「VRをプレイすることで視力が回復する」と聞いて、どう思われるでしょうか。
「回復するのではなく悪くなりそう」
「画面を見ているのだから回復する訳がない」
上記のように考えられた方は少なくないかもしれません。
しかし、実際にはVRを日々プレイすることによって、視力が回復したという事例は世界中に存在しているのです。
本記事ではVRを活用した視力回復について、その基本的な内容から現在利用できるアプリ、さらには注意点から将来性について一挙に解説していきます。
ぜひ最後までご覧ください。
目次
|VRゴーグルの基本について
そもそもVRとは、「Virtual Reality」の略称であり、日本語では「仮想現実」と称されます。
専用ゴーグル等の機器を着用することで、目の前にまるで現実世界とは異なる「仮想空間」が広がり、通常では感じられない体験が得られます。
その没入感から、主にゲームやエンタメといった分野で利用されることが多くなっています。
テレビなどのモニターに投影する映像とは異なり、視界の全て360度が映像に囲まれるため、目や頭の方向に合わせて映像も動きます。
現在ではゲームなどにとどまらず、実際の会議室を再現した仮想空間において行う会議や、友人との交流といった会話などのツールにも利用されています。
|VRで視力が回復する!?
目を覆うようにモニターをセットするVRですが、どうして視力が回復するのでしょうか。
以降で、実際に視力が回復した事例に加えて、考えられる理由について解説していきます。
Twitter上での報告が多い
2022年7月、人気SNSアプリであるTwitterにおいて、以下のツイートが投稿されました。
上記の投稿によれば、VR機器を利用してプレイを楽しんでいるだけで、両目の視力がそれぞれ「0.5」程度改善したとのこと。
一般的に、視力の自然回復は稀であると考えられています。
実際、ツイート内容にもあるように看護師の方も驚いていたそう。
megohimeさんの詳しい利用環境については約2年間、毎日4〜6時間程度VRをプレイしていたといいます。
コンタクトを着用せず、裸眼のみでプレイし、基本的にゲームなどの激しい動きではなくVRChatというサービスのみを活用していました。
自然の中を散策するモードを中心にしながら、7ヶ月程度楽しんでいたタイミングで初めて、視力の回復を実感したといいます。
さらに、megohimeさんの体感として遠視だけではなく乱視も改善したそうです。
同様の事例は他にも存在しており、2018年には約5ヶ月間の間で1日5時間VRを利用したユーザーも視力回復を報告しています。
このように、VRを利用した視力回復はありえない話ではないといえるのです。
VRで視力が回復する理由
「VRといっても画面を見ているのに、どうして視力が回復するの?」
上記のような疑問を抱かれても仕方ありません。
実は、VRで視力回復する理由については、目の焦点距離が長いということがポイントになると考えられています。
VRを装着している時は、1つの画面を見ているような感覚に陥ります。
しかし実際は、左右別々の画面を視差映像で映すことによって「立体的な仮想空間上の点」に目の焦点が合っている状態になります。
この焦点距離は約1.7メートル程度といわれています。
対して、スマホやPCモニターとの目の距離は、大体50センチ前後という距離となるでしょう。
つまり、日頃見ているモニターと比較して、VRプレイ中は遠くを見ている状態ということになります。
現代社会において、遠くを見つめ続けるという習慣を持つ人はそう多くありません。
そういった人がVRを利用することで、普段使わない目の周りの筋肉が刺激されます。
その結果、VR以外の日常生活において視力が回復すると考えられるのです。
|視力回復を目的としたVRアプリ
すでに視力回復を目的に開発されたVRアプリが存在しています。
こちらでは、以下の2つについてそれぞれ解説していきます。
- Vivid Vision
- ウィンキングダンス
Vivid Vision
Vivid Visionはジェームズ・ブラハ氏によって2015年に開発されました。
ブラハ氏は幼い頃から斜視に悩んでおり、毎日治療やリハビリに励んでいましたが、一向に改善することはなかったそうです。
しかし、自らが開発したVivid Visionを利用することで、斜視を改善することに成功しました。
