「最新のAIセキュリティ対策の企業事例ってどんなものがあるの?」
「今話題のAIセキュリティの活用方法が知りたい!」
こんな疑問や要望をお持ちではないでしょうか。
AIの進化が止まることを知らない現在、それと同時にAIを活用したセキュリティシステムの構築も急務とされています。
そこでこの記事では、加速するサイバー攻撃に対し、企業がどのような施策を講じているかについて、具体的な企業事例を踏まえてわかりやすく解説します。
記事を読むことで、最新のAIセキュリティに関する知識を蓄え、今後どのようなAIセキュリティが求められているのかを直感的に理解できるようになります。
目次
|AIの進化と共に増えるサイバーセキュリティ問題
近年、急速なテクノロジーの進化、特に人工知能(AI)の発展とともに、新たなサイバーセキュリティ問題が増え続けています。
これらの問題は、企業だけでなく、政府や個人をも脅かすもので、その対策は急務となっています。
このセクションでは、このような現状下で、なぜAIセキュリティに期待が寄せられているかを深く掘り下げていきます。
IoTの普及に伴いサイバーセキュリティの需要は増え続けている
現代社会は、急速なデジタル変革により、毎日の生活からビジネスまで、IoT(Internet of Things)デバイスの利用が増加しています。
スマートホーム、ウェアラブルデバイス、産業用IoTなど、何百億ものIoTデバイスが既に世界中で使用されており、これら全てがインターネットに接続されています。
しかし、このIoTデバイスの普及は新たな課題をもたらしています。
それぞれのデバイスがネットワークに接続されることで、ハッキングの標的になる可能性が増えているのです。
さらに、それぞれのデバイスから集められる膨大なデータは、適切に保護されていなければ個人情報の漏洩やビジネスの機密情報が外部に漏れる可能性があります。
そのため、AI(Artificial Intelligence)を利用したサイバーセキュリティの需要が高まっています。
AIは大量のデータを処理し、異常なパターンや脅威を自動的に検出する能力を持っています。
これにより、人間が追いつかないほどの速度で増え続けるIoTデバイスに対するセキュリティリスクを、効率的に管理し、対策することが可能となります。
結果として、IoTの普及とともにAIを利用したサイバーセキュリティの需要は増え続けているのです。
セキュリティリスクに対応するためにAI活用が期待されている
情報セキュリティは、一定のルールやパターンを元に脅威を検出し対策を行う従来のアプローチから、大量のデータから脅威を見つけ出し対処するAIに基づいたアプローチへと大きくシフトしています。
この変化は、サイバー攻撃がますます洗練され、複雑化している現代の環境において、企業が自身のデジタル資産を保護するために不可欠です。
AIを活用したサイバーセキュリティのメリットは、人間が手動で行うには困難なほど大量のデータを分析し、異常やサイバー攻撃の兆候をリアルタイムで検出する能力がAIの大きな特長です。
また、AIは、一度検出した攻撃のパターンを学習し、同様の攻撃を未然に防ぐことも可能です。
これは、既知の脅威だけでなく未知の脅威にも対応する力をAIセキュリティに与え、その対応力を格段に向上させます。
以上のような理由から、セキュリティリスクに対応するために、AIの活用が期待されているのです。
しかし、その有効性を最大限に引き出すためには、AI技術の適切な理解と導入、継続的な運用が必要であり、これからがAIセキュリティの真価が問われる時期と言えるでしょう。
|AIを利用したセキュリティ対策の企業事例5選
では、実際に企業はどのようなセキュリティ分野でAIを活用しているのでしょうか?
