テクノロジーが進化し、YouTubeの画像編集からアニメ・映画の自主製作まで、

映像制作の分野はアマチュアでもクオリティの高い作品が作れるようになりました。

映像制作の現場で当たり前のように使われているCGや3D技術は、

ひと昔前は高価なモノでしたが「Unreal Engine」の登場でプログラミング知識が無くても

クオリティの高い創作物が可能になりました。

そこで今回はハリウッドも注目している「Unreal Engine」についてご紹介します。

|UnrealEngineとは

出典:https://www.unrealengine.com/ja/

「Unreal Engine(アンリアルエンジン)」とは、アメリカの会社Epic Gamesが開発した

ゲームエンジンです。

まず、ゲームエンジンとはゲーム開発にあたり必要なソフトウェアで、

日本で有名なモノだとPlaystation4やNintendo Switchなどのゲーム開発の現場で使用されています。

3D画像処理や物理演算、サウンド入力などゲームの仕組を構成し、

稼働させるために必要なパーツが一式揃った道具箱と思って頂くと想像しやすいでしょう。

本来、ゲームエンジンのような機能を実装したゲームを作るには難しいプログラミングを作り込まないと完成しません。

また、3D画像処理や物理演算などはゲームだけではなく、今ではテレビ番組や映画・アニメなど映像制作の幅広い分野で活用されています。

そこでデジタル画像処理において汎用性の高いゲームエンジン「Unreal Engine」を使うことにより、クリエイティブの効率化を測れることから映像制作の現場でも活用されているのです。

|UnrealEngineが注目される理由

「Unreal Engine(アンリアルエンジン)」がゲーム制作以外の分野でも注目される理由は画像処理の速さと自由度が高い事です。

3Dでリアルティのある人物や物体、風景などを作り込むだけではなく、

それらを自由に感覚的に操作出来ることにより、アイデアの創作、

シーンのシミュレーションが出来るので作品の制作工程も時短でき、

さらに「Unreal Engine」の映像はそのまま作品にできるレベルの画像クオリティです。

そのため、クリエイターはプログラミングやデータの微調整など、デザインやクリエイティブ以外に割かれる時間が減少し、創作に集中しながら純度の高いアイデアをリアルタイムで表現できるため汎用性の高い「Unreal Engine」が映像制作の業界でも注目されています。

|UnrealEngineで映像制作をするメリットと注意点

実際に「Unreal Engine」を映像制作で使用するメリットは以下の3つです。

  1. 無料で質の高い映像制作が可能
  2. 3D動画が効率的に作れる
  3. 多彩な機能でプロ同等の編集も可能

そして注意点は以下の2つです。

  1. ハイスペックPCが必要
  2. 日本語の対応が発展途上

順に解説していきます。

メリット①無料で質の高い映像制作が可能

「Unrea lEngine」はプロのクリエイターが実際に活用しており、

大手メーカーが販売しているゲームや映画にも使われているゲームエンジンですが、

すべての機能が基本的に無料で使用できます。

料金がかかる場面としてアセットという、キャラクターや物体映像、アクションギミックなど、

別のクリエイターが制作したデータやプログラムに関して課金する場合と、販売したゲーム1タイトル当たりの粗収入が1億円以上の場合、収益に対して5%のロイヤリティを支払う必要があります。

この規模の売り上げは世界的なヒット作ぐらいの金額なので、

一般ユーザーは基本的には無料で使い続ける事が可能です。

使用にあたりライセンス契約があり、使用用途にあったライセンスを選びましょう。

メリット②3D動画が効率的に作れる

「Unreal Engine」は3Dグラフィックの精度が非常に高く、ゲーム業界以外からも高評価を受けています。その理由は高度なデータ処理と演算技術です。

動画編集ソフトと比べ「Unrea lEngine」は高度な演算機能のおかげでレンダリングと呼ばれる編集が効率よく行えます。

レンダリングとは、3Dグラフィックに動きやサウンドなどギミックを追加してそれを一つのデータにまとめるような作業です。

この作業にはデータやプログラムが複数重なるため高度な演算が必要で、作業中に画像が固まるなど映像制作に多くの時間をレンダリングに費やします。

そこにゲームエンジンのような3Dグラフィックに特化した機能をもったソフトを使うことで、

作業の効率化を図ることが出来るのです。

メリット③多彩な機能でプロ同等の編集も可能

「Unrea lEngine」には様々なビジュアルエフェクトや編集機能が使用できます。

まず、動画編集では「シーケンサー」と呼ばれる機能を使うと、動画を流しながらそのタイムライン上でカット・編集が可能で、思いついたアイデアやインスピレーションも止めることなく反映出来るため効率よくさぎょうが出来ます。

