医療DX(デジタルトランスフォーメーション)は、医療現場においてIT技術を活用し、効率化や質の向上を実現する取り組みです。
今後、医療現場でのDXの推進がますます進んでいく中、その導入事例やメリット・デメリットなどについて理解を深める必要があります。
この記事では、医療DXの背景や導入状況、日本や海外の最新動向、導入事例、そしてメリットやデメリットについて詳しく解説します。
医療現場の生産性の向上や医療の質の向上など、医療DXがもたらす効果に注目しながら、セキュリティリスクやITリテラシーの必要性など、導入に伴う課題にも言及します。
是非、この記事を通じて医療DXについて正しく理解し、今後の医療現場の発展につながる知識を得てください。
目次
|医療DXとは?
医療DXとは、医療や介護分野において使用される情報やデータを整理して、最適な方法で管理することを指します。
この管理対象には、病気予防に関する情報や病気の診断・治療に必要な情報、医療や介護の費用請求に関連する情報などが含まれます。
医療DXの導入により、患者はより早く適切な診断や治療を受けることができるようになり、医療・介護現場でもより効率的な業務が実現可能になります。
また、医療や介護情報を管理するための基盤整備によって、医療や介護の質の向上が期待されています。
|医療DX推進の背景と課題
我が国では、少子高齢化が進み、医療・保健に対する需要が高まっています。
そのため、デジタル化による医療分野の効率化や医療情報の活用が重要視されています。
さらに、新型コロナウイルス感染症の流行によって、データ収集の迅速化やデータ共有、医療の「見える化」など、医療DXの推進が急務となっています。
医療DXの推進により、国民が自らの保健・医療情報に容易にアクセスし、健康維持・増進に役立てることが可能になります。
また、医療の効率化や最適化により、診療の質が向上し、治療法の最適化が進むことが期待されます。
さらに、医療情報の適切な利活用により、創薬や治療法の開発の加速化が進むことで、関連産業の発展が促進されることが期待されます。
しかし、医療DXの推進には課題も存在します。
例えば、医療情報の適切な保護やセキュリティ確保、人材不足の解消などが挙げられます。
また、医療現場においては、様々な機器やシステムが使用されているため、システム間の連携や相互運用性の確保も課題となっています。
これらの課題を解決し、医療DXの推進を進めていくことが必要です。
|医療におけるDX技術の導入状況
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)によるDX白書2023の調査結果によると、医療・福祉セクターにおいては、DXを実施している企業の割合がわずか9.3%であることが明らかになりました。
実施を検討している企業も12%にとどまり、今後も実施予定がないと回答した企業が残りの78.7%です。
この結果は、他の業界と比較しても低く、医療・福祉セクターにおけるDXの進捗が遅れていることを示しています。
一方で、医療DXに取り組む企業の事例として、AIやVRを活用したリハビリテーションプログラムや、医療データ連携プラットフォームによる業務効率化、服薬支援ロボットによる業務改革など、業務効率化にとどまらず顧客体験の変革まで実現している事例も見られます。
しかし、現状はDXを実施していない企業が多いのが実情です。
これからの医療・福祉セクターにおいても、DXが進んでいくことが期待されています。
|医療DX令和ビジョン2030とは?
「医療DX令和ビジョン2030」とは、政府が導入する医療現場におけるDXに関する計画です。
この計画により、日本の医療情報の在り方を根本的に改革しようとしています。
医療現場のIT化により、業務の効率化や患者の医療サービス向上によって、医療関係者や患者双方に利益がもたらされることが期待されています。
政府は、骨太の方針に基づき、DXを推進するために、「全国医療情報プラットフォーム」を設立することを表明しました。
現在、医療機関ではDXの遅れが原因で様々な問題が生じていますが、このプラットフォームを導入することで、情報共有をスムーズにすることを目指しています。
医療DXの推進が本格化する中、厚生労働省は「厚労省推進チーム」や「医療DX推進本部」を設置しました。
全国医療情報プラットフォームとは?
