高齢者に心身ともに健康に過ごしてもらうことは、介護の重要な目的の一つです。

しかし高齢者は、身体的な衰えもあり、思い通りの生活が困難だったり、施設の人手不足から質の高い介護サービスを受けられなかったりする場合があります。

そんな状況をVRの力で改善できるかもしれません。

この記事では、VRが介護の現場で役立つ理由やVRを導入するメリット、おすすめサービスについて詳しく説明していきます。

この記事を読むことで、介護の現場でVRに何ができるのかを知り、VRの導入を検討できるようになります。

|VRは高齢者のQOL向上に役立つ

VRの活用によって、高齢者のQOL(生活の質)向上が期待できます。

なぜなら、VRは近年の様々な進歩から高性能になり、お年寄りに十分楽しんでもらえるようなコンテンツが増えたためです。

例えば体が弱っていても、VR空間内ではあらゆる場所に自由に行くことができ、他者とコミュニケーションをとることが可能です。

できることが増えれば、前向きな気持ちを持ちやすくなるため、VRは心身ともに健康な生活を送る助けになります。

また運動を促したり、リハビリに役立つサービスがあったりと、健康維持にも役立ちます。

【VRとは】

VRとはVirtual Reality(バーチャルリアリティー)の略称で、コンピューター内に作り出された3D空間です。VRゴーグルを装着すれば、VR空間を360°見渡せて、まるで現実のように行動できます。

|VRを導入する4つのメリット

高齢者介護の現場にVRを導入することで得られるメリットは主に以下の4つです。

・楽しみが増え、ストレス解消につながる

・リハビリを楽しく行える

・フレイルの予防につながる

・介護スタッフのトレーニングに生かせる

楽しみが増え、ストレスの解消につながる

VRを用いることでお年寄りに様々な楽しみを提供できます。

例えば、思い出の場所や有名な観光地へのバーチャル旅行、貴重な史跡の見学などを通じて生活に刺激や感動がもたらされます。シニア向けのゲームも楽しく、趣味や生活の目的になることもあるでしょう。

体が弱ると外出がおっくうになり、「人に迷惑をかけたくない」などの理由で、どうしても部屋に閉じこもりがちです。

しかしVRなら仮想空間上のどこにでもでかけることができてストレスの解消になるので、心の健康維持に役立ちます。

リハビリを楽しく行える

VRを使うことで、リハビリを楽しいものにできます。

リハビリは単調な作業の繰り返しでつらいイメージがあります。しかしVRならゲーム感覚でリハビリを行えるので、モチベーションの維持が可能です。

実際、リハビリ目的で作られているVRも多く、脳機能の改善に役立つものや、足腰の健康維持に役立つコンテンツが作られています。

VRで楽しく身体機能の改善に取り組めば、リハビリを行うご本人のやる気も上がり、高い効果が期待できるでしょう。

フレイルの予防につながる

フレイルとは虚弱のことで、年齢と共に体や心の活力が低下してしまい、介護が必要になる一歩手前の状態です。

VRはこのフレイルの予防に役立ちます。

なぜならVRを使えば、体が思い通りに動かなくてもVR上のあらゆる場所にでかけて友達とコミュニケーションをとったり、最新のテクノロジーに触れたりして新鮮な刺激を得られるためです。

体が思うように動かないと、活動の幅が狭まるものです。知人友人にも会わなくなって、外出のモチベーションが減ります。するとどんどん体を使わなくなりフレイルになるリスクが高まります。