ここでは、日本と世界のリーディングカンパニーにおけるAIセキュリティの活用事例を紹介し、深く掘り下げていきます。
1.NEC:AIを活用した脅威分析サーバの開発
NECは、AIとセキュリティを組み合わせることで、独自の脅威分析サーバーを開発しました。
これは、様々なネットワークから流れる大量のデータを迅速に解析し、異常な挙動や未知の脅威を自動的に検知する役割を果たし、検出された脅威のパターンを学習し、同様の攻撃を防ぐための対策を提案することも可能とのことです。
AIが組み込まれていることで、人間が手がける以上に高速かつ正確にセキュリティ上のリスクを見つけ出すことが可能となり、結果的に企業のセキュリティレベルの向上に寄与することが可能です。
また、NECのシステムは既存のネットワークに容易に統合可能な設計となっており、既存のセキュリティシステムを大幅に変更することなく導入できる利点もあります。
<NECのAIセキュリティのポイント>
・大量のデータを迅速に解析し、異常な挙動や未知の脅威を検知
・AIの学習機能により、検出された脅威のパターンを学習し、同様の攻撃への対策を提案
・既存のネットワークに容易に統合可能な設計で、既存システムを変更せずに導入可能
2.日立製作所:Hitachi AI Technology/H
日立製作所は、人工知能技術「Hitachi AI Technology/H」を核に、サイバー攻撃検出時のアラート評価を自動判定する「セキュリティ監視業務効率化AIソリューション SaaS版」を開発しました。
このソリューションは、各機器のログやログ分析システム(SIEM)が発するアラートに対するセキュリティ技術者の判定結果をAIで学習し、その結果をもとに大量の誤検知を識別。
さらに分析や調査が必要なアラートをAIが判定することで、一次分析業務の工数を最大9割削減することが期待できます。
このソリューションはSaaS版として提供され、顧客の環境にあるSIEMサーバーに蓄積されたログやアラートの連携データを日立のクラウド環境にアップロード。HTTPSによるセキュアなデータ連携も可能となっています。
また、システムの初期設定や検証作業を行う「SaaS導入支援サービス」や、AI分析サービスの提供なども行っています。
<日立製作所のAIセキュリティのポイント>
・AIでセキュリティ技術者の判定結果を学習し、大量の誤検知を識別
・AIが分析・調査が必要なアラートを判定し、一次分析業務の工数を大幅に削減
・HTTPSによるセキュアなデータ連携と日立のクラウド環境を活用し、低コストでの導入を可能に
3.ヤマダホールディングス:Deep Instinct
ヤマダホールディングスは、セキュリティ対策の一環として、AIを活用した「Deep Instinct」を導入しました。
ヤマダホールディングスは業務スピードを追求し、多くの業務アプリを内製化しており、それに伴い多数のEXEファイルやDLLファイルが存在する特有の環境があります。
これらの環境に適合する、そして過検知が少ない製品として選ばれたのがDeep Instinctでした。
Deep Instinctは、従来のウイルス対策ソフトのような定期的な定義ファイルの更新が不要で、AIモデルを用いて高度なセキュリティを維持します。
これにより、業務の運用負荷を以前の半分以下に抑えつつ、セキュリティレベルを高めることに成功しています。
また、セキュリティ対策としてメールシステムもMicrosoft 365に切り替え、エンドポイントセキュリティ製品と併用してきたメールセキュリティ製品もMicrosoft ATPに切り替えることで、セキュリティレベルを一層強化しました
結果的に、これら一連の変更はデジタルトランスフォーメーション(DX)への一歩となり、ヤマダホールディングスのDX推進は評価を得ています。
<ヤマダホールディングスのAIセキュリティのポイント>
・自社の特有の環境に適合し、過検知が少ない「Deep Instinct」の導入
・定期的な定義ファイルの更新が不要なセキュリティ対策の採用により運用負荷を大幅に軽減
・メールシステムの更新と併せて、セキュリティレベル全体を高める戦略を展開
4.Darktrace(英):Darktrace PREVENT
英国のダークトレースはAIを活用したセキュリティ対策で知られ、2022年7月に、新製品「Darktrace PREVENT」をリリースしました。
これはAIを駆使して「攻撃者の目線で考える」ことで、組織の最も重要な資産への経路をシステムの内外から見つけ出すことができる画期的なシステムとして注目を集めています。
Darktrace PREVENTは、組織にとって最も破壊的な攻撃を継続的に分析し、その情報を「Darktrace DETECT」と「Darktrace RESPOND」にフィードバックし、システムを自律強化するための継続学習と自動化を支援します。
これらのAI製品は、脅威に対する自律対処の精度と速度を向上させ、予防、検知、遮断の各機能が相互に補完し合って自律的な防御態勢を構築することに成功しています。
<DarktraceのAIセキュリティのポイント>
・攻撃者の目線で考えるAIセキュリティ
・AIを用いた継続的な脅威分析と自動化
・自律対処の精度と速度の向上
5.IBM:IBM Watson for Cyber Security