複数の場所に散らばっている医療関連情報を一元管理し、まとめることができる新しいシステムが「全国医療情報プラットフォーム」です。
このシステムは、マイナポータルや各医療機関、自治体、介護事業者などのシステムと連携することで、国民の健康づくりに役立つものです。
また、医療サービスの質の向上や業務の効率化、安全な医療の提供、災害やパンデミックのような緊急時のスピーディーな医療など、多くのメリットをもたらすことが可能です。
このプラットフォームによって、医療に関する情報の集約と共有が促進されることで、より効果的な医療サービスの提供が可能になることが期待されています。
オンライン資格確認システムのネットワークの実現
オンライン資格確認等システムとは、患者の同意情報、特定健診情報、処方・調剤情報、薬剤情報、診療情報を資格情報として収集し、医療機関や介護事業者、自治体などに必要な情報を提供するものです。
患者が同意した情報を資格情報として管理し、必要な情報を連結して、よりスムーズな医療・介護の提供や予防接種などに役立てられます。
また、パンデミックなどの非常事態の際にも必要な情報を迅速かつ確実に取得することが期待されています。
全国医療情報プラットフォームによる情報共有
病院などの医療機関でマイナンバーカードを利用して受診することで、本人の同意のもとで医師や薬剤師と共有できる医療情報が増え、より質の高い医療が提供されます。
さらに、次の感染症危機においては迅速かつ確実な情報取得の仕組みとして有用です。
全国医療情報プラットフォームを活用し、マイナンバーカードで受診した患者の情報を本人の同意のもとで医師や薬剤師と共有できます。
スピーディーに情報を共有することによって、より良質な医療の提供につながるだけでなく、研究開発にも活用できるようになります。
マイナンバーカードによる業務効率化
従来の同意書や承諾書などは、紙の書類によるものがほとんどで本人の署名が必要でした。
しかし、マイナンバーカードによる「電子署名」でこれらの書類をデジタル化することで、紙の書類作成や記入にかかる負担や手間を軽減できます。
このデジタル化によって、患者はより簡単に医療を受けることができ、医療従事者も業務効率を改善することができます。
マイナンバーカードによって業務が効率化されることによって、医療現場の負荷軽減や医療サービスの利便性向上につながります。
電子カルテ等の標準化
電子カルテを導入・運用する際、病院ごとに異なる規格があると、データを共有して活用することが非効率になります。
「電子カルテ情報の標準化等」とは、電子カルテの規格標準化を進める計画です。
このセクションでは、HL7FHIRに基づく医療文書標準仕様の策定、医療技術や医薬品開発のためのデータ活用、そして電子カルテの普及目標について解説していきます。
HL7FHIRにもとづく医療文書標準仕様の策定
HL7 FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)は、米国のHL7協会によって開発された、医療情報を交換するための新しい標準仕様です。
日本でも、日本HL7協会や日本医療情報学会NeXEHRS研究会日本実装検討WGなどが普及のために活動を開始しています。
厚生労働省は、現在、世界的に普及している電子カルテの規格であるHL7FHIRをベースに、日本に適した電子カルテの規格を策定しています。
さらに、厚生労働省は、維持管理体制を強化し、全国の医療機関や自治体がスムーズなデータ共有を実現すべく取り組みを進めています。
医療技術や医薬品開発のためのデータ活用
電子カルテには、治療や医薬品開発などに利用できるたくさんのデータが含まれています。
たくさんの患者や臨床のデータは、AI研究や治療の最適化といった新しい医療技術や医薬品の開発に必要不可欠です。
先ほど述べた通り、HL7FHIRをベースにした電子カルテの規格を取り入れる動きも同時に進められており、より効果的に医療データを利用することができるようになると期待されています。
電子カルテの普及目標
今のところ、日本国内で使用されているすべての電子カルテがHL7FHIRに準拠しているわけではありません。紙でのカルテ運用を行っている医療機関も多く存在します。
そこで、電子カルテの普及を急ぐために、2026年度までに8割、2030年度までに全ての医療機関への普及を目標としています。
この目標を実現するために、厚生労働省が、民間企業と協力して低コストで安全なHL7FHIRを取り入れた電子カルテを開発し、未導入の一般診療所や非DPC病院に導入することを提言しているのです。
具体的には、閲覧できる権限を設定する機能や、誰が閲覧したのかを患者自身が確認できる機能、診療をサポートし作業を軽減する機能、検査会社と情報を連携する方法、介護事業所等への共有機能を盛り込むことを提言しています。
