対面での活動が制限されたコロナ禍によって、営業職や接客業といった活動は大きなダメージを受けることになりました。
そんな中で急激に注目を集めている手法が、メタバースを活用した営業活動です。
音声通話やZOOMなどのテレビ会議とは異なり、デジタル空間上においてアバターを通じて行うコミュニケーションは現実世界と遜色ない体験を提供できます。
すでに不動産、アパレル、自動車、金融など多種多様な業界において導入が行われているメタバースを活用した営業ですが、まだまだ発展途上であるといえます。
本記事では、メタバースで営業活動を行うメリットに加え、実際に行われている事例を踏まえて解説していきます。
今後広がる可能性が高いメタバース営業について、今の段階から理解を深めておきましょう。
目次
|メタバースで営業活動を行うメリット
メタバースを利用した営業活動には、主に以下のようなメリットがあげられます。
- 物理的な距離を問わない営業活動が実現
- 業務効率の向上
- 対面で接客しているような訴求力
- 体験を加えることで新しい価値を提供
まずはそれぞれの内容について、詳しく確認していきましょう。
物理的な距離を問わない営業活動が実現
これまで、企業の営業活動は得意先へと足を運ぶ物理的な移動を伴いました。
そのため場合によっては遠方への出張などにより、移動費や宿泊費が発生することもあります。
また、大規模なイベントを開催する場合においても、開催地から遠い顧客に対してアプローチすることが難しく、限定した範囲に対する営業活動となることは仕方ありませんでした。
しかし、メタバースで営業活動を行うことで、物理的な距離を問わない営業活動が実現します。
オンライン上でいつでも顧客と繋がれるため、場合によっては海外にいる顧客に対しても手軽にリーチすることが可能になるのです。
これは話を聞いてみたいが、現地に足を運ぶのが難しいと考える場合にとってもメリットが大きいはずです。
世界中のどこにいても、気軽に営業活動が行える点はメタバースを利用する大きなメリットとなります。
業務効率の向上
物理的な距離を問わない営業がメタバースで実現できることは、業務効率の向上に大きく貢献します。
現実世界で行う営業は顧客の都合に合わせてスケジュールを調整し、その時間に合わせて現地に出向かなければいけません。
前後で予定を入れたいと思ったとしても、移動時間などの問題から1日に営業できる件数は限られてしまうことも少なくありません。
しかし、メタバース上での営業活動であれば、1つの営業が終わったら即座に別の顧客に対してアプローチすることが可能です。
移動時間、経費を大きく削減できることは業務効率を圧倒的に高められるはず。
少人数で多くの顧客を相手にできるため、営業の人員削減だけではなく全国各地に点在する拠点のスリム化なども検討できるかもしれません。
対面で接客しているような訴求力
オンラインを通した営業活動はこれまで、音声通話やZOOMなどを利用したテレビ通話が活用されてきました。
お互いの顔を確認しながら接客できますので一定の効果は期待できますが、どうしても伝えきれない微妙なニュアンスが存在してきたことは否めません。
しかし、メタバース上での営業活動は、現実世界に限りなく近い環境で行うことが可能です。
アバターとなってメタバース上で顧客と対話しながら行う営業活動は、現実世界で対面して行う場合と限りなく近い訴求力を発揮します。
顧客が抱える問題を丁寧にヒアリングし、その情報を元にした提案を実施できることはメタバースならではのメリットとなるはずです。
体験を加えることで新しい価値を提供
メタバースで行う営業活動は対面での対話や接客だけではありません。
メタバース空間にショップをオープンし、実店舗では実現不可能な多様な体験を顧客に提供することも可能です。
アニメやゲームの世界のような独特の世界観を再現することや、デジタルでの商品表示、アバターによる商品の試着、仮想通貨を利用した決済など、顧客に対して新たな体験を提示できるはず。
メタバースだからこそ可能な体験を顧客に提供し、ブランドの魅力をアピールすることにも繋げられるのです。
また、メタバース空間に営業広告を出すことや、ゲーム内に自社製品を設置してアピールするなど、新しい訴求方法も生まれてきています。
従来の営業活動とは異なる手法を提供することで、魅力的に感じてもらえるはずです。
|メタバースを利用した営業活動事例
まだまだ発展途上のメタバースですが、すでに営業活動に導入している企業も現れています。
メタバースを利用した営業活動事例として、以下の内容をそれぞれ紹介します。
- 不動産
- アパレル
- 自動車
- 金融
- 製薬
- イベント交流会
不動産:ショールームやモデルハウス
不動産業界ではショールームやモデルハウス、さらには物件の内見などにおいてメタバースを活用する取り組みが進められています。
通常であれば顧客が現地に足を運び、現実世界の物件で確認する必要がありますが、メタバースを利用することでその手間を削減できるのです。
メタバースの利用は物理的な移動の手間を省くだけではなく、実際の住環境のイメージをより具体的に抱くことにも役立ちます。
メタバース上の物件内に、家具や家電などのバーチャル映像を重ねることで、入居後のレイアウトや環境を簡単に再現できます。
将来的には不動産を探す顧客の多くは、メタバースでの内見を元に候補を絞り込むといった流れで進めていく可能性が高いといえます。
アパレル:販売スタッフ
アパレル業界では近年、実店舗よりもECサイトを通じた販売が伸長しています。
