ヘッドセット技術は常に進化を続けており、次々と新技術やデバイスが現れます。
基本的に、ヘッドセットはVRやARなどの単一の技術に特化したものが大半ですが、最近はこれらの技術を単体でカバーするデバイスが登場しています。
そのうちの一つが先日HTCが発売したオールインワン型XRヘッドセットの「VIVE XR Elite」です。
デバイスが変形することやVR〜MRにまで対応していること、また機能性の高さや軽さなど話題の要素が多く、発表以来大きな注目を集めています。
そんなVIVE XR Eliteとは一体どんなデバイスなのか?当記事で解説します。
目次
|XRとは
XR(クロスリアリティ)という言葉を見かけたことがあるかもしれません。
VRやARであれば分かるけど、XRの意味はよく分からない、という方が大半だと思います。
XRとは端的に言うと、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)、SR(代替現実)といった3次元映像を表示するディスプレイ技術を総称した言い方です。
これらの技術は基本的に仮想世界をさも現実のようにユーザーに体験させるもので、ヘッドセットを用いるものからスマートフォンで体験できる簡易なものまで様々です。
XRはそれぞれの具体的な技術として世間の様々な部分に浸透しており、ARゲームの「ポケモンGO」などはその代表です。
また、最近はMeta Questなどの安価なVRデバイスや、当記事で扱うVIVE XR EliteのようなXR技術を包括するようなハイエンド機種も登場しており様々です。
|VIVE XR Eliteとは
VIVE XR Eliteは機動性とスペックを両立したXRデバイスで、小型・軽量でありながら高画質映像に対応しているオールインワン型のデバイスです。
大きな特徴としてデバイス自体が変形可能なことが挙げられ、用途に応じてメガネ型・ゴーグル型に変えることで環境に最適化した使い方ができます。
また、下記で説明しますがVIVE XR Eliteは4K画質の映像を表示可能で、デザインやスケッチなどの様々な創造的なタスクに役立ちます。
更に、VRディスプレイとしてPCに接続してSteamVRのアプリ等を起動したり、PlayStation VRなどの外部デバイスの映像を投影することも可能です。
非常に多機能なデバイスですが、Microsoft HoloLensのようなおもにクリエイターやエンジニア向けの機種です。
VIVE XR Eliteの価格は179,000円です。
|VIVE XR Eliteのスペック
以下では、VIVE XR Eliteの具体的なスペックについて解説していきます。
まずディスプレイ解像度は両目3,840 x 1,920で、これは4K画質(3,840 x 2,160)にほぼ匹敵します。
下記で解説するHTCのハイエンドVRデバイスのVive Pro 2の解像度が両目4,996 x 2,448なので、その性能が分かると思います。
リフレッシュレートは90Hz、視野角は110度、バッテリー持続時間は約2時間とこれらは他のVRデバイスと比べて平均的です。
トラッキングは本体に内蔵した4つのカメラを用いて周囲の環境を把握するインサイドアウト方式で、外部センサーを必要としません。
操作は基本的に付属のコントローラー2つで行いますが、下記で説明しますがハンドトラッキングが可能なため、ジェスチャー操作にも対応しています。
|VIVE XR Eliteの特徴
では、VIVE XR Eliteのどんな部分に注目が集まっているのでしょうか。
例えば、他のデバイスにはないユニークな機能や特性、またそれを使って出来そうな様々な可能性を垣間見せてくれることなど様々です。
以下では、VIVE XR Eliteの特筆すべき特徴について解説します。
パススルー機能
まず、デバイス外部の環境をディスプレイにフルカラー表示できるパススルー機能が挙げられます。
このカラーパススルーによって、デバイスを着けた状態でもまるで何も着けてないかのような感覚での視界認識が志向されます。
また、トラッキングセンサーで周囲の環境の特徴をリアルタイムで認識するので、そこに3Dオブジェクトを重ねて表示することでAR体験ができます。
そこからVRに移行して視界全てが3Dのバーチャル世界に移行していくと、VR・ARによって生み出されたデジタル環境と現実とがシームレスに融合したMR体験になります。
従来はデバイスが各技術に特化していたせいで不可能だったAR・VR・MR間の単一デバイス上での移行がVIVE XR Eliteでは可能です。
超軽量
この他、VIVE XR Eliteの特筆すべき点がその軽さです。
本体は付属のバッテリーを着けると625gで、これはMicrosoft HoloLensの重量が566gであることを考えると平均的です。
ですが、VIVE XR Eliteはバッテリーが取り外し可能で、加えてゴーグルのつるの部分(テンプルパッド)を変えるとメガネ型に変形します。
メガネ型になると一気に軽くなり、重量は270gと半分以下で、これはiPhone 14 Pro Max(240グラム)より少し重い程度です。
外で使う場合や人が多い環境でデバイスを使う時は、軽量で動きやすいほうが断然有利でしょう。
ハンドトラッキング
アプリの操作は基本的に付属のコントローラーで行いますが、VIVE XR Eliteはハンドトラッキング機能を備えているのも特徴です。
