「DX導入をしたいけど、やり方がよくわからない」
「DXって大手企業だけで中小企業には関係ないの?」
DXは日本にとって、最も大きな課題の一つとして、近年多く話題に挙がっています。
しかし、中小企業のDXは一向に進んでいないのが現状です。
事実、9割以上の中小企業がDXの導入が進んでいないと答えています。
この記事では、そんな悩める中小企業の担当者のために、DX導入方法の具体的な解説から、成功へのステップと効果的な活用法までをわかりやすく説明します。
この記事を通して、どんな規模の企業でも自社主導でDXを進める方法やポイントを理解し、効果的な活用法を学ぶことができます。
ぜひ、この記事を最後まで読んで、DX導入のノウハウを身につけてください。
|DXとは

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、現代ビジネスにおいて重要なテーマであり、企業の競争力向上や業務効率化に大きく貢献します。
この章では、DXの定義と目的、IT化とDX化の違い、そして2025年の崖について詳しく解説します。
- DXの定義と目的
- IT化とDX化の違い
- 2025年の崖について
DXの定義と目的
経済産業省が発表している「DXレポート」によると、デジタルトランスフォーメーション(DX: Digital Transformation)とは、企業が新しいデジタル技術を利用して、これまでにないビジネスモデルを展開し、競争力を維持・強化するための取り組みのことを指します。
その目的は、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を活用して、新しい製品やサービス、ビジネスモデルを通じて、ネットとリアルの両面での顧客体験の変革を図り、競争上の優位性を確立することです。
しかし、多くの中小企業ではDXの取り組みが進んでいません。
これは、既存システムの老朽化・複雑化・ブラックボックス化がデータの活用を妨げ、新しいデジタル技術を導入したとしても、その効果が限定的になってしまうことが問題とされているからです。
また、既存のITシステムがビジネスプロセスに密接に関わっているため、既存システムの問題を解消しようとすると、ビジネスプロセスそのものの刷新が必要となり、現場サイドの抵抗が大きいという課題もあります。
IT化とDX化の違い
IT化とDX化は、どちらも企業がデジタル技術を取り入れるプロセスですが、IT化が単に業務の効率化やコスト削減を目的とするのに対し、DX化はビジネスモデルそのものを変革し、競争優位性を確立することを目指しています。
IT化とは、企業が情報技術(IT)を活用して業務プロセスを効率化し、コスト削減や生産性向上を図る取り組みです。
例えば、紙ベースの書類管理から電子化への移行や、業務における手作業をコンピュータシステムで自動化することで、業務効率を向上させることが目的ならばIT化といえるでしょう。
一方、DX化とは、企業が新しいデジタル技術を利用して、これまでにないビジネスモデルを展開し、競争力を維持・強化するための取り組みです。
例えば、ビッグデータとアナリティクスを活用し、市場の動向や顧客の行動を分析することで、より適切なタイミングでマーケティング戦略を展開することなどをDX化といいます。
2025年の崖について
2025年の崖とは、経済産業省が2018年に発表した『DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜』で提起された概念です。
これは、急速なデジタル技術の発展に対応できない企業が直面する危機を指し示しており、2025年までに解決しなければならない課題を提起しています。
この危機の背景には、経営層の戦略やコミットが不足していること、レガシーシステムのブラックボックス化によるDX推進の妨げ、IT人材の不足やITエンジニアの確保が困難であることなどが挙げられます。
経済産業省は、2025年の崖を克服するための「DX実現シナリオ」を提示し、企業が参考にすべき「DX推進ガイドライン」や「DX推進指標」を提供しています。
今後、中小企業は自社の抱える課題の洗い出しや共有、必要なアクションにつなげることが重要になってくるでしょう。
(参考:『DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜』|経済産業省)
|DX導入方法の種類と手順
DX導入が上手く進まない中小企業の担当者にとって、導入方法とその手順については気になるところです。
この章では、経済産業省の推奨するDX推進ガイドラインに基づいたDXの導入方法と、一般的なAIやITツールの導入方法について、詳しく解説します。
- 経済産業省の推奨するDX推進ガイドライン
- AIやITツールの導入方法
経済産業省の推奨するDX推進ガイドライン
経済産業省が発表した「DX推進ガイドライン」は、企業経営者がDXを実現し、ITシステムを構築する上で押さえるべきポイントがまとめられたものです。
DX推進ガイドラインでは、DX導入の進め方として、まず経営戦略・ビジョンの提示が重要とされています。これにより、ツール導入が目的化されることを避け、新しい価値を生み出すことを目指します。
また、経営トップのコミットメントが求められ、組織変革への当事者意識を持つことが重要ともされてます。