IBMは、AIの力を活用してサイバーセキュリティの防衛力を強化するために、「IBM Watson for Cyber Security」を展開しています。
Watsonの特徴は、膨大な量のデータを構造化の有無にかかわらず分析し、脅威の特定をサイバーセキュリティ専門家に支援することにあります。
Watsonの活用例としては、特定のマルウェアによる攻撃やサイバー犯罪キャンペーンに関連する攻撃を特定することが挙げられます。
さらに、振る舞い認証やコンテキストを使用して、ユーザーの行動が悪意を持ったものか、単に通常とは違った行動なのかを見分ける能力も有しています。
既に一部の企業がこの技術を利用しており、その数は今後さらに増えると予測されています。
<IBMのAIセキュリティのポイント>
・膨大なデータを構造化の有無にかかわらず分析し、脅威の特定をサポートする
・特定のマルウェアによる攻撃やサイバー犯罪キャンペーンに関連する攻撃を特定する
・ユーザーの行動が悪意を持ったものか、通常とは違った行動なのかを見分ける能力
|AIセキュリティの要注目スタートアップ企業
前項では、世界を牽引するリーディングカンパニーのAIセキュリティ事例を紹介しましたが、スタートアップ企業ではどのような取組みがなされているのでしょうか。
スタートアップ企業の活用事例を確認することで、AIセキュリティの「今」が見えてきます。
その中でも、近年話題に上がっている3社を厳選してご紹介します。
1.アジラ:AI警備システムによる行動認識と違和感行動の検知
スタートアップ企業の中でも特に注目を浴びている株式会社アジラは、AI警備システム『アジラ』を提供し、セキュリティ分野に新たな風を吹き込んでいます。
アジラAIセキュリティの特筆すべき特徴の一つは、「違和感検知」という特許取得の技術です。
AIは各カメラからの行動を自律学習し、通常から逸脱した動きを「違和感」として捉えることができます。これにより、予期しない危険行動を即時に通知することが可能になり、事件や事故の未然防止につながります。
加えて、アジラのシステムは、24時間365日にわたりAIが監視カメラの映像をモニタリングし、人間の目では捉えきれない些細な動きも見逃すことがありません。
また、既存のカメラをそのまま利用でき、サーバー1台で最大50台分のカメラ映像を処理できるため、初期コストや運用コストも抑えることができます。
ネットワーク構成はローカルで完結するため、映像が外部に流出するリスクもありません。
<アジラのAIセキュリティのポイント>
・「違和感検知」による異常行動の即時検知
・24時間365日のAIによる監視で、人間の目では見逃してしまう動きも検知
・既存のカメラの利用とサーバー1台での大量映像処理によるコスト削減
2.Sentry:eSportsの不正行為防止に特化したアンチチート事業
eSportsは技術的進歩とともに、不正行為も技術的に高度化しており、その対策が急務となっています。
その中で注目されるのが、株式会社Sentry(本社:東京都港区、代表取締役:沖絢斗)が提供するアンチチートソリューション「Sentry Anti-Cheat」です。
このAIセキュリティは、既存のセキュリティアプローチが「プロセスメモリが攻撃されていることを前提としている」のに対し、Windowsのカーネルモードドライバー技術を駆使し、OSレベルでメモリを含む様々なアクセスを遮断。
これにより、不正ソフトウェアや改ざん行為を即時に検出することで、eSportsの不正行為防止を可能にしています。
また、Sentryはただ技術的な対策だけでなく、ブラックマーケットの理解やエコシステムの分析といった総合的なアプローチにも力を入れています。
このようなマルチファセットのアプローチにより、ゲームプレイの公平性を保つべく取り組み、eSports業界における大きな問題解決を目指しています。
<SentryのAIセキュリティのポイント>
・OSレベルでのメモリ遮断による不正行為の即時検出
・ブラックマーケットの理解やエコシステム分析による総合的対策
・公平性の確保を目指したeSportsの不正行為対策
3.エーアイセキュリティラボ:セキュリティ自動化と脆弱性診断の内製化
東京に本社を構える株式会社エーアイセキュリティラボは、最新の生成AI技術を活用してサイバーセキュリティの新たな可能性を追求しています。
同社は主に、脆弱性診断とセキュリティ自動化の分野で、生成AI(Generative AI)の利用を中心に研究開発を進行中です。
代表的な製品である「AeyeScan」は、フォーム自動認識や類似画面識別などの認識AIを駆使した、簡便且つ高精度なWebアプリケーション脆弱性診断ツールです。
AeyeScanは、人手による脆弱性診断作業を生成AIによって自動化し、その効率と精度を大幅に向上させることを目指しています。
このAIセキュリティの画期的な部分は、大規模言語モデル(LLM)を活用し、日常的な言語での指示を可能にしたことです。
これにより、「商品Aの購入フローのみを巡回して」というような直感的な指示だけで、高度な診断を簡単に行えるようになります。
<エーアイセキュリティラボのAIセキュリティのポイント>
・生成AIを駆使したセキュリティ自動化の取り組み
・日常言語による脆弱性診断の簡易化
・テクノロジーによるセキュリティ人材不足の克服
|AIセキュリティに今後求められることとは?