デバイス内部の4つのトラッキングカメラが各指・各関節の動きをトラッキングして、ハンドジェスチャーでデバイスを操作できます。
XRデバイスでのハンドジェスチャーは既にMicrosoft HoloLensなどが実現しており真新しいものではないですが、その可能性は様々です。
例えば、スクロールやクリック、ドラッグやドロップなどの既にマウスやタッチスクリーンで出来る操作の直感性が、ハンドジェスチャーで更に拡張されます。
操作にコントローラーが不要になることで両手がフリーになり操作性が大幅に伸び、ナビゲーションやデザイン、スケッチなど様々な利用シーンが考えられます。
一人ひとりに合わせた視聴環境
VIVE XR Eliteは用途に応じて、形状を変えたりVR・ARを使い分けたりなど多様な利用ケースに適しています。
デバイスをグラス型にして使う場合、バッテリーをケーブル接続してポケットに入れておく必要がありますが、頭部が軽くて動きやすいので外での利用に適しています。
また、デフォルトの状態である、バッテリーをデバイスに着けた状態のゴーグル型であれば、頭部は重くなりますが完全スタンドアロンで動けるので、スタジオなどの屋内では便利そうです。
また、デバイスをPCに接続するとSteamVRなどのVRアプリが起動できます。
用途と利用シーンに応じて形状を変えたり、VR・ARを使い分けたりできるなど、XR技術のすべての領域を1つのデバイスでカバーしているハイスペックな機種です。
|HTCから発売されたこれまでのデバイス
以下では、現在HTCが発売しているヘッドセットについて解説します。
HTCのデバイスはどの機種も高機能ですが、用途によって適切なデバイスが異なるので、それぞれの製品の特徴を掴んでおくことが大事です。
VIVE Flow
HTC VIVE Flowは、超小型軽量が特徴のグラス型VRヘッドセットです。
デザインはVIVE XR Eliteのようにメガネ型に折り畳める仕様で、スマートフォンを専用ケーブルで接続してコントローラーとして使用します。
取り回しの良さがウリのデバイスなので、おもに外での使用に向いており、動画視聴や瞑想、メタバース空間へのログインなどを手軽に行えます。
重量はデバイス本体で189グラムとスマートフォンよりも軽く、解像度は3.2Kの映像を表示します。
HTC VIVE Flowの価格は59,990円です。
VIVE Pro
VIVE ProはHTCのヘッドセットの中で最もハイエンドな機種です。
他のデバイスと比べても解像度やリフレッシュレートが圧倒的に高く、おもにヘビーゲーマーやエンジニア向けです。
最新機種のVIVE Pro 2はディスプレイ解像度が両目4,896 x 2,448で5K画質の映像表示が可能です。
また、リフレッシュレートも120Hzと高く、立体オーディオや、精度の高いアウトサイドイン方式のLight Houseトラッキング技術を採用しています。
ハイエンド機種なので価格も103,400円とやや高めですが、現行の最高クラスのハイエンド機種として位置付けられています。
VIVE Focus
VIVE Focusシリーズは、ケーブル接続を必要としないスタンドアロン型のVRヘッドセットです。
おもにエンタープライズ向けの機種としてハイエンド・ローエンド向けの2モデルが発売されており、既に教育や医療業界などで導入されています。
ハイエンドモデルのVIVE Focus 3のディスプレイ解像度は両目4,896 x 2,448とVIVE Pro 2の画質と同じで、視野角も120度と広めです。
また、ローエンドモデルのVIVE Focus Plysはややスペックが低めで、解像度は両目2,880 x 1,600、視野角は110度と他のVRデバイスと同等です。
VIVE Focus 3の価格は130,900円、VIVE Focus Plusの価格は98,725円です。
VIVE Cosmos
PC接続型のVRデバイスがVIVE Cosmosです。
コンセプトは従来のHTC VIVEと同じですが、違いはCosmosでは外部センサーのベースステーションが不要になった点です。
ヘッドセットには計6基のカメラが搭載されており、これで周囲の環境をトラッキングしてユーザーの位置や動きを把握します。
外部センサーが不要になったことでスペースが確保しやすくなり、VIVE CosmosではゲームやVRChatなどの従来のVRコンテンツをより快適にプレイしやすくなります。
ディスプレイ解像度も2,880 x 1,700とHTC VIVEのそれよりも高く、全体的にHTC VIVEの上位互換といった位置付けです。
価格は87,200円と初代HTC VIVEとほぼ同等ですがスペックはCosmosのほうが優れています。
|まとめ
VIVEシリーズは現状のXRにおけるニーズをあらかたカバーできるほどバリエーションが豊かになりました。
そこに新たに加わったVIVE XR Eliteは、エンタープライズ向けのデバイスとは言えど斬新なコンセプト等が話題を呼んでいます。
この他、HTCは商用からゲーム向けまで様々な利用シーンを想定しており、用途によって最適な製品が変わります。
なので、商用利用などでVRやMRを導入する場合、その目的を明確にすることで、よりこれらのデバイスから得られる便益が増えます。
皆さんもぜひVIVE XR Eliteを試してみてはいかがでしょうか。