本アプリは主に両目で視た映像を上手く立体化できない斜視や弱視患者に対し、左右別々の映像を移すことで視線のズレを矯正することを目的にしています。
眼科学系のWeb雑誌にも掲載されたこともあり、その中でVivid Visionは「成人の弱視を回復するための新たな治療法になるかもしれない」と紹介されました。
ウィンキングダンス
ウィンキングダンスはAppStoreで無料公開されている、VRを利用した視力回復トレーニングアプリです。
開発したドリームチームという企業のグループ会社、眼育創研は視力のお悩み相談サイトである「視力ランド」を運営しています。
そのため早い段階でVRによる視力回復の研究を重ね、スマホアプリとしては世界に先駆けて2017年にリリースしました。
視力回復トレーニングの第一弾として発表された本アプリは、スマホ装着型のVRゴーグルに対応していますので、比較的安価に試すことが可能です。
プレイヤーの視力に応じた設定が用意されていますので、誰でも効果的なトレーニングが行えます。
スマホのブルーライトカットも考慮されていますので、安心して毎日利用できるはずです。
|視力回復を目的としたVR利用の注意点
VRで視力が回復することは、日々メガネやコンタクトが手放せない人達にとって魅力的な話です。
しかし、利用には注意点も存在していますので事前に把握しておきましょう。
全員に効果があるとは限らない
まず、VRを利用した視力矯正が、全員に効果があるとは限らないことは覚えておきましょう。
日常生活で視力リスクが高い生活を送っている場合、VRによる効果は非常に遅い、もしくは微々たるものになるかもしれません。
また、VRの利用に慣れていない時は独特の画面変化による「VR酔い」や「眼精疲労」に繋がる可能性もあります。
効果を過信すること無く、視力回復を目的とした利用を検討する場合は、まず眼科医へ相談されることをおすすめします。
小さい子供にはおすすめできない
現在、小さなお子様でも視力の低下に悩んでいるケースは少なくありません。
親心としては回復させてあげたいと考えるかもしれませんが、基本的には13歳以下でのVR利用はおすすめできません。
眼の成長途中にVRのような画面変化を見続けることは大きな負担になります。
結果的に斜視になるリスクも指摘されているのです。
そのため、VRの利用は最低でも13歳以上になってからをおすすめします。
|VR×視力治療の市場規模は拡大する予想
まだ一般的ではないVRを利用した視力回復ですが、今後はますますその市場を拡大することが考えられています。
2022年には、住友商事とVRベンチャーのイマクリエイト、順天堂大学発ベンチャーのInnoJinが子供向けアプリの開発を発表しました。
VRを活用した子供向けの弱視治療アプリであり、2025年の薬事承認を目指しているといいます。
基本的に弱視は大人になってからでは治療できません。
しかし、10歳未満であればまだ本来の視力に矯正することは十分に可能なのです。
そのため、子どもの時点で早く弱視であることを判断し、適切な治療にアクセスする必要があります。
本アプリでは「VRけん玉」を活用した視力治療が採用されています。
VRけん玉の映像を左右別々に映し出すことで、両目の視力が異なる場合でも適切な治療効果が可能となります。
視力を含めた治療用アプリ市場は2022年では2億円でしたが、2023年には2,850億円に拡大すると予想されています。
すでにニコチン依存症、高血圧の治療アプリが販売され、薬事承認も取得済みという状況です。
これらの背景からも、今後VRを活用した視力治療市場は拡大することが考えられるでしょう。
|まとめ
VRを活用した視力治療について、その基本的な内容から実際のアプリ、更にはその可能性までを解説してきました。
一昔前まではゲームやPC、スマホは視力を低下させる端末であることから、その使用時間に注意を払う必要がありました。
同様の感覚でVRを考えている人は多いかもしれませんが、実は本記事で解説してきたように、目の焦点距離の関係から視力回復に繋がる可能性が十分にあるのです。
まだまだ発展途上の分野ではありますが、近くのモニターなどを見つめる時間が多い現代人にとって、VRを利用した視力治療は可能性に満ちているといえるでしょう。
今後も市場規模を拡大することが予想されている分野だけに、大きな注目を集め続けるはずです。