近年VR技術が目覚ましい進歩を遂げています。
次世代を担う技術として期待されているVRですが、その発展の裏にはどのような出来事があったのでしょうか。
VR技術の過去を知れば、知見が深まるだけでなく、VRの今後の展開についても予想しやすくなるかもしれません。
そこでこの記事ではVRの概念が生まれたところから現在に至るまでを、かいつまんで解説していきます。
この記事を読めばVRの歴史を知ることができ、VRの全体像を把握できます。
目次
|コンピューター上にあるもう一つの現実「VR」
VRは「Virtual Reality」の略語で、日本語では「仮想現実」と呼ばれます。CGや3D技術によって作られた仮想空間をまるで現実世界のように体験できる技術です。
現在はゲームによく利用されていますが、医療や教育の現場にも応用の幅が広がっており、今後ますますの発展が期待されています。
|VR進歩の歴史
近年VRデバイスの進歩やメタバースという言葉が登場して注目を集めていますが、そのはじまりは意外に古く、すでに50年以上の歴史があります。
ここからは過去から現在に至るまでのVRに関する様々なイベントを振り返っていきます。
VRのはじまりは1930年代の小説
VRの概念が最初に登場したとされるのは、1935年に発表された小説「Pygmalion’s Spectacles」の中です。
この小説はスタンリー・G・ワインボウムによって書かれたSF小説で、作中にVRゴーグルのような機能を持つ魔法のメガネが登場します。
また1937年に発表された小説「フェッセンデンの宇宙」には、メタバースのような概念が登場します。
「フェッセンデンの宇宙」は、エドモンド・ハミルトンによるSF小説で、科学者によって我々が住む宇宙とは別の宇宙が創造されます。
このように1930年代には、VRはまだ小説の中の想像上の産物でした。
筐体型のVRマシーン「Sensorama」
1950年代になると、コンピューター技術の進歩に伴ってVRマシーンが作られるようになりました。
例えば、1957年に登場した「Sensorama」は世界でも最初期のVRマシーンとして知られています。
この「Sensorama」は筐体型のVRマシーンで、イスに座って大型の筐体をのぞき込むことで3D映像を楽しめました。
さらに映像だけでなく、アロマの香りや送風、イスを振動させる工夫なども施されていました。
1960年代に最初のHMDが登場
1960年代に入ると現在のVRゴーグルやHMD(ヘッドマウントディスプレイ)とほぼ同じ形をした、3D映像を視聴できる装置が現れます。
まず1960年に登場した「Telesphere Mask」は、モーショントラッキング機能こそないものの、両眼立体視が可能な最初のヘッドマウントディスプレイと言われる装置です。
また1968年に発表された「ダモクレスの剣」は、天井から吊り下げられたヘッドセットを装着することで立体的な映像が視聴でき、さらに頭を動かすと画面も連動して動くようになっており、現在のヘッドトラッキング機能に近い仕組みが搭載されていました。
このように1960年代は現在のVRデバイスの原型が登場した年でした。
第一次VRブームの到来
1990年代前後になると、VRの概念が少しずつ一般に認識され始めました。
そのきっかけとなったのが、1989年に発表されたVPL Research社製の「The Eyephone」と「The Data Glove」です。
「The Eyephone」はHMD(ヘッドマウントディスプレイ)「The Data Glove」はハンドトラッキング用のグローブで、現在のVRと基本的には同じ体験ができる装置です。
ちなみに「VR」という言葉が使われたのもこの時がはじめてだと言われています。
VR技術が一般に注目されはじめてからは、VRの開発が盛んにおこなわれるようになります。
これが第一次VRブームです。日本でも、1995年に任天堂が「バーチャルボーイ」というゲーム機を発売しました。
しかし当時のVR技術はまだまだ未熟で、十分な没入体験を得ることができず、しかも価格が高価すぎたこともあって2000年に突入するころにはVRブームは失速、次第に忘れられていくことになります。