|診療報酬改定のDX
「診療報酬改定DX」とは、診療報酬に関わる業務をIT化して、作業の効率化を図る施策です。
従来のシステムでは、報酬改定のたびにプログラム変更が必要で、医療機関やエンジニア、ベンダーにとって課題となっていました。
この施策により、作業の効率化や負担軽減が実現され、導入メリットが得られるとされています。
ここでは、施策概要やポイントについて解説します。
共通算定モジュールの導入
診療報酬に関する共通算定マスタ、計算ロジック、データ標準化、提供基盤という4つの要素から構成されるのが「共通算定モジュール」です。
厚生労働省、審査支払機関、ベンダーが協力し、デジタル庁のサポートを得て作成され、各ベンダーによって活用される予定です。
このモジュールを導入することで、診療報酬改定作業がシンプルになり、医療機関やベンダーの作業がシンプルになります。
また、電子点数表から共通算定モジュールへ変更することによって、電子カルテおよびレセコンベンダーの作業が大幅に効率化されることが期待されています。
円滑な診療報酬改定の実現
診療報酬改定は2年に1度の大きな改定と、定期的な小さな変更があるため、改定作業は非常に煩雑です。そこで、作業集中月をなくすために施行日を変更するアイデアがあります。
これにより、モジュール作業のミスを減らすことができます。これまでも、診療報酬改定について毎年行うことや介護報酬改定と整合性をとることが議論されてきました。
また、新型コロナウイルス感染症に伴う頻繁な改定が、ベンダーと医療現場の仕事を非効率にしています。今後、デジタル化による作業効率化が求められることでしょう。
|医療DX令和ビジョン2030が目指す未来の医療
「医療DX令和ビジョン2030」には、3つのポイントがあります。
それは、「全国の医療情報を共有するプラットフォームの策定」、「電子カルテの規格を標準化すること」、そして「診療報酬の改定をDXすること」です。
これらの政策によって、患者や医療従事者、そしてシステムベンダーがそれぞれのメリットを得ることができます。
特に、医療関係者が業務を効率化することや、医療に関わる情報をスムーズに連携すること、そして患者がこれまで以上に優れた医療サービスを享受できるようになることは、日本の医療や健康にこれまでにはない革新をもたらします。
このビジョンは、政府主導で進められ、医療機関は新しい医療DX時代への適応が求められます。
現状では、日本は医療情報の連携・活用において後れをとっており、諸外国に比べて遅れています。
海外では、電子カルテの普及率が80%を超える国もあり、日本が目標とする医療情報の活用がすでに実施されている国もあります。
医療情報の活用ができない状態は、医療現場にとって大きなデメリットとなります。
しかし、医療DXには、日本の現状を変えるための可能性があります。
課題は多く、克服しなければならないものがありますが、より良い形で医療DXが進展していくことを期待しています。
|医療DXの導入事例
日本は、高齢化により医療ニーズが増加しており、医療従事者の不足が懸念されています。
また、医療現場では夜間の診療や緊急時の搬送など不規則な勤務が多いため、医療従事者の過労も問題です。
将来的には、更なる高齢化が進むため、対面医療や紙カルテが主流の医療機関では、業務効率を高めるための医療DXが求められています。
現在、日本では民間企業や国全体でDX化が進められている最中です。
医療DXの導入事例について諸外国と日本の事例を紹介します。
諸外国における医療DXの導入事例
本章では、アメリカ、ドイツ、フランス、韓国といった諸外国での医療DXの導入事例について解説します。
各国がどのような取り組みを行い、どのような成果を出しているかを紹介します。
遠隔診療システム(アメリカ)
1993年にアメリカ遠隔医療学会が設立され、遠隔診療の実現に向けて取り組んできたアメリカ。
2020年に実施された「McKinsey & Company」の調査では、アメリカの患者の76%が遠隔診療に興味を持ち、そのうち46%が利用したことがわかっています。
新型コロナウイルス感染症の状況が急激に変化する中、信頼性の高い医療を手軽に提供するため、「Mercy Health」はバーチャルビジットの提供を始めました。
このバーチャルビジットは、物理的な距離が離れていても、信頼できる経験豊富な医師から遠隔で診療を受けることができます。
医療に関する質問や検査結果の表示、処方箋の発行など、多岐にわたるサービスを提供しており、自宅で必要なケアを受けることができるのです。
糖尿病の早期発見にAIを活用(ドイツ)