しかし高額商品になればなるほど、現物を確認できないことによるデメリットが大きくなり、返品リスクを考慮して購入を控える顧客も少なくありません。
このような問題を背景に、ECサイトにおいても実店舗に近い接客を実現するためにメタバースが活用されています。
ECサイトでは難しかった顧客それぞれに応じたおすすめ商品の提案、実際の商品イメージを確認しながらの購買が自宅にいながら可能になるのです。
実在するアパレル商品を愛用するスタッフがアバターとなり、メタバース空間で接客してもらえる環境は実店舗での購買と遜色ありません。
購入した商品はECサイトを通じて自宅に郵送されることはもちろん、メタバース上のアバターが着用するデジタルアイテムとしての購入も可能となっています。
自動車:新車の試乗会
自動車業界では、実店舗での試乗会や接客をメタバース空間において実施する取り組みが進められています。
本来であれば店舗に足を運び、実際の道路を走る必要のある試乗がいつでもどこでも可能になることは顧客にとって大きなメリットがあるといえます。
メタバース上に再現されたドライブコースにおいて、試乗車を運転できる環境はメタバースならではの特徴です。
現物の車同様に運転席、助手席、後部座席への着席も可能となっており、車の特徴を立体的に体感することが可能となります。
面倒な書類手続きも必要としませんので、気軽に車の性能を確認できる点はメタバースでしかできない強みです。
今後もメタバース試乗会の回数を重ねることでノウハウを蓄積し、より精度の高い体験へと進化することが期待されます。
金融:資産形成の相談
金融業界においては、これまで対面で行っていた金融商品などの提案業務をメタバース上で行う取り組みが進められています。
金融商品はその特性上、顧客それぞれの情報に対するヒアリングと、それを元にした適切な商品提案を行う必要があります。
高額商品に対する納得感を与える必要があるので、対面接客が最も重要でありオンライン化は難しいとされてきました。
しかし、メタバース空間においては現実世界に近しい環境で顧客情報のヒアリングから商品提案が可能になると期待されています。
専門知識を持ったスタッフと距離の近い交流をメタバース空間で行うことで、物理的な距離を問わない商品提案が実現するのです。
製薬:医師への講演会
製薬業界はコロナ禍によって大きな変革を求められることになりました。
医師をはじめとした医療従事者に対する新薬の説明、講演会といった人が集まる環境が制限され、これまで行ってきた提案活動がスムーズに実施できなくなったのです。
そこで、活動の一部をメタバース上で行い、対面に限りなく近い円滑なコミュニケーションを生み出そうと動き出しました。
ある製薬会社ではメタバースを活用した情報提供として、「仮想空間上での研究会・講演会」を試験的に進めています。
また、ZOOMなどのオンライン会議では伝えきれない微妙なニュアンスや感情についても、メタバース上であれば比較的円滑に進められることが期待できます。
オンラインでも現実世界に近い環境でコミュニケーションが取れる手段として、メタバースは注目を集めているのです。
イベント交流会
顧客との接点を作ることを目的にしたイベント交流会についても、メタバースを活用した取り組みが注目を集めています。
現実世界でのイベント開催は、どうしても物理的な制約が大きくなるため遠方の顧客に対してアプローチできないデメリットを抱えていました。
全国各地で定期的に開催することも可能ですが、経費がかさんでしまう上に日程調整や会場手配の手間も発生してしまいます。
しかし、メタバースでイベントを実施すれば、これらの問題を一気に解決し国内外を問わずあらゆる地域に住む顧客を相手にできるのです。
前述した通り、メタバース上でのコミュニケーションはオンラインでありながら、現実世界に近しい環境で交流できます。
また、デジタル技術や最新技術に関心が高い人が集まりやすいことから、業界によっては見込み顧客を多く発掘できるかもしれません。
|メタバースは営業活動の幅を大きく広げる
前述した通り、メタバースを用いた営業活動はすでに各業界において試行錯誤されており、今後の営業活動の幅を大きく広げることが期待されています。
メタバースをビジネスに活用することによる可能性は無限大に広がっています。
現在はまだまだ発展途上のメタバースですが、この先新たなビジネスが数多く現れることになるはずです。
もちろん、メタバース自身が抱える課題も現状では存在していますが、法整備が整うにつれて利用者は爆発的に増加していく可能性は高いといえます。
メタバースについての基本知識や営業活動以外のビジネスシーンでの活用事例、さらにはその将来性などについては以下の記事で解説しています。
|まとめ
メタバースを営業活動において活用するメリットは主に以下の内容があげられます。
- 物理的な距離を問わない営業活動が実現
- 業務効率の向上
- 対面で接客しているような訴求力
- 体験を加えることで新しい価値を提供
コロナ禍は各業界のデジタル化を急激に進め、オンライン上で行える業務の可能性を一気に押し広げました。
物理的な距離を問わず、まるで目の前に相手がいるかのような訴求はメタバースでしか成し得ない魅力の1つです。
すでに不動産、アパレル、金融などといった幅広い業界においてメタバースを活用した営業活動は行われており、顧客にとってより良い環境を提示するために試行錯誤が繰り返されています。
今後も広がる可能性が高い、メタバースを活用した営業活動に注目すべきといえるでしょう。