VR空間内で刺激を得ることで、現実での外出や運動へのモチベーションが高まることが期待できます。

介護スタッフのトレーニングに生かせる

VRは介護スタッフのトレーニングに生かすこともできます。

VRであれば、人間を相手にすることなく、しかも現実に近い環境でトレーニングできるため、とても便利です。

介護の現場は、実際にお年寄りを相手に仕事をします。ベッドでお年寄りの体勢を変えたり、体を支えて移動したりと、直接体に触れて仕事をする機会が多くあります。

お年寄りにケガや不快な思いをさせられないので、新人だからといって失敗できません。

VRを使えば、スタッフは事前に訓練を積むことができるので、新人でも戸惑う場面が減り、自信をもってクオリティの高い業務ができます。

|VR導入における注意点

介護の現場にVRを導入する際に知っておくべき注意点は主に以下の3つです。

・お金がかかる

・VR酔い

・ある程度広いスペースが必要

VRを導入するには専用のVRデバイスが必要です。

高性能PCや周辺機器が必要になるケースもあり、場合によっては数十万円以上の費用が必要になるでしょう。ただし、維持費などはそれほどかからないため安心です。

VRゴーグルを付けた状態で映像を見たときに、乗り物酔いのような症状を引き起こしてしまうことがあります。

もともと酔いやすい方は特に注意が必要で、リラックスした環境で無理なく行う必要があります。

VRコンテンツには体を動かして体験するものが多くあります。

そのためある程度広い空間で行わないと、壁にぶつかったり、物に足をぶつけて転倒したりと、ケガの原因になりかねません。

事前に利用するコンテンツを確認して、どの程度のスペースが必要かを確認しておきましょう。

|VRを導入する流れ

実際にVRを導入するときの流れは以下の順番になります。

1. 利用したいコンテンツを選ぶ

2. PCやVRゴーグル、周辺機器などを用意

3. VRコンテンツを購入

4. VRゴーグルを装着して体験開始

VRゴーグルなどのデバイスには様々な種類があるので、使いたいコンテンツに対応しているものを選びましょう。

レンタルを行っているサービスもあるので、初期費用を抑えたい場合やお試しで使ってみたいときはチェックしてみてください。

またVRコンテンツを提供している会社には、体験会を実施しているところもあるので、気になるサービスを見つけたら一度問い合わせてみるとよいでしょう。

|高齢者向けおすすめVRサービス

コンテンツの特徴から高齢者におすすめできるVRサービスを4つピックアップしました。

・RehaVR

・360°VR+M

・mediVR カグラ

・リハまる

RehaVR

【主な特徴】

・全国の景色を楽しめる

・足こぎペダルで運動できる

・トレーナーと画面を共有できる

「RehaVR」は下肢のトレーニングをしながら、全国の美しい風景映像を体験できるVRです。

360°見渡せる8K映像で、東京スカイツリーや江野島、沖縄首里城など全国各地の観光地や都市、自然の風景を楽しむことができます。

足こぎペダルがVRと連動しており、ペダルをこぐと映像が進んでいくので、まるで散歩するような感覚で下肢のトレーニングができます。

また、VRゴーグルに映し出されている映像は、iPadとリアルタイムで同期可能なため、トレーナーはRehaVRの利用者と同じ映像を見ながら会話したり、指示を出したりできます。

360°VR+M

【主な特徴】

・VR鑑賞会など体験会を実施

・サイクリングマシンを使ったコンテンツ

・視聴用大型モニターで、利用者の見ている映像を他の人も一緒に見られる

「360°VR+M」は心と体のリハビリテーションのためのサービスです。

映像コンテンツには「新潟の長岡まつり大花火大会」「福島の三春滝桜」・「鎌倉・江の島散策」などがあります。

また「しあわせペダル」というサイクリングマシンを使ったコンテンツでは、実際にサイクリングしているような体験が可能です。

ドローンで撮影した映像を用いたコンテンツがあり、自転車で空を飛んでいるかのような感覚が味わえます。

mediVR カグラ

【主な特徴】

・歩行機能改善のためのVR

・椅子に座って体験

・一人一人に合わせたリハビリが可能

「mediVR カグラ」は、歩行に必要な運動機能と認知機能を取り戻すためのリハビリ用VRです。

手を伸ばす動き(リーチング)を繰り返すというシンプルな動作で、体のバランスや認知能力を鍛えます。

「水平ゲーム」や「落下ゲーム」といった、認知負荷(状況や操作のわかりやすさ)の程度が異なるコンテンツがいくつか用意されていて、一人一人に合ったトレーニングが可能です。

イスに座ったまま動作を行うので転倒の危険がなく、安全、安心なところにも注目です。

リハまる

【主な特徴】

・認知症や脳卒中患者のためのVR

・一人一人に合わせてコンテンツのレベルを変えられる

・介護スタッフのリハビリ業務の時間短縮にも有効

「リハまる」は、認知症や脳卒中向けのリハビリシステムで、ゲーム形式で楽しくリハビリを行えます。

迷路を進んだり、空中に浮かび上がる数字に触れたり、条件に沿って花を摘むといった、様々なバリエーションのコンテンツが用意されています。

データが自動的にわかりやすくまとめられてレポート化されるので、リハまるを用いたテスト結果やリハビリによる改善の結果など、一目でわかるところもポイントです。

リハビリの実施に必要な準備や記録のための時間を短縮できるため、トレーナーや介護スタッフの助けにもなります。

|まとめ:VRで高齢者を元気に!

ここまで、主に以下の内容についてお伝えしてきました。

・VRは高齢者の生活の質を上げられる。

・VRを介護の現場に導入することで、多くのメリットがある

・VR酔いや高額の機器、広いスペースが必要といった注意点もある

・高齢者向けのVRコンテンツがいくつも存在する

VRを使えば、仮想空間上で様々な体験が可能です。

安全な室内にいながら、VR空間内のあらゆる場所に行って、自由に行動できます。

このような新鮮な体験は、高齢の方から新たな活力を引き出すきっかけになります。

ぜひこの機会に、お年寄りにVRを使っていただく機会をご提供ください。

きっと喜んでいただけますよ!