また、3Dグラフィックでキャラクターを作成する場合は、今まで開発には時間とコストがかかっていました。

しかし「Unreal Engine」に実装された「MetaHuman Creator」という機能を使えば

一気に簡略化でき、クオリティの高い人物の3Dグラフィックを作成することも可能です。

この機能でキャラクターを作り込み、用意されたアクションキャプチャーやアニメーション等と連動させれば質の高い映像作品が効率的に制作出来ます。

注意点①ハイスペックPCが必要

無料で高品質な3Dグラフィック処理や編集が出来るゲームエンジンですが、

高性能なソフトウェアですのでパフォーマンスを最大限に利用するにはハイスペックPCが不可欠です。

「Unrea lEngine」の公式サイトでは以下の内容を推奨しています。

  1. OSはWindows10-64-bit以上
  2. Quad-core Intel Intel または AMD、2.5 GHz またはそれ以上のプロセッサ
  3. DirectX 11 または DirectX 12 対応のグラフィック カード
  4. SSD搭載推奨

また、VRや本格的な3Dゲームなど作り込む場合はさらにスペックを上げたゲーミングPCが必要でしょう。

価格的にはスペックにもよりますが、おおよそ250,000円〜300,000円以上かかる様子です。

注意点②日本語の対応が発展途上

「Unreal Engine」は日本語対応されていますが日本の利用者も少なく、

コアな情報は日本語では中々手に入りにくい状況です。

一方で英語圏内では活発に活用され、一般ユーザーのコミュニティなどでは様々な情報がやり取りされていますので、情報がまったくないわけではありません。

チュートリアルの動画は英語ですが字幕機能で翻訳したり、使用方法や解決したい問題の検索はPCの翻訳機能等を使用していけば解消出来そうですが、効率的とは言えないでしょう。

しかし、日本のユーザーも徐々に増え日本語のオンラインスクールも探すと出てくるので

利用するのもおすすめです。

|映像作品でのUnrealEngine活用事例

実際に「Unreal Engine」を活用して制作された映像作品をいくつか紹介致します。

紹介する作品以外にも沢山事例がありますが、今回は映画ジャンルに絞って解説していきます。

優れた機能を引き出した3Dグラフィックは必見ですので是非チェックしてみてください。

マンダロリアン

言わずと知れた名作「スターウォーズ」のスピンオフ作品です。

シーズン1の制作にあたり新たな映像チェレンジとして「Unreal Engine」を活用し幻想的でダイナミックな演出をしています。

活用事例として、撮影用のステージ、又は各シーンのセットの背面に画角一杯に移り込む解像度の高い画面を壁のように設置します。

その画面に作成した風景や戦闘シーンを映し出し、俳優のリアルな演技の背面では3Dグラフィックで再現された背景を流しリアルタイムでデータをコントロールしながら撮影する事で、セットや実物を利用したギミックでは表現できない世界観を見事に表現しています。

また、3Dグラフィックを操作するオペレータを複数人スタンバイさせ、

同時に「Unreal Engine」を動かすことで複雑な表現を可能にしています。

マトリックスレザクションズ

キアヌ・リーブス主演の映画「マトリックス」、斬新なVFXで新作が出るたびにストーリーとあわせて最新の映像技術にも話題が及ぶ大作です。

マトリックスレザクションズの中で「UnrealEngine」で制作されたシーンがあります。

そのシーンは湖の中央にある道場で格闘を通じ、隠された能力を開花させるシーン。

第一作目でもこれと同じ趣旨の重要なシーンがあり、本作ではそのシーンをオマージュすることでストーリー上起点となる重要なシーンでした。

このシーンでは「Unreal Engine」のリアルタイムレンダリングの性能が充分に発揮されています。

動く人物や、常に変化する湖の水面、ライティング、木々のざわめきなど細かいギミックがすべて連動し繊細ながらもダイナミックなエフェクトをかけながら編集するには、高性能なゲームエンジンが最適な事を証明しています。

シン・ウルトラファイト

映画「シン・ウルトラマン」をもっと楽しむために、というコンセプトでスピンオフ作品として1970年から1971年にかけて放映された怪獣番組「ウルトラファイト」を復活させた2022年の作品です。

一部の映像で他の3Dグラフィック制作ソフトを使っていますが、

ほぼすべての映像を「Unrea lEngine」で制作・編集しています。

この作品でもリアルタイムレンダリングでの編集や、リアルなフォトグラフィック、「Unreal Engine」で制作したデータを他のアプリケーションにエクスポート出来たりする汎用性の高い性能が、映像制作のあらゆる工程の効率化につながっていることが作品制作に導入されたポイントになったそうです。

|まとめ

今回は「Unreal Engine」が映像制作の現場で注目されている理由と活用事例をご紹介致しました。

「Unreal Engine」はゲームエンジンでありながら高性能な3Dグラフィック処理が出来るソフトウェアとして映像制作の現場でも数多く活用されています。

ポイントはリアルタイムで編集やVFXとの連動を可能にするレンダリング機能に優れていることと、プログラミングというクリエイティブ以外の作業を減らせる汎用性です。

すべての機能は無料で使用できるので、映像制作をするのであれば必ず一度は触ってみたいソフトウェアでしょう。