ドイツには、約750万人の糖尿病患者がおり、毎年2500人以上もの人が糖尿病網膜症によって失明しています。
ドイツのガイドラインでは、リスクのある患者には毎年スクリーニングを受けるように指導されていますが、眼科医不足により難しい状況でした。
「メルゲントハイム糖尿病センター」は、Eyenuk, Inc.によるEyeArt AIアイ・スクリーニング・システムを導入することによって、重篤な合併症の問題に対処しています。
同センターは、毎日10人以上のスクリーニングを行っており、視力を脅かす疾患である糖尿病網膜症に対応しています。
糖尿病網膜症は労働年齢の成人における失明の主な原因であり、同センターはドイツ初の糖尿病専門病院として、人工知能を使用した糖尿病網膜症のスクリーニングを実施しています。
オンライン医療保険(フランス)
フランスは2013年から、「フレンチテック」と呼ばれるスタートアップ支援を推進しており、国内のIT企業を育成してきました。
この取り組みの中で、ヘルスケアのスタートアップ「Alan」は、オンライン上で手続きが容易な医療保険を提供することで知られています。
同社に加入する会員は、健康関連のコンテンツにアクセスできるだけでなく、マップ上で医師を検索して予約したり、医師や他の患者とチャットしたりすることができます。
「Alan」は、フランスが支援するスタートアップの一例であり、革新的なアイデアを持つ企業が成長しやすい環境を整備していることを示しています。
AIによるがんのスクリーニング/診断と治療(韓国)
韓国でも高齢化が進む中、国がスタートアップ企業と連携し、DXを活用した医療の改善が進められています。
この取り組みの中心となっているのが、AI医療スタートアップ企業の「Lunit」です。
同社が提供する「Lunit INSIGHT CXR」は、AIを活用したX線分析システムであり、肺がんの早期発見に利用されています。
この画像判読補助システムは、Lunitとソウル大学病院が共同で開発したもので、胸部レントゲン検査の画像を解析して、医師に肺がんや肺転移がんの疑いのある部分を教える役割を担います。
さらに、肺がんの結節など、見落としがちな部位も正確に検出することが可能です。
ソウル大学病院は、肺がんだけでなく、様々な疾患に対する人工知能基盤映像診断ソフトウェアの開発も計画しており、既に乳がんの早期発見に役立つ「Lunit INSIGHT MMG」も発表されています。
これらのAI技術による医療分野のDXは、韓国だけでなく、世界中で注目を集めています。
高齢化が進む現代社会において、これらの技術がもたらす医療の進歩が、人々の健康と幸福に貢献することが期待されています。
日本における医療DXの導入事例
続いて、日本における医療DXの導入事例をご紹介します。
日本では、医療情報を共有するプラットフォームや在宅医療支援サービス、AIによる問診システム、デジタル病理支援クラウドシステムなど、多彩なシステムが開発されています。
医療情報プラットフォーム
HeLIP(Healthcare Local Information Platform)は、ソフトバンクテレコム、電算、テクマトリックスの3社が協力して提供する、地域の医療機関、検査・検診センター、保険者、自治体などが保有する健康・医療に関するデータを、クラウド上で集積・管理するプラットフォームサービスです。
このサービスは、共通のインターフェースや認証基盤を通じて、各医療機関・施設で異なる医療情報システムを連携させることができます。
高齢化社会において、医療は病院だけでなく地域全体で支えられる必要がありますが、地域医療連携システムの導入に伴い、医療機関のIT化の遅れやシステムの維持・運営費用の負担が問題となっています。
HeLIPがクラウド上で提供されることで、共通情報基盤の構築が低コストで可能となり、高齢化社会に求められる地域の「医療・健康・介護・福祉」分野の情報を連携する持続可能性の高いシステムが実現します。
これにより、患者の状態に応じた質の高い医療や介護を迅速に提供することが可能となります。
在宅医療支援サービス
「Smart Home Medical Care」というサービスは、株式会社オプティムが提供している在宅医療支援システムであり、患者が自宅で快適に暮らしながら、センサーやAIカメラなどを活用して患者の健康状態を管理できるようにするとともに、医療スタッフの勤怠管理など、在宅医療に必要な業務を効率的に行うことができます。
このサービスでは、オプティムのAI・IoT技術が活用され、高齢患者でも利用しやすいテレビやバイタルセンサーなどが用いられます。
患者は、普段通りにテレビを視聴するだけで、医師とのビデオ通話を行うことができます。
また、バイタルセンサーと連携することで、自宅にいながらにして医師や看護師に見守られる状態を実現することができます。
