自治体DX(Digital Transformation)は、地方自治体がデジタル技術を活用して行政サービスの質を向上させるための取り組みです。
最近では、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、オンラインでの手続きや遠隔での会議などデジタル化の必要性が高まっています。
自治体DXは、そうした社会情勢の変化に対応しつつ、よりスムーズで効率的な行政サービスを提供することを目的としています。
本記事では、自治体DXの推進ポイントや事例をわかりやすく紹介しますので是非最後までご覧ください。
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目次
|そもそもDXとは
「デジタルトランスフォーメーション」とは、ビジネスプロセスや文化、顧客体験などを、デジタルテクノロジーを活用して新たに創造することで、変わり続けるビジネスや市場の要求に対応するプロセスのことです。
企業が競争上の優位性を確立するために、デジタル技術を活用してビジネスモデルを変革することを目的としています。
また、デジタルトランスフォーメーションは、IT化とは異なります。
IT化は、既存のビジネスプロセスを自動化することに重点を置いていますが、一方でデジタルトランスフォーメーションは、ビジネスプロセスを再設計し、新しい価値を生み出すことに重点を置くという点が大きな違いと言えます。
|自治体DXとは
自治体DX(Digital Transformation)は、地方自治体がデジタル技術を活用して行政サービスの質を向上させるための取り組みです。
従来の行政サービスでは、紙や電話などアナログな手続きが多く、手続きが煩雑で時間がかかることが課題となっていました。
自治体DXでは、こうした課題を解消するために、インターネットやスマートフォンなどのデジタル技術を活用し、オンライン上で手続きができるようにすることで、手続きの簡素化や迅速化を図っています。
自治体DXの推進によって、住民や企業がより利便性の高い行政サービスを受けられるようになるとともに、地域経済の活性化にもつながるとされています。
|自治体DXはなぜ必要なのか
ここでは、なぜ自治体DXを推進する必要があるのか、いくつかの観点から解説します。
経済産業省の「DXレポート」
2018年に発表された「DXレポート」によると、多くの企業がDX化に取り組んでおらず、古いシステムに多額のコストをかけていることが明らかになりました。
このレガシーシステムがDXを進める上での大きな障害になっていることは、企業側も理解しているにもかかわらず、変革が進まない状況にありました。
また、「DXレポート」では、2025年以降に経済リスクが生じるとの指摘がありました。
レガシーシステムをそのまま運用し続けると、保守・運用コストがどんどん膨れ上がり、日本経済全体に大きな打撃を与える可能性があるというものです。
具体的には、2025年以降に最大で12兆円の損失が生じる可能性があるとの研究結果が出されています。
このように、DX化が進まなければ、日本の経済に深刻な影響を及ぼす「2025年の壁」と呼ばれる問題が生じる可能性があります。
このような実態から自治体のDX化が注目されています。
新型コロナウィルス
新型コロナウイルスの影響により、デジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進展しました。
このパンデミックの中で、地域社会や組織内でのデータ活用やネットワーク化の進展が不十分であることが明らかになりました。
行政手続きの多くがまだオンライン化されておらず、住民は手続きのために役所に足を運ばざるを得ない状況が残っています。
一方、民間企業ではペーパーレス化やハンコ不要の取り組みが進んでいますが、行政においては紙ベースの手続きや押印がまだ残っており、それがコロナ禍での感染予防にも悪影響を与えています。
このような中、2020年11月には認印の全廃が発表され、内閣府も脱ハンコの取り組みを進める方針を打ち出しています。
コロナ禍によって行政のデジタル化が急務であることは明らかです。
コロナウイルスが5類に移行して1年が経過した2024年現在。全国各地でDX化へ向けた動きが加速している状況は変わっていません。
少子高齢化
少子高齢化による行政サービスの質の低下や、役所の職員不足といった問題に対応するため、政府がDX化を推進するようになったと言われています。
特に地方自治体では、デジタル化によって行政サービスを効率的かつ適切に提供することが求められており、「スマート自治体」の実現が目指されています。
総務省は、自治体のDX化を促進するために、システムの標準化やAI・ロボティクスの活用について検討する研究会を設立し、デジタル社会における行政サービスの最適化に取り組んでいます。
業務の増加が想定される
現在、各自治体が抱える業務は増加の一途をたどっています。
その要因は全国各地で発生する地震や水害などの自然災害への対応、さらに政策変更に伴う新制度の導入などなど。
業務量が増える状況に対して、旧体制から変わらないハンコ文化などが業務進行を妨げている状況は否めないでしょう。
すでに多くの民間企業では、インターネットやAI技術をフル活用した業務改革が進められています。
実際、人員を削減しつつも、これまで以上の成果を発揮している事例も少なくなく、こうした流れは今後も加速していくことが想定されます。
