近年ではディスプレイの小型化が進み、それに伴いHMD(ヘッドマウントディスプレイ)のサイズもより小さく・軽くなりつつあります。
現在ではこれらの技術を活かしたスマートグラスが数多く発売されており、その新たな一例が先日発売されたXRグラスの「VITURE One」です。
没入感の高いゲームプレイや映像視聴をどこでも可能にするデバイスとして日本でも注目されています。
その携帯性の高さとは裏腹に、リモートプレイや大画面での映像視聴に対応しているなど、多くの場面で活躍しそうなVITURE Oneについて今回は解説します。
目次
|XRとは
最近のVR技術の普及とともに「XR」という言葉をよく聞くようになりました。
XRとはCross RealityもしくはExtended Realityの略で、VR(仮想現実)とAR(拡張現実)、MR(複合現実)といった3次元ディスプレイ技術をまとめた呼び方です。
VRとは視界すべてを映像で覆う技術のことで、ARとはポケモンGOのように現実世界に3Dオブジェクトを重ね合わせて現実世界を「拡張」する技術です。
MRの定義は様々ですが、一般的にはVRとARを融合した技術と捉えられています。
MRはXRと似ていて混同しがちですが、厳密には異なるので簡単に解説します。
XRとはVR、AR、MRといったバーチャル技術全般をまとめて呼ぶ際の名前です。
一方のMRとは、VRとARが技術的に融合されたものが現実世界と重ね合わさることで、バーチャルとリアルの区別がつかなくなる世界観を指します。
|VITURE Oneとは
VITURE Oneは、先日クラウドファンディングサイトのMakuakeで購入プロジェクトが始まった「高画質x高音質プライベートシアター」がコンセプトのグラス型モバイルディスプレイです。
開発企業のVITUREは2021年に米国で設立されたスタートアップ企業ですが、開発・製造は中国で行っているグローバルベンチャー企業です。
下記で説明しますが、VITURE Oneの大きな特徴としてユーザビリティの高さが挙げられます。
スタンドアロン型のデバイスなので、ベッドに寝そべりながら大画面でYouTubeを見たり、リビングのTVを家族が見ているので自分の部屋でNetflixを見る、などの様々な利用シーンが挙げられます。
また、VITURE Oneは専用の付属アクセサリーを用いてGalaxyやXperiaなどのAndroidスマートフォン、またPlayStationやNintendo Switchの映像を投影することもできます。
|VITURE Oneの特徴
VITURE Oneはデザインや重量だけでなく、ディスプレイの大きさや解像度などの実用面にも注力しています。
スマートグラスの場合、デザインや重量を優先する余り機能性が損なわれるケースがありますが、その点VITURE Oneは機能性と実用面を重視しています。
以下では、VITURE Oneの主な特徴についてまとめます。
楽しみ方によってオプションを分けられる
Makuakeの公式サイトでは基本的に4種類のセットが発売されており、セットによって含まれる内容が異なります。
デバイス本体のみの「XRグラス」プランであれば価格は5万4,880円〜、HDMI接続ツールの「モバイルドック」を含めた「Dockセット」は7万2,880円〜。
そこに独自のAndroid接続ツールの「ネックバンド」も含めた「Cloudセット」が7万8,880円〜、そして全ツールを同梱した「Ultimateセット」が96,880円です。
モバイルドックとはVITURE One専用のHDMI入力アダプターですが、同時にモバイルバッテリーとしても機能します。
もう一つのネックバンドは首にかけて使うもので、内部にAndroid対応のシステムが組み込まれています。これをVITURE Oneに直接繋げるだけでAndroidとのシンクが可能です。
120インチ相当の大画面
映像視聴の際、デバイスのディスプレイはフルHD x 120インチ相当の大画面での映像視聴が可能です。
映画館の小さいスクリーンのサイズが150インチなので、120インチの大きさが分かると思います。VITURe Oneのスクリーンの解像度は3,840 x 1,080のHD画質なので、高画質・大画面の映像をどこでも楽しめます。
ちなみに、120インチはユーザーの視点から見える大体の大きさですが、実際に見えるスクリーンの大きさは、下記で説明する画面調節機能によって多少変わります。
ですが、いずれにせよ大画面サイズのスクリーンを実質的にどこでも使えるというメリットは同じです。
世界最軽量級
VITURE Oneの特徴の一つが、デバイスが徹底して軽量化されていることです。
重量は78グラム、ちょうど卵一個分程度の重さとのことで、普通のメガネより少し重いぐらいの感じでしょうか。
スマートグラスは重さが大事です。グラス型なので重いと感じるとユーザビリティが損なわれます。
その点、VITURE Oneでは従来デバイスに内蔵すべきバッテリーや処理プロセッサを付属ツールに外部化したことで軽量化を実現しています。
反面、モバイルドックやネックバンドなどの外部接続が必要になりますが、邪魔に感じないように首掛けなどの装着感を感じさせない設計がされています。
また、デバイスのデザインはGoogleやNikeなどのデザインを手がけるデザインスタジオLAYERとのコラボなので、ファション性が高いのも特徴です。
フルHD/60FPS対応
ディスプレイの映像再生はフルHD画質での60fpsでの視聴が可能です。
