「DX銘柄」とは、デジタル技術を活用し、従来のビジネスモデルの変革を進め、新たな成長や競争力強化につなげることを目的とした企業を指す東京証券取引所の選定銘柄です。
この記事では、DX銘柄の選定基準やメリット、2022年の最新選定企業33社を紹介します。
また、DX銘柄に選定された企業は、その取り組みが注目され、投資家の関心が高まることから、株価上昇や資金調達の円滑化などのメリットがあります。
目次
|DXとは

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用してビジネスや社会を変革し、人々の生活をより豊かにすることを指します。
従来のビジネスモデルや社会システムは、デジタル技術の進化により、これまで実現不可能だった改革が可能になっています。
DXの例としては、AIやIoT、ビッグデータ、クラウドなどのテクノロジーを活用して、生産性の向上や顧客サービスの向上、新しいビジネスモデルの創出などが挙げられます。
また、デジタル技術を活用することで、従来のビジネスプロセスやサービス提供の方法を見直し、効率化・最適化を図ることができます。
DXは今後ますます重要性を増していくと考えられています。
なぜならデジタル技術は急速に進化しており、企業や社会がそれに対応できなければ競争力を失ってしまうからです。
DXに取り組むことで、新たな市場を開拓したり、従業員の生産性を向上させ、顧客満足度の向上に繋がります。
企業はDXの重要性を認識し、取り組むことが求められています。
|DX銘柄とは
「DX銘柄」とは、東京証券取引所に上場している企業のうち、デジタル技術を駆使してビジネスモデルの変革を進め、新たな成長や競争力強化につなげることを目的とした企業を指します。
この選定は、経済産業省・東京証券取引所・独立行政法人情報処理推進機構(IPA)によって毎年行われ、業種ごとに選出されます。
たとえば、2022年に選ばれた「DX銘柄」は、それぞれ「DX銘柄2022」と呼ばれ、中でも特に優秀な企業は「DXグランプリ」として表彰されます。
過去に何度も選出された企業もあり、詳細は経済産業省のウェブサイトで確認できます。
また、DX銘柄に選出されることは、その取り組みが投資家の注目を集めるため、株価上昇や資金調達の円滑化などのメリットがあります。
しかしながら、DX銘柄に選出されなくても、先進的な取り組みが認められる企業については「DX注目企業」として紹介される場合もあります。
DX銘柄が注目されるようになった背景には、急速に進化するデジタル技術がビジネスモデルの変革や生産性向上に不可欠であることがあげられます。
|DX銘柄に選定されるメリット
DX銘柄に選定されることで、優れたDX推進力と実績を持つ企業としての認知度が高まり、企業全体でのDXへの理解や、税制優遇措置の対象となる可能性があります。
以下では、DX銘柄に選定されることで得られるメリットについて解説します。
DX銘柄選出企業としてPRできる
DX銘柄に選ばれることは、企業にとって大きなPR効果があります。
ただし、デジタル技術を導入したビジネスモデルを確立し、DXを推進するための体制が整っていることが求められます。
DX銘柄に選定されることで、企業のDXへの取り組みや技術力が評価され、市場価値の向上や投資家からの注目が集まることが期待されるでしょう。
また、DX銘柄選出企業は経済産業省のウェブサイトで公表されるため、企業名が広く知られるようになります。
このように、DX銘柄に選出されることは、企業のプレステージや信頼性の向上にもつながるため、多くの企業が積極的にDXへの取り組みを進め、DX銘柄選出を目指しています。
会社全体にDXについて認識してもらえる
DX銘柄に選ばれることで、企業内でDXについての意識や知識が浸透しやすくなります。
DXは、IT部門だけでなく、全社的な取り組みが必要とされるため、企業全体の理解や支援が欠かせません。
またDX銘柄の応募には、企業内でDXについて共通認識を持ち、経営層と現場の従業員が協力して取り組むことが求められます。
このため、DX銘柄に応募する過程で、経営層と現場の意見交換が行われ、共通のビジョンを持つことができ、経営層がDXの重要性を認識することで、全社的なDX推進体制が整えられ、現場の士気が向上します。
企業全体でDXに取り組むことができれば、DXによる競争優位性を獲得し、市場競争力を強化することができるでしょう。
DX認定を取得すれば税制優遇措置を受けられる
DXを推進するため、国や地方自治体は認定制度を導入しており、企業がDX認定を取得すれば、税制優遇措置を受けられることがあります。