もちろん、自治体と民間企業を単純に比較することは困難ですが、増え続ける業務に対応するためのシステム作りが求められる点は同じです。
今後さらなる業務増が考えられるからこそ、DX推進がより一層求められているのです。
|自治体DXの課題
自治体のDX化が重要であることはご理解いただけたと思います。
しかし、DX化は簡単なことではなく様々な課題があり、取り組む前にきちんと理解する必要がありますのでご紹介します。
IT人材の不足
現在のDX推進において最も重要な課題は、ITに精通した人材の不足です。
この問題は都市部においても深刻であり、特に人材流出の影響を受けている地方自治体では、対策が急務となっています。
この問題に対処するためには、外部からの人材獲得だけでなく、自治体内での育成環境の整備が不可欠です。
自治体は、IT人材を育成するための教育訓練プログラムの開発や、職員がITスキルを習得しやすい環境の整備を行う必要があります。
また、人材流出を防止するために、魅力的な働き方やキャリアパスを提供することも重要です。
市民と行政のコミュニケーション不足
デジタル活用に関する市民と行政の間のコミュニケーション不足が課題となっています。
たとえば、マイナンバーカードを有効活用するための周知が不十分であり、デジタル化を進めても市民が恩恵を受けられない状況にあります。
また、行政サービスがデジタル化を進めても、市民が従来のアナログ方式の手続きを好む場合には、デジタルのメリットを享受することができないという問題が生じています。
アナログ文化
自治体においては、収益性を優先する民間企業とは異なり、ハンコや紙の書類を使った業務が未だに広く残っています。
このような背景には、デジタル活用の文化が根付いておらず、DXの必要性や取り組み方に対する認識共有が不十分な場合もあります。
そのため、文化を根本的に変革するための取り組みが必要となっています。
|自治体DX推進のポイント
ここからは、DX推進するためのポイントを紹介します。
組織体制構築
自治体DXの目的は、全ての住民に適切な行政サービスを提供することです。
そのためには、各部署が協力し、自治体全体でDX施策を検討することが必要です。
部署間の意見交換や協力により、より住民の要望に沿った施策を検討することができます。
自治体全体でDXを推進することで、より効率的な行政サービスの提供が可能となります。
DX計画策定
自治体においてアナログ文化がまだ根強く残る場合、DXの浸透には時間がかかることが予想されます。
しかし、短期的・長期的な計画を立てることで、自治体職員が取るべき行動が明確になり、DX推進に向けた取り組みを着実に進めることができます。
また、住民に対して計画を公開することで、自治体に対する期待感を高めることができます。
IT人材の確保と育成
DXの推進には、ITやデジタル技術に熟練した人材の確保が必要ですが、そのような人材を直ちに確保することは容易ではありません。
そのため、デジタル人材を確保するために、既存職員のスキルアップやキャリアアップを含む、内部人材の育成も重要な課題となります。
このような取り組みは、デジタル人材不足が社会的な問題となっている今、自治体においても積極的に進めることが重要となります。
|自治体DXの事例
最後に自治体DXの事例を紹介しますので、是非参考にしてみてください。
【デジタル社会推進局の発足】三重県
三重県は、デジタル社会の実現に向けた取り組みを進めるため、2021年4月に「デジタル社会推進局」を設立しました。
この局は、社会におけるDXと行政DXの双方を部局横断的に実行することを目的としており、全国初の民間公募による常勤の最高デジタル責任者によって運営されています。
同局では、「みえDXセンター」という全国初のDXのワンストップ相談窓口を開設し、また「三重県 デジタル社会の未来像」という文書を発表して、2050年までのデジタル社会の未来の姿をまとめています。
これによって、デジタル関連の計画や機運醸成に貢献しているのです。
【スマートシティ推進室の発足】福島県
福島県会津若松市は、市民が利用しやすいデジタルサービスの提供に積極的に取り組んでいます。
市は、2018年に導入した「LINE」を活用したAI自動応答サービスにより、市民が24時間自由に問い合わせを行うことができ、多くの市民に利用されています。
市は、スマートシティ構想を最上位計画として掲げ、市全体をデジタル化する計画を進めています。
この取り組みを推進するため、2021年4月には「スマートシティ推進室」を設置し、行政が一体となってDXに取り組む体制を整えています。
計画期間は2026年までの10年間が想定されており、「スマートシティ会津若松」の実現に向けて取り組んでいるのです。
【とよなかデジタル・ガバメント宣言】大阪府
豊中市では、市長が「とよなかデジタル・ガバメント宣言」を行い、DXに向けたビジョンを示しています。
このビジョンを実現するために、「とよなかデジタル・ガバメント戦略」を策定し、デジタル技術を活用して暮らし・サービス、学び・教育、仕事・働き方のあり方を変革していく方針を打ち出しています。
また、業務改革に向けた人材育成にも力を入れており、DXセミナーを開催するなど、人材教育にも積極的に取り組んでいます。
さらに、RPAなどのデジタル技術の活用にも積極的であり、業務プロセスの改善にも力を入れています。
【デジタル化ファストチャレンジ】宮城県