さらに、医療機関は、患者の介護状況管理や訪問介護に従事するスタッフの管理も行えるため、業務の負荷軽減や効率化が可能になります。
このような取り組みにより、在宅医療のサービス向上が期待されます。
AI問診
「AI問診」は、Ubie株式会社が提供するシステムで、患者が入力した問診票から病名を想定します。
電子カルテと連携しており、医療従事者にとって大変便利なシステムです。
「ユビーメディカルナビ」は、医療機関向けのパッケージで、AIによる事前問診など複数のソリューションが統合されています。
診察や受付業務の効率化や患者の認知向上など、診療の質を向上する支援をします。
AIによる事前問診を利用することで、診療の効率化と充実化を同時に実現できます。
AIは、患者の主訴に基づいて最適化された質問を自動生成し、医療従事者へ伝達します。
これにより、医療従事者のカルテ記載業務の効率化だけでなく、患者からの情報漏れや医療従事者の聴取漏れを防止することで、診療の充実化も支援します。
デジタル病理支援クラウドシステム
メドメイン株式会社は、病理画像AI解析ソリューション「PidPort」のサービス提供をしています。
がんが死因の上位カテゴリーを占める現在、多くの医療機関で病理診断が必要とされています。
しかし、実際には病理医が不足しており、病理診断に負荷がかかっています。
「PidPort」は、ディープラーニングやAIを用いた画像処理技術を駆使して、病理のデジタル画像の解析を行うサービスです。
また、遠隔病理診断の機能も備えています。
医療機関や臨床検査センターでは、病理診断や検査時に「PidPort」のAI解析を活用することにより、日々の業務効率を向上し、病理医の負荷を軽減することができます。
さらに、遠隔病理診断機能により、病理医が不足している地域でもオンラインで迅速に病理診断を行うことができます。
「PidPort」によって、国内外を含めた「病理医不足」という問題を解決し、病理医と患者双方にとってより良い医療環境を実現されることが期待されています。
|医療DXがもたらすメリット
医療DXには、医療現場の効率化やコスト削減、医療の質の向上、患者の利便性の向上といった多くのメリットがあります。
このセクションでは、それぞれのメリットについて詳しく説明します。
医療現場の効率化とコスト削減
医療DXは、医療現場の効率化とコスト削減に大きなメリットをもたらします。
具体的には、電子化によるペーパーレス化や問診におけるタブレットの活用など、医療業務を効率化することが可能です。
まず、院内文書をペーパーレス化することで、スキャン作業や電子カルテへの転記作業をなくし、作業の効率化を図ることができます。
また、院内文書を保管したりファイリングしたりする作業も不要になります。
さらに、電子カルテと院内文書をリンクさせて、リアルタイムで反映されるようにすることで、医療情報の共有化が進みます。
また、タブレットを活用した問診により、問診に関わる事務作業を減らすことができますし、インターネットでの来院前予約を受け付けることで、受付業務の手間を減らすことが可能です。
医療の質の向上
医療の質の向上は、医療DXによって実現可能な大きなメリットの1つです。
まず、医療DXによって、患者の個別のニーズに合わせた医療サービスを提供できるようになります。
例えば、問診票や病歴、バイタルなどのデータを電子カルテと連携させることで、患者の状態をより正確に把握し、より適切な診療計画を立てることができます。
また、医療DXは、医師や看護師などの医療従事者がより効率的に業務を行うことを可能にし、医療の質を向上させることができます。
医療従事者の事務作業を簡素化することで、より多くの時間を患者の診療に費やすことができます。
さらに、医療DXによって、病院内の業務プロセスが改善されることで、医療従事者のミスを減らし、医療の質を向上させることができます。
例えば、電子カルテと院内文書を紐付けることで、誤った診療や重複した検査を避けることができます。
また、薬剤師が薬剤情報をスムーズに入手できるようにすることで、誤薬や重薬を防ぐことが可能です。
以上のように、医療DXは、医療従事者がより効率的に業務を行い、患者により質の高い医療サービスを提供することを可能にします。
患者の利便性の向上
医療DXは患者の利便性を向上させます。
予約システムの導入によって、待ち時間が短縮されるため、患者は長時間待たされるストレスや待合室での院内感染のリスクを軽減することができます。
また、タブレット画面での問診によって、煩わしい手続きを減らすことができます。
医療従事者間での情報共有によって、重複した検査や質問を避けることが可能です。