モーショントラッキングセンサー「Kinect」が登場
2010年になるとマイクロソフト社のモーショントラッキングセンサー「Kinect」が発売されました。
「Kinect」はテレビの前に設置するだけでユーザーの動きを捉え、ゲーム画面に反映できる装置です。家庭でも気軽に楽しめるVR装置として当時は画期的でした。
発売当時はゲームでの利用はもちろん、医療分野や研究にも使われており、VRの新たな可能性を示しました。
「Oculus Rift」が登場!再びVRに注目が集まる
そして2012年、ついに「Oculus Rift」が発売されます。
「Oculus Rift」は世界初の家庭用向けPC VRゴーグルです。
当時20歳のパルマー・ラッキー氏がクラウドファンディングによって約2億8,000万円の資金を調達し開発が実現しました。
個人でも購入可能なヘッドセットにするために、低価格化した液晶パネルを採用して値段を抑えることに成功しました。
機能面も画期的で、ヘッドセット内のレンズに魚眼レンズを採用し、視界を360°覆うことに成功。
外部センサーを設置することでユーザーの体の動きをVR空間内に反映でき、さらに専用のコントローラーを使うことで、これまでにない臨場感にあふれた体験を実現しました。
第二次VRブームが到来
「Oculus Rift」が発売されてから2年後の2014年、Oculusの革新的な技術に目を付けたFacebook(現在のMeta社)がOculusVR社を20億ドル(約2,000億円)で買収しました。
この買収により世間の注目と期待感が一気に高まり、第二次VRブームが訪れます。
さらにOculus 買収の2年後「VR元年」と呼ばれた2016年がやってきます。
この年は、製品版Oculus Rift CV1発売を皮切りにHTC社の「HTC Vive」、ソニーの「PlayStation VR」が立て続けに発売され、VR市場が一気に活性化しました。
この頃からVR技術の進化がどんどん加速していきます。
|進歩がさらに加速!現在のVR
現在もVRの進歩は続いています。
2021年Facebookが名称をMetaに変更したことで「メタバース」が注目されました。
また、NFTが誕生したことで、デジタルアイテムの所有権や唯一無二性が証明できるようになり、メタコマースの可能性も広がっています。
さらにVRゴーグルなどのVRデバイスもクオリティの向上と低価格化が進んでおり、数多くの魅力的な製品が続々と登場、最近ではMeta社の最新VRゴーグル「MetaQuest3」やAppleのVRとAR(拡張現実)を融合させたヘッドセット「Vision Pro」(ビジョン・プロ)が発表されて大きな話題となりました。
【メタコマース】
メタバース上で行われる販売や販売促進活動のこと
|VRの今後 フルダイブへの挑戦
さらなる発展が期待されるVRですが、今後の可能性として「フルダイブ」の可能性が模索されています。
フルダイブは「完全没入型VR」とも呼ばれるもので、視覚や聴覚だけでなく五感すべてでVR空間に接続して意識全体をVR空間内にダイブさせる技術です。
現在はアバターを動かすためにコントローラーが必須ですが、フルダイブが実現すれば脳内の活動がVRに反映されるので、現実で体を動かすようにVR空間内で活動できます。
フルダイブは民間企業だけでなく、大学やアメリカの研究機関も参入して様々な研究がなされています。
まだまだ課題が多い夢のような技術ですが、いつか実現する未来が来るかもしれません。
|まとめ:VRの歴史
この記事では、これまでのVRの歴史で起きた主要な出来事をお伝えしてきました。
一般にVRデバイスが広まったのはここ最近ですが、実はVRには半世紀以上の歴史があり、多くの試行錯誤の末、現在に至っています。
そしてVRの歴史全体を眺めたとき、近年、明らかに技術の進歩が加速していることがわかります。
VRの進化は今後もとどまることなく進んでいくと予想されますので、今後さらに便利で驚くような体験ができるようになるでしょう。