仙台市は、「できることはすぐ実行」というスローガンを掲げ、DXを加速するための取り組みを進めています。
具体的には、市民サービスの窓口手続のデジタル化や、市役所業務の改善に向けた新しい技術の導入などを主軸に取り組んでいます。
さらに、オンラインでの子育て相談やモバイル端末の活用による市民対応など、市役所と市民の接点においてもデジタル技術を活用しています。
仙台市は、DXを単なる技術導入に留まらず、社会課題の解決や経済活動の発展を促すための新しい政策や組織の在り方を取り入れることで、地域社会のデジタル化を推進しています。
【ワンストップ窓口の実現】北海道
北海道北見市では、業務の効率化を図るために自治体BPRを実施し、書かない窓口やワンストップ窓口の実現に取り組んでいます。
自治体BPRにより、職員が来庁者の本人確認や必要書類の確認を実施し、システムを利用して申請書の作成支援を行います。
これにより、来庁者は簡単に申請手続きを完了することができ、申請書の作成作業が大幅に簡略化されました。
また、ワンストップ窓口を実施し、異動内容や本人確認を説明する手続きを複数回行う必要がなくなり、来庁者の移動時間や手続きの時間が大幅に削減されました。
さらに、RPAを活用した業務では、利用証明書交付申請や住民異動届の受付時にデジタルデータを活用し、RPAによって証明書交付や住民異動入力業務を自動化しています。
【ひぐまっぷ】北海道森町
北海道森町で推進されている「ひぐまっぷ」は、市町村のヒグマ担当者からの声から生まれました。
令和4年時点で北海道内の38の自治体で導入されており、ヒグマに関連する業務コストを約7割削減することに成功しました。
ヒグマを目撃した住人が役場へ通報し、職員が出没情報の確認を行います。
その後、「ひぐまっぷ」へ情報を入力することで、各市町村職員は住民に対して出没情報の公開が可能です。
今後もさらに利用エリアの拡大、システム改善の促進なども期待されています。
【観光DX】岐阜県高山市
インバウンド需要により多くの観光客が訪れる岐阜県高山市には、AIカメラを利用した地域活性化施策が実施されています。
自治体では限界のある対応策については、名古屋大学などに協力を仰ぎ、さらにNECといった民間企業に技術面のサポートを依頼しています。
観光客の人流を「見える化」することにより、さらなる観光事業の発展が期待される本施策。
「できないことを」を認め、外部へ依頼する姿勢が自治体DXに必要であることを示す好事例だといえるでしょう。
【サテライトオフィス誘致】徳島県神山町
サテライトオフィスとは、企業の本社から物理的に離れた地域に設置される拠点を指します。
徳島県神山町では、「ブロードバンド環境」を整備することで、全国各地の民間企業のサテライトオフィスを誘致。
実際に31社の誘致に成功し、地元民からの雇用創出に成功しています。
現在、日本の各自治体は人口流出や少子高齢化に伴う過疎化が加速しています。
こうした状況に対応するための施策として、今後注目を集める一例だといえるでしょう。
【行政サービスのオンライン化】大分県中津市
大分県中津市は、行政サービスのオンライン化を推進しています。
業務工数の削減によって、業務時間を年間約225時間削減することに成功。
地域住民によるオンライン手続きフォームの利用が増加していることから、今後もさらなる成果が期待されています。
若手社員の意見を積極的に取り入れつつ、旧体制が続きがちな自治体業務のDX化に成功しています。
また、ノーコードツール活用により、職員自身がデジタル化を促進。
低価格でありながらも高い効果を発揮した事例として注目を集めています。
|【2024年6月最新】現在進行形の取り組み
現在、全国各地で様々なDX化へ向けた取り組みが推進されています。
こちらでは、その中から最新の事例として以下2点を紹介します。
- テレワークトップランナー2024
- 地域デジタル基盤活用推進事業
テレワークトップランナー2024
総務省が推進する本施策は、テレワーク普及推進に向けて、優れた実績を持つ企業や団体を公表してきました。
現在はコロナ感染症の5類移行を受け、徐々にテレワークから出社への回帰がみられます。
こうした状況に対して、本施策はテレワークの価値を再度発信。
より多くの企業や団体が積極的なテレワークを推進するために、事例の発信と表彰を行うとしています。
地域デジタル基盤活用推進事業
本施策は、総務省が掲げる「デジタル田園都市国家構想」の実現に向けた総合的な支援となります。
「計画選定施策」「実証事業」「補助事業」の3つで構成されており、AI技術などを活用した一次産業のサポートが推進されています。
2024年には31件の提案があり、北海道や愛知県など、全国で15件の採択案件が決定。
今後の動向に注目が集まるDX事例の一つであるといえるでしょう。
|まとめ
いかがでしたか?
本記事では、自治体DXの推進ポイントや事例をわかりやすく紹介しました。
DXという言葉が使われる中で、実際に取り組む際には検討すべき事項や実施方法が多岐にわたります。
各自治体が直面する課題や現状に合わせて、DXについて検討を進めることが重要になるでしょう。
本記事の事例などを参考にしてみてくださいね。
では、今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
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