さらに、オンライン診療を利用すれば、遠隔地でも診療を受けることができるため、外出による感染リスクも軽減できますし、医師不足の地域の助けになります。
様々なシステムによって、患者の利便性が向上することでしょう。
|医療DXがもたらすデメリット
医療DXには、導入に際して高いコストがかかることや、セキュリティリスクが存在すること、医療従事者にITリテラシーとシステム管理能力を求められることなど、いくつかのデメリットがあります。
これらのデメリットについて詳しく解説していきます。
医療DXの導入コスト
DXを実現するためには、導入コストが高く、定期的なランニングコストもかかるというデメリットがあります。
初期費用や維持費、サーバー更新料などが必要であり、これらによって病院の固定費が増大してしまうため、経営に大きな影響を与える可能性があります。
そのため、DXを導入することによる費用対効果を見定める必要があります。
医療機関には予算の制限があるため、DXに必要な資金調達も課題の一つとなっています。
多くの人がDXを大規模なシステム導入に限定して考えがちですが、スモールスタートすることも可能です。
たとえば、医療従事者にとって本来の業務を中断させる事務作業など、経営インパクトの大きな業務を自動化するという小さな取り組みから始めることが考えられます。
医療DXにおけるセキュリティリスクとその対策
医療DXを導入する際に最も注意しなければならないのは、セキュリティリスクについての対策です。電子カルテは患者情報を一元管理できるため、大きなメリットがあります。
しかし、多くの場所からアクセス可能になるため、情報漏洩の危険性が高まります。
他科の患者情報にアクセスしたり、情報を外部に持ち出したりすることが、これまでに比べて容易になってしまいます。
さらに、不正アクセスやサイバー攻撃のリスクもゼロではありません。
こうした問題を解決するために、職員へのセキュリティ教育や、クラウド型の電子カルテの導入が必要になります。
クラウド型の電子カルテは、院内にサーバーを設置する必要がなく、インターネット回線を通じてデータセンターにアクセスするシステムです。
セキュリティレベルが高く、情報漏洩のリスクを最小限に抑えることができると考えられています。
医療DXを導入する際には、セキュリティリスクに関する対策を徹底することが重要です。
情報漏洩や不正アクセスといったリスクを最小限に抑えることで、安全かつ安心な医療DXの導入を実現することができるのです。
医療従事者のITリテラシーやシステム管理の必要性
医療DXを導入する際には、医療従事者のITリテラシーやシステム管理が求められることもデメリットの1つです。
システム導入には高度なITスキルが必要であり、導入効果を期待できないこともあるため、現場のスタッフが使いこなせるよう、教育や研修が必要になることもあります。
また、タブレットのような患者が操作する製品を選ぶ際は、利用する患者の立場になることが重要です。
医療従事者のITリテラシーによっては、新しいシステムに慣れるまで不便を感じることもあるでしょう。
しかし、ITリテラシーの高い、若い人材を採用する際には、効率的なシステムが魅力となる場合があるため、医療DXの導入が有利に働くこともあります。
また、システム管理には人材が必要であり、現状の職員でカバーできない場合は、職員を新たに採用する必要があります。
ただし、固定費が増加するため、費用対効果の見極めが必要です。
医療DXを導入するには、慎重な計画と柔軟性が必要なのです。
|まとめ
今後の医療の進化には、DXの導入が欠かせません。
医療DXの導入事例やメリット、デメリットについて紹介しましたが、導入にはいくつかの課題もあります。例えば、導入コストやセキュリティリスク、医療従事者のITリテラシーなどです。
しかし、医療DXがもたらすメリットも大きく、医療現場の効率化やコスト削減、医療の質の向上、患者の利便性の向上などが期待されます。
また、医療DXの進展により、今後は遠隔診療やAIによる診断、医療データの共有などが進むことが予想されます。
日本では、全国医療情報プラットフォームや在宅医療支援サービス、AI問診、デジタル病理支援クラウドシステムなど、医療DXの導入事例が進んでいます。
海外でも、遠隔診療やAIを活用したがん診断、オンライン医療保険など、様々なサービスが台頭してきました。
医療DXは、今後ますます重要性を増していくため、医療関係者だけでなく、一般の人々や情報技術分野に興味を持つ人々も、医療DXについて理解を深め、情報収集を行っていく必要があります。
今後の医療の進化に注目し、医療DXがもたらす未来の可能性を探っていきましょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。