AIを活用したセキュリティ対策は、日進月歩で進化し続けていますが、同時にAIに求められる水準も日々上がり続けています。
ここでは、今後のAIセキュリティに求められることは何なのかについて、詳しく解説します。
自動化と効率性の向上
現代社会において、AIセキュリティはますます重要性を増しています。
攻撃者は日々、新たな手法を生み出しており、従来のセキュリティ対策だけでは防ぎきれないリスクが増大しています。
こうした背景から、AIセキュリティが注目され、その技術的進歩は益々求められるようになりました。
特に、セキュリティの自動化と効率性の向上は、その主要なトレンドとなりつつあります。
従来型の手動での脆弱性診断やセキュリティ対策の立案は、大量の時間と人材を必要とします。
そのため、膨大な数の脅威を監視し、適切に対処するには限界があります。
しかし、AIを活用すれば、脆弱性診断や攻撃の検知、対策の選定までを自動化することが可能になり、セキュリティ対策の効率性と精度を大幅に向上させることが期待できます。
さらに、AIは連続的な学習能力を持ち、新たな攻撃パターンや未知の脅威にも素早く対応できるというメリットを有しています。
これからのAIセキュリティは、人間の能力を超え、脅威に対する反応速度と正確性を格段に進化させる必要があります。
そのため、AIセキュリティの自動化と効率性の向上は、今後もますます求められることでしょう。
複雑化する脅威に対する対応力強化
AIセキュリティの最大の利点は、大量のデータを迅速に分析し、パターンを抽出する能力にあります。
これにより、未知の脅威を検出し、その対策を迅速に立案することが可能となります。
もはや、このAIの能力は複雑化し続けるサイバー攻撃に対抗する上で不可欠といえるかもしれません。
しかしながら、その一方で、攻撃者もまたAIを用いたより高度で複雑な攻撃手法を開発しており、これに対する対策もまた必要となっています。
さらに、悪意のあるAI(マリウェア)による攻撃が増えてきている現状を考慮すると、AIセキュリティの対応力強化が急務となります。
そのため、今後のAIセキュリティには、複雑化する脅威に対する対応力強化が求められます。
これには、より高度なAI技術の研究開発、継続的なトレーニングデータの更新と学習、そして人間の専門家による監視とフィードバックを進めて行く必要があります。
つまり、人間とAIが共同して、より優れた防御策を打ち出すことが今後強く求められていくことになるでしょう。
AIセキュリティ人材の育成
今後、サイバーセキュリティの脅威が増加し、その多様性と複雑性が増す中で、AIセキュリティはますます重要な役割を果たすようになるでしょう。
その一方で、技術の進歩に伴って、AIセキュリティ人材の育成が急務となっています。
AI技術を活用したセキュリティソリューションは、攻撃パターンの発見や予測、対策の立案において非常に有用ですが、それはAIのパワーを理解し、適切に適用できる人材がいるからこそです。
また、AIセキュリティに詳しい人材は、テクノロジーの進歩とともにその知識を更新し続ける必要があります。
新しい脅威や攻撃手法、そしてAI技術の進化に対応するためには、継続的な学習と経験が不可欠です。
このような観点から、AIセキュリティの専門家の育成とそのスキルの維持・向上は、我々が安全なデジタル空間を維持する上で欠かすことのできない要素となるでしょう。
|まとめ:増加するサイバー攻撃リスクにはAIセキュリティが必須!!
この記事では、AIセキュリティがどのようにサイバーセキュリティ問題に対応し、その発展を支えてきたかを説明しました。
それに伴い、注目の企業事例やスタートアップのイノベーションを紹介しました。
AIセキュリティは非常に急速な進歩を遂げており、その可能性は無限ともいえます。
今後は、より高度な自動化と効率化、より複雑化する脅威への対応力強化、そしてAIセキュリティ専門の人材育成が急務となります。
これらが適切に行われれば、日本のデジタル世界はより安全になるでしょう。
この記事が、読者の皆様のAIセキュリティに対する理解を深め、その重要性を認識するきっかけになれば幸いです。