択することで、QuixelBridgeが開かれます。
任意の素材をクリックし、使用しているコンピュータへダウンロードするだけで、簡単にフィールド上に配置できるのです。
直感的な操作で世界観を構築できるようになりましたので、思い通りのゲーム制作が可能となるでしょう。
|Unreal Engine5の新機能
前述したグラフィック性能において簡単にお伝えしましたが、Unreal Engine5には様々な新機能が搭載されています。
こちらではそれらの新機能について、それぞれ解説していきます。
Nanite
Naniteは高性能レンダリングシステムと呼ばれる機能であり、超高解像度の3Dモデルをリアルタイムで描画することが可能です。
さらに、自動でLOD(Level Of Detail)の実施が可能となっています。
LODとは同じオブジェクトでポリゴン数が異なる3Dモデルを何パターンか用意し、カメラの距離によってモデルを差し替えるといった方法です。
従来のオープンワールドゲームなどでは、基本的に同じ3Dモデルを複数用意してカメラの距離に応じてモデルを差し替える必要がありました。
しかし、Naniteによってその作業が大幅に簡略化されることになったのです。
Naniteは簡単にオンオフを切り替える事ができ、表示画面に合わせて3Dモデルのポリゴン数を自動調整します。
そのため、負荷を抑えたレンダリングが実現しました。
Lumen
Lumenは間接光や反射を考慮したライティングの計算を、リアルタイムで実施できるシステムです。
動的なグローバルイルミネーション(GI)や反射を計算することによって、非常にリアリティのある光の表現が可能になりました。
従来、ゲーム表現において間接光を反映させる事は容量も重くなる上、技術的にも難しかったことから、ごまかしながら表現していました。
しかし、Lumenによってゲームプレイ中に光を処理する負荷は抑えたまま、間接光を反映させられるようになったのです。
Lumenを使うと非常に自然で美しいライティングになるので、より美しく現実世界に近いゲーム表現が可能になりました。
World Partition
現在のゲームは広大なフィールドが魅力の一つですが、World Partitionはそのような大規模なワールドを効率的に管理するための機能となっています。
World Partitionはワールドを自動でグリッドで分割した上で、セル毎に自動でロードやアンロードなどが可能です。
そのため、ゲームプレイ中のプレイヤーからの距離によって必要なセル(マップの一部分)だけを自動描画するので、処理効率が格段に向上しました。
さらに、環境の夜バージョン、昼バージョンなどの変化をレイヤー変更によって簡単に切り替えられます。
レベル全体ではなく、アクタ毎に保存できるようになったことで、複数人による同時共同開発も実現しました。
MetaSounds
MetaSoundは、豊富な音響効果を簡単に実現するための新しいオーディオエンジンです。
複雑な編集が簡単に行えるようになっただけではなく、高性能なパフォーマンスで直感的に音声編集ができます。
こちらは、前バージョンに搭載されていた「サウンドキュー」をアップデートしたものとイメージしていただければ理解しやすいかもしれません。
シンセサイザーの基本的な機能が全て揃っていることから、Unreal Engine5だけで理想の音響を実現できるでしょう。
MetaSoundは、ゲームデータやプレイヤーのインタラクションに簡単に組み込むことができます。
そのため、ゲームの世界観への没入をより深く味わってもらえるようになるはずです。
Chaos Physics
Chaos Physicsは映画のような物理、破壊表現を目指した軽量の物理シミュレーションです。
この機能によって、物理シミュレーションに基づいたリアルな建物の倒壊などが簡単に再現できるようになりました。
Unreal Engine5では物理挙動の精度も向上しており、シミュレーションによって予測可能な方法で動作するように微調整することができます。
これまでは物理挙動をオンライン上で完全に合わせる事はできませんでしたが、ChaosPhysicsによってサーバーとクライアントが物理結果を簡単に同期できるようになりました。
前述した高いグラフィック性能と音響効果と合わさることで、より現実的で没入感の高いゲーム制作が可能になったといえるでしょう。
|Unreal Engine5で作られたゲーム5選
前バージョンと比較して大きく進化したUnreal Engine5を利用して制作されたゲームを5つご紹介します。
どれもUnreal Engine5の能力を実感できるタイトルばかりですので、ぜひ一度手にとってプレイしてみてください。
ドラゴンクエストXII 選ばれし運命の炎
ドラゴンクエストは世界的にも有名な、スクウェア・エニックスが開発したRPGです。
ドラゴンクエストXII 選ばれし運命の炎は、従来の作品よりも大人向けでダークな雰囲気の作品になると発表されています。
Unreal Engine5で開発されることが公表されており、これまでのドラゴンクエストのビジュアルイメージからどのように変化するのか期待されるでしょう。
シリーズでおなじみの鳥山明氏によるキャラクターデザインが、どんなグラフィックで表現されるのか楽しみなプレイヤーは多いはずです。
Black Myth: Wukong
Black Myth: Wukongは、中国のインディーゲームスタジオ「Game Science」が開発しているアクションRPGです。
中国神話の世界である「西遊記」をモチーフにしており、孫悟空がお馴染みの武器である如意棒を手に、魔物や敵対勢力と戦う様子を描いた作品。
Unreal Engine5の技術を存分に使用することで再現された世界観は、現実と見間違う程にリアルです。
水や光の表現は、ぜひゲームプレイを通して確認することをおすすめします。
キングダムハーツIV
ディズニーやファイナルファンタジーなどのキャラクターが登場する人気のRPGです。
トレーラー映像はUnreal Engine4を使ったリアルタイムレンダリングを使用していましたが、並行してUnreal Engine5で検証を進めた結果、ゲーム本編はUnreal Engine5で制作することが確定しました。
そのため、ライティングやディテールなどのクオリティーは数段アップすることが期待されています。
高層ビルが立ち並ぶ現代的な世界が舞台となっており、プレイする日を待ちわびているファンが数多くいる作品です。
S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chernobyl
S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chernobylは、原発事故が発生したチェルノブイリを舞台にするサバイバル・ホラーFPS「S.T.A.L.K.E.R.」シリーズの最新作です。
核爆発後の放射能汚染地帯を舞台に、プレイヤーは選択肢によって物語を進めていきます。
Unreal Engine4での開発が噂されていましたが、実際の現場ではUnreal Engine5が使用されていました。
現実と見間違うほどのグラフィックは、プレイする人を大きく驚かせることでしょう。
Senua’s Saga: Hellblade 2
Senua’s Saga: Hellblade 2は、ゲームスタジオ「Ninja Theory」が開発したアクションアドベンチャーゲームです。
北欧神話の世界で戦いながら、自身の精神世界を探求していくストーリーが展開されていきます。
Unreal Engine5の性能を存分に活かしたリアルなフェイシャルアニメーションが紹介され、多くのゲームファンを驚かせました。
魅力のあるストーリーとグラフィックが合わさり、素晴らしいゲームになることが期待されています。
|まとめ
2022年4月にリリースされた最新バージョンのUnreal Engine5について、概要や新たに可能になった機能を中心に解説しました。
Unreal Engine5では、それぞれのウィンドウの開閉が簡単にできるようになり、ビューポート(ゲーム画面)の視認性が向上しただけではなく、圧倒的にグラフィック性能が向上しました。
さらに、ゲーム素材を簡単に配置できる「QuixelBridge」や、間接光や反射を考慮したライティングの計算を容易にできる「Lumen」といった新機能を搭載しています。
ゲーム制作だけではなく、すでに幅広い分野において利用されているUnreal Engine5ですが、今後もより一層活躍の場を広げることが期待されるでしょう。