シネマ級の大迫力でお気に入りの映画やドラマを楽しめるとのことです。
デバイスの映像解像度はPPD値で55を記録したとのこと。
PPDとはスクリーンの角度1つあたりの画素密度のことですが、55は人間の目の解像度とほぼ同じです。
つまり、人間が目で見ているのと変わらないレベルの精細さの映像を表示できるということです。
また、表示できる映像の明るさは最大1,800nitsとのこと。なので夏場の日光が強い場所でも環境に最適化した明るさに調節できるので、映像のぼやけ等が起きにくく快適に使うことができます。
空間オーディオ搭載
ハイレベルな映像体験には空間オーディオが欠かせません。
VITURE Oneは空間オーディオシステムを搭載しているので、没入感の高い立体的な音場の再現に特化しています。
空間オーディオを体験すると、もう従来のステレオ音声には戻れないかもしれません。
人の声やエンジン音や爆発音などが、それが起きている場所から方向性をもって聞こえてくるのでリアリティが爆上がりします。
映画やゲームの場合は空間オーディオは非常に大事です。
VITURE Oneのオーディオは世界的オーディオブランドのHARMANと共同開発したものなので、ハイクオリティなサウンド環境が期待できます。
アンビエントモード
また、デバイスの使用体験をより個人に最適化するための「アンビエントモード」が搭載されています。
これは画面サイズとディスプレイの透明度を変更できるもので、例えば映像視聴の時は「イマーシブ」にすると大画面表示になり、それ以外の時は「アンビエント」にすると映像を端っこに表示して視界をクリアにします。
デバイス左側のボタンを操作するとディスプレイから外界が透けて見える程度が調節可能で、5%〜40%まで変えられます。
なので、視聴中は外界の光をシャットダウンして、移動する時などは外界を明るくできますが、視界のクリアさは限られるためデバイスを着けたままPCで作業する等には不向きのようです。
複数端末対応
付属アクセサリーのモバイルドックを使うと、PlayStation 5やNintendo Switchなどの外部コンソールの映像をVITURE Oneのディスプレイに伝送できます。
基本的に、DisplayPort Alt Mode方式の映像データ伝送に対応している機器であればVITURE Oneとの接続が可能です。
この機能によってゲームのリモートプレイが可能になり、例えば自宅にあるPlayStation 5を出張先からネット経由で起動して、映像と音声を手元のVITURE Oneに伝送することができます。
リモートプレイの際、手元にPlayStation 5のコントローラーがあればそれを使ってゲームで遊べます。
また、ネックバンドはAndroidスマートフォンとのワイヤレス接続が可能なので、Androidアプリを通してNetflixやYouTubeを見たりすることが可能です。
大容量バッテリー&ストレージ
モバイルドックは接続端末として以外に、大容量のバッテリーとしても機能します。
13,000mAhのバッテリーを内蔵しているので、Nintendo Switchの起動時間を最大で約6時間延長、Steam Deckであれば最大3時間まで延ばすとのこと。
また、モバイルドックはノートPCやスマートフォンの充電にも使えるので、外出時の携帯用バッテリーとしても活躍します。
また、ネックバンドは128GBのストレージを内蔵しているので、大容量の動画データを保存する時などに使えます。
外出先でネットが使えない場合や、モバイルWi-Fiの通信制限などを気にせずに済みます。
低遅延
HMDを着けると視界全てがディスプレイで覆われるので、映像のカクつきや遅延は大きなストレスの原因になり、場合によっては気分が悪くなることもあります。
VITURE Oneはディスプレイの遅延対策にも注力しており、遅延が発生しても10ms(0.01秒)以内とのこと。ゲームをリモートプレイで遊ぶ時などに厄介な映像の遅延を防ぐことができます。
また、ネックバンド経由でディスプレイに映像表示する際も、高画質・高音質を保ったまま映像に没入できるとのことです。
ちなみに、HMDをずっと着けたままでいると、デバイスに問題がなくても気分が悪くなったりすることがあるので、1時間に一度はデバイスを外して休憩を入れるようにしましょう。
度数調整ダイアル
HMDは顔に直接フィットする形で着けるので、目との距離が近すぎたり遠すぎたりすると映像がぼやけたり、デバイスの装着感に影響します。
VITURE Oneのグラス部分には度数調節ダイヤルがあるので、これを回すことでディスプレイを自分にとって最適の位置に調整できます。
また、スマートグラスは眼鏡をかけている人は着けられないという問題がありますが、VITURE Oneでは軽度の近視であればメガネ無しでも度数調節ダイヤルのみでクリアな視界を確保できるとのこと。
また、視度調節用のレンズを入れることも可能なようです。
|まとめ
スマートグラスは多くの製品が発売されていますが、形状ゆえに制約が多く実用的と言えるデバイスが少ないのが現状です。
その点、VITURE Oneはデバイスの軽さだけでなく、バッテリー容量や空間オーディオ、解像度などの実用性にもフォーカスしているのが特徴的です。
また、デザインにも気を配るなどスマートグラスに必要な要素を細部までカバーしており、外見・機能性ともに現時点でのスマートグラスの一つの完成形を示しているとも言えます。