たとえば、国のDX認定制度においては、中小企業が導入したDX関連の設備やシステムに対して、減税の特例や償却資産の特例を受けられることがあります。
また、地方自治体によっては、DXを推進する企業に対して、補助金の支給などの支援策を行っている場合もあります。
ただし、DX認定を取得するためには、一定の条件を満たす必要があります。
たとえば、DXの推進に関する計画や実績を示すこと、必要な経費や人材の確保などが必要です。
DX認定を取得することで税制優遇措置を受けられることは大きなメリットですが、そのためには一定の取り組みが必要です。
|DX銘柄の選定手順
DX銘柄に選ばれるには、DXに関する認定取得やアンケート回答など、複数の段階を踏んで評価・選考されます。
以下では、DX銘柄の選定プロセスについて詳しく説明します。
DX認定を受ける
DX銘柄に選定されるには、まず経済産業省が実施するDX認定を取得する必要があります。
DX認定は、DXを推進するための組織体制や実績、ビジョンなどが評価される認定制度です。
取得するには、まず自社のDX推進状況を整理し、DX認定審査基準に基づいた申請書を作成し、経済産業省が実施する審査を通過する必要があります。
審査基準を事前に確認し、必要な書類を用意して提出することが重要で、経済産業省のウェブサイトから審査の進捗状況を確認することができます。
DX調査アンケートへ回答
DX認定を受けた企業は、デジタルトランスフォーメーション調査(DX調査)に協力することが求められます。
このアンケートは、国内の上場企業を対象に毎年実施され、DX推進に関する取り組みや成果について質問されます。
アンケートの回答結果は、業界全体のDX推進の現状や課題を分析するために利用されます。
回答企業には自社のDX課題や改善点についてフィードバックが行われ、DXを推進するための助言や支援が提供されます。
アンケートに回答することで、自社のDX推進について客観的な評価を得ることができるとともに、業界全体のDX推進に貢献することができます。
評価および選考
DX銘柄の選考は、一次評価、二次評価、最終選考の3つの段階で行われます。
一次評価では、企業のDX推進度合いをアンケート調査の回答項目とROE(自己資本利益率)という指標で評価します。
アンケート回答にある選択肢に基づいてスコアリングし、ROEを考慮して総合的に評価し、一定基準をクリアした企業が候補企業になります。
ROEは、企業が自社の資本をどの程度効率的に活用して利益を上げているかを示す指標であり、高いROEを持つ企業ほどDX銘柄に選ばれる可能性が高くなります。
次に、二次評価では、DX調査の記述回答に基づいてDX銘柄評価委員が評価を行います。
最終選考では、DX銘柄評価委員会による審査が行われます。
主に二次評価を基準として、それぞれの業種からDX銘柄を決定します。
|DX銘柄の評価項目
DX銘柄の評価は、以下の6つの項目で行われます。
ビジョン・ビジネスモデル、戦略、組織・制度、デジタル技術の活用・情報システム、成果と成果指標の共有、そしてガバナンスの取り組みです。
これらの項目により、企業がDXを推進する上で必要な要素をトータルで判断し、DX銘柄として相応しいかどうかの評価を行います。
「ビジョンとビジネスモデル」は、長期的な目標やDX推進における具体的な戦略やビジネスプランを評価するものです。
戦略は、企業がデジタル技術を活用してビジネス戦略を設計すること、組織・制度は、DXに必要な組織的な要素を整備することを、それぞれ判断しています。
「デジタル技術の活用・情報システム」は、AIやIoTなどの技術の導入状況や活用方法について評価するものです。
「成果と成果指標の共有」は、DXによって実現が叶った成果を社内で共有し、改善や今後のDX推進施策につなげることを評価するものとしています。
最後に、「ガバナンスの取り組み」は、企業の統治・管理体制に関する評価項目であり、DX戦略を推進する上で適切なガバナンス体制を整備することが求められます。
DX銘柄評価では、これら6つの評価項目を総合的に評価し、企業のDX推進力を評価します。
|「DX銘柄2022」選出企業
さて、ここからは実際に「DX銘柄2022」に選出された企業をご紹介します。
以下の33社が選ばれました。
引用:https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220607001/20220607001.html
- 清水建設株式会社(建設業)
- サントリー食品インターナショナル株式会社(食料品)
- 味の素株式会社(食料品)
- 旭化成株式会社(化学)