システム構築手順については、体制・仕組みと実行プロセスの2つの観点から解説されています。具体的な手順は、以下をご覧ください。
- 体制・仕組みを構築
体制・仕組みの構築では、全社的なITシステムの構築のための体制、全社的なITシステムの構築に向けたガバナンス、事業部門のオーナーシップと要件定義能力を推し進めることが必要とされています。
- 実行プロセス
実行プロセスでは、IT資産の分析・評価、IT資産の仕分けとプランニング、刷新後のITシステムの変化への追従力が求められています。
AIやITツールの導入方法
中小企業がAIやITツールを導入する際、以下のポイントが課題とされています。
- 明確な目的や目標の欠如
- 経営層のコミットメント不足
- 適切なツール選定の失敗
- 社内での情報共有や連携が不十分
- 導入後のフォローアップや教育訓練が不十分
これらのポイントを克服し、効率的にツールを導入するには、以下の手順で導入を目指しましょう。
- 明確な目的と目標を設定し、ツール導入の意義を経営層から理解させる。
- 導入するツールをリサーチし、企業のニーズに合ったものを選定する。
- ツールの導入プロセスや費用対効果を検討し、ROI(投資対効果)を評価する。
- 関連部門や担当者との連携を強化し、情報共有を図る。
- 導入後のフォローアップや教育訓練を実施し、社員のツール活用力を向上させる。
- 導入後の効果検証を定期的に行い、改善点を見つけて改善策を実施する。
ただし、これはあくまでも一例であり、企業によって様々な導入方法が存在します。
どうしてもわからない場合は、専門家に依頼するのが最も確実な手法でしょう。
|DX導入事例と補助金情報
DXを導入するにあたり、成功した企業の事例を参考にするのは有効な手段の一つです。
また、導入をフォローする補助金の情報についても知っておくと、スムーズに導入が進められます。
この章では、2021年度のDX銘柄グランプリを受賞したSREホールディングスの成功事例を詳しく紹介し、中小企業が利用できる主なDX補助金について解説します。
- SREホールディングスから学ぶDX導入
- DX導入における補助金制度
SREホールディングスから学ぶDX導入
SREホールディングスは、もともとソニー不動産としてスタートした不動産会社であり、経済産業省と東京証券取引所が選定する「DX銘柄2021」でグランプリを受賞しています。
SREホールディングスがDXに取り組んだ背景には、自社の不動産事業を効率化するために、AIやITツールを活用しようというコンセプトが経営層から指摘されたからだそうです。
取り組み内容としては、AI不動産査定ツールや不動産売買契約書類作成クラウドなどが挙げられます。
AI不動産査定ツールは、AIが自動で不動産の売買価格を査定し、査定書も作成します。
これにより、従来の人間による査定に比べて、査定結果が得られる時間が大幅に短縮され、同時に査定精度も向上させることに成功しています。
SREホールディングスの成功事例から学べるポイントをまとめると、以下の4点です。
- 業務効率化のためにAIやITツールを活用することの重要性
- ニーズに合わせてツールを開発し、外販ビジネスへの展開が重要
- 現場のニーズを把握し、ユーザーファーストなツールを開発すること
- 自社の保有するデータを活用し、AIツールを日々進化させて競争力を維持すること
DX導入における補助金制度
中小企業がDXを推進するにあたり、補助金制度の活用が重要です。これにより、負担を軽減しながらDX導入を進めることができます。
主な補助金・助成金は以下の通りです。
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
- IT導入補助金
- 戦略的基盤技術高度化支援事業
- 小規模事業者活性化助成金
- サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金
各制度の詳細や申請方法については、経済産業省や各地方自治体のホームページから確認できるので、一度確認してみることをおすすめします。
申請手続きの時間が取れない場合は、申請代行業者を利用することも一つの選択肢です。費用はかかりますが、プロに任せることで効率的に申請手続きが進みます。
一度、プロに相談してみるのもおすすめです。
|DX導入のメリット
DXを導入する際に、そのメリットを詳しく理解しておくことは、非常に重要です。
この章では、数あるDXのメリットの中で代表的なものを、具体例も踏まえて5つ紹介します。
- メリット1:生産性の向上
- メリット2:コスト削減
- メリット3:顧客満足度の向上
- メリット4:柔軟な組織体制の構築
- メリット5:事業の拡大・イノベーション
メリット1:生産性の向上
DX導入においての第一のメリットは、生産性の向上です。デジタル技術を活用することで、業務プロセスが効率化され、従業員がより高付加価値な作業に専念できます。
例えば、RPA(ロボットプロセス自動化)の導入に成功すれば、煩雑なデータ入力作業が自動化されることで、従業員はより創造的な業務に時間を割くことが可能になります。
メリット2:コスト削減
DX導入による第二のメリットは、コスト削減です。業務の効率化を図り、運用コストを大幅に削減することが可能です。
例えば、クラウドサービスを利用してITインフラを構築することで、オンプレミスのサーバーやハードウェアの維持・管理費用を削減できます。
これにより、企業はより効果的な投資やイノベーションにリソースを振り分けることができます。
メリット3:顧客満足度の向上
DX導入による第三のメリットは、顧客満足度の向上です。
顧客のニーズに迅速かつ柔軟に対応し、サービス品質の向上が期待できます。
例えば、データ解析を活用して顧客の購買傾向を把握し、パーソナライズされたプロモーションやサービスを提供することで、顧客の満足度を飛躍的に向上させることができます。
取り組みが成功すれば、顧客満足度が向上し、リピート率や口コミでの評判を向上させる効果が見込めます。
メリット4:柔軟な組織体制の構築
DX導入による第四のメリットは、柔軟な組織体制の構築が可能になることです。
組織内の情報共有が容易になり、迅速な意思決定が可能となります。
例えば、クラウドストレージやオンライン会議ツールの導入により、リモートワークやテレワークが容易に実現でき、柔軟な働き方が促進されます。
これにより、従業員の働きやすさが向上し、人材の確保や定着が容易になることが期待できるでしょう。
メリット5:事業の拡大・イノベーション
DX導入による5つ目のメリットは、事業の拡大・イノベーションの促進です。新たなビジネスモデルの開発やサービスの改善が容易になります。
例えば、データ分析を活用することで、顧客ニーズや市場動向を迅速に把握し、それに基づいた新しい商品やサービスの開発が可能となります。
また、オンラインプラットフォームやSNSを利用したマーケティング戦略により、顧客とのエンゲージメントが強化され、事業の拡大が期待できます。
これにより、競争力のある製品やサービスを提供できるようになり、企業の成長が促されます。
|DX推進に必要な人材とスキル
DXを推進するためには、ITに精通したDX人材の存在が必要不可欠と言われています。
この章では、DX推進をするためにはどのような人材が必要とされているのか、DX人材を中小企業が育成するにはどのような手順と方法で育成すればいいのかを詳しく解説します。
- DX推進に適した人材像
- DX人材の育成方法
DX推進に適した人材像
DXを推進するには専門の人材が必要不可欠です。経済産業省の「DXレポート」によれば、DX人材とは自社のビジネスを深く理解し、データとデジタル技術を活用してビジネスや組織の変革を進める力を持つ人材です。
具体的には、以下の分野においてバランスよく理解し、伴走型でアドバイスができる人材が求められています。
- ITやデジタル・DXの知識やスキル
- 中小企業の経営資源、ビジネスの管理・推進等の経営ノウハウ
- 経営のデジタル化によって順守する必要のある法令等に関する知識及び情報の管理能力
- 社会動向の変化に敏感であり、日々進化するデジタル分野を常に学ぶ姿勢、俯瞰的に物事を観るマインドを持っていること
- DXに関わる社内外のステークホルダーに対して、適切な指導と管理ができる力
- 各種の経営情報を分析し、立案した計画のPDCAを実践していく力
これらのスキルを持った人材は、日本において大変貴重といえるでしょう。そのため、中小企業は自社でDX人材を育成していく必要があります。
DX人材の育成方法
DX人材を自社で育成できれば、適切な人材配置や社員のモチベーションアップなどのメリットを享受できます。以下に、DX人材を育成する方法を順を追って解説します。
- スキルと能力の把握
まずは、社員のスキルと能力を明確にし、現状を把握しましょう。これにより、スキル別にグループを分けて育成の最適化が可能になります。全社の把握と個人の把握の両方が重要です。
- 人材開発計画の立案
スキルと能力の把握が終わったら、それを基に人材開発計画を立案しましょう。重要なのは、何を目的に、いつまでに、どんな人を、何人育成するかを明確にすることです。
- 知識獲得とマインドセット形成
DXマインドを形成し、「DXは重要」「DXは面白い」と感じるような環境を整えましょう。DXマインドを形成する方法として、いつも目にするところに1ネタ提供したり、朝会でニュースを共有したり、リレー形式でDXネタをメールやチャットでシェアしたり、有志の社内コミュニティで共有するなどがあります。
- 実用スキルの習得
実用スキルは、知識・スキル・解決力の掛け合わせです。実用スキルがないと業務での成果に繋がりません。実用スキルの習得方法としては、インプット・アウトプット・プロのフィードバックの繰り返しです。
- 実行力の向上
最後に、実行力をどんどん向上させましょう。実行力を向上させるためには、日々の業務の中で小さい実践を経験し、学んだことを短いサイクルでたくさん活用することが大切です。
以上が、DX人材育成の5つのステップです。
これらのステップを着実に実践していくことで、中小企業のDX推進も大きく飛躍することでしょう。
|まとめ
本記事では、DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入方法や成功へのステップ、効果的な活用法について解説しました。
DXは現代のビジネスにおいて重要であり、適切に導入することで効率化や業務改善などのメリットが得られます。
今後はDXの普及がさらに進み、企業の競争力を高めるためには、適切な戦略と人材育成が不可欠となります。
