- 富士フイルムホールディングス株式会社(化学)
- ENEOSホールディングス株式会社(石油・石炭製品)
- 株式会社ブリヂストン(ゴム製品)
- AGC株式会社(ガラス・土石製品)
- 株式会社LIXIL(金属製品)
- 株式会社小松製作所(機械)
- 株式会社IHI(機械)
- 株式会社日立製作所(電気機器)
- 株式会社リコー(電気機器)
- 株式会社トプコン(精密機器)
- 凸版印刷株式会社(その他製品)
- 株式会社アシックス(その他製品)
- 株式会社日立物流(陸運業)
- SGホールディングス株式会社(陸運業)
- 株式会社商船三井(海運業)
- ANAホールディングス株式会社(空運業)
- KDDI株式会社(情報・通信業)
- ソフトバンク株式会社(情報・通信業)
- トラスコ中山株式会社(卸売業)
- 株式会社ふくおかフィナンシャルグループ(銀行業)
- 東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社(証券、商品先物取引業)
- SBIインシュアランスグループ株式会社(保険業)
- 東京海上ホールディングス株式会社(保険業)
- 東京センチュリー株式会社(その他金融業)
- 株式会社GA technologies(不動産業)
- 三井不動産株式会社(不動産業)
- 応用地質株式会社(サービス業)
|「DXグランプリ2022」選出企業
「DX銘柄2022」の中から特に優秀な取り組みを実施した2社が選ばれました。
DX銘柄の中でも栄えある称号といえるグランプリに選ばれたのは、以下の2社です。
引用:https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220607001/20220607001.html
- 中外製薬株式会社(医薬品)
- 日本瓦斯株式会社(小売業)
|「DX注目企業2022」選出企業
残念ながらDX銘柄には選定されませんでしたが、積極的なDX推進を行っているため、今後企業としての価値向上が期待されている以下の15社が注目企業として選ばれました。
引用:https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220607001/20220607001.html
- 株式会社ミライト・ホールディングス(建設業)
- キリンホールディングス株式会社(食料品)
- 株式会社ワコールホールディングス(繊維製品)
- 日立建機株式会社(機械)
- 株式会社荏原製作所(機械)
- 日本電気株式会社(電気機器)
- 横河電機株式会社(電気機器)
- 大日本印刷株式会社(その他製品)
- 日本郵船株式会社(海運業)
- アジア航測株式会社(空運業)
- BIPROGY株式会社(情報・通信業)
- 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(情報・通信業)
- アスクル株式会社(小売業)
- プレミアグループ株式会社(その他金融業)
- トランス・コスモス株式会社(サービス業)
|DX銘柄2023の選定はいつから?
「DX銘柄2023」の選定のプロセスはおおむね従来と同様です。
選定されるためには、まずDX認定を取得することが必要です。
なお、DX調査アンケートへの受付期間は、2022年12月1日〜12月21日18:00までとなっておりすでに終了しています。
12月〜4月にかけて評価及び選考が行われ、5月下旬〜6月中旬に結果発表が行われます。
また、評価項目や制度の変更点として、デジタルガバナンス・コード改訂に伴う調査項目の変更や、投資家目線での調査項目の追加、特別表彰制度の新設、業種別選定企業数の緩和などが挙げられます。
2023年版からは、投資家の意見を反映している「企業のDX情報開示」にも注目し、DX推進の実効性が求められます。
他にも、銘柄選定の枠外に特別表彰が設けられ、業種別の選定数も増加したため、企業のDX推進の質がより重視されることとなりました。
|まとめ
「DX銘柄」は、DXを推進、および積極的に取り組んでいる企業に与えられる称号であり、投資家や顧客からの信頼性向上や認知度向上につながります。
また、その選定基準については、企業のDXへの姿勢や情報開示など多岐にわたります。
そのため、選定されるということは企業としても非常に名誉あることでしょう。
また、2023年版からは「特別表彰制度」が創設され、枠が緩和されたことにより、活動への評価もますます高まります。
DX銘柄は、今後もビジネス環境の変化に対応するため、価値向上に向けた重要な指標となるでしょう。