近年、デジタル技術の革新に伴って、ビジネスモデルの変化や社会変容が進んでいます。

未来に企業活動を永続させていくため、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が求められています。

しかし自社をどう変革すれば良いのか?人材の確保や予算は?運用していくための教育は?などDXを推進するための課題に多くの企業が苦戦しています。

ここではDXを自社で実現するための方法を、順を追って解説していきます。

|DXとは

コンピューターやインターネット技術を利用して既存の業務プロセスをデジタルに置き換え、業務効率化と生産性の向上を図ることをIT化と言います。

IT化はDX推進の一手段です。

DXとはDigital(デジタル)とTransformation(変革)という2つの単語を合わせた言葉で、「デジタル技術を利用して社会や組織・ビジネスの仕組みそのものを変革し、従来とは異なる新しく便利なビジネスモデルを構築すること」を目指しています。

現状のまま事業を継続した場合、市場や環境のニーズの変化に対応できないままデジタル競争に取り残されてしまう恐れがあります。

次に日本のDXの現状と、推進の妨げになっている課題は何か解説していきます。

|日本のDXにおける現状と課題

日本のDXの推進はスイスの国際経営開発研究所(IMD)がまとめた、2021年の世界デジタル競争力ランキングによると、64カ国中28位と、世界から大きく遅れをとっています。

日本のDXが遅れているのは幾つかの理由があります。

DXを推進するにあたって課題を明確にしておきましょう。

企業に浸透していない

経営陣がDX推進の目的を正しく認識しておらず、「DXはデジタル化すること」と誤って理解していると従来の業務をデジタルに置き換えただけになり、変革になりません。

DXについての理解と推進する強い意思が経営陣には必要です。

例えば新システムを利用して作業部門が何をしたいのか、IT設計部門に正しく伝わっていなかった場合、結局新システムを使わなくなったり、せっかくDXしても、部署ごとに変革してしまうと、部署ごとの連携が逆にとりにくくなったりする場合もあります。

DX人材不足

DXに取り組むには専門知識を持った人材が不可欠です。

情報通信白書によれば最大の課題は人材不足で、デジタル技術の進化に伴い、優れた人材の確保はますます困難となっています。

企業は以下の理由から人材不足の解決に苦戦しています。

自社内での育成ができる人材が不足していること、新規採用しようにも求める人材に出会えないこと、さらに、システムの老朽化とブラックボックス化は問題で、既存のシステム解析のために貴重な人材のリソースが奪われるため、業務効率の低下とIT人材の枯渇をさらに招いてしまいます。

レガシーシステムに頼る

多くの企業で、既存システムが時代遅れで複雑になっているため、使いにくく理解しづらくなっています。

しかも多くの日本企業では終身雇用制度のため、技術者が他の企業に移動することもあまりありませんでした。

そのため昔ながらのやり方が残ってしまい、システムの老朽化が進み、カスタマイズによる複雑化・肥大化が拡張性や保守性をも悪化させてしまいます。

ブラックボックス化により、既存システムを使いこなせる人材不在も問題ですし、その結果、新システムへの切り替えが困難になり、既存システムの老朽化がさらに加速してしまいます。

|DX支援とは

DXの推進には幾つかの課題がありました。

それを自社だけで解決するにはリスクが高いと感じられたかと思います。

そこでDX支援として、ビジネス変革のサポートと技術的なサポートを外部企業に委託されることをお勧め致します。

DX支援には大きく分けて2つのサービスがあり、ひとつは「ビジネス変革支援サービス」です。

DX人材の育成やビジネス戦略の策定、組織体制の変革、プロセス改善と効率化など、将来的に自社でDX推進を継続するための支援を受けるサービスです。

ふたつめは「技術支援サービス」です。IoT技術やAIの活用、クラウド基盤の構築、データ分析、セキュリティなど新しいシステムの構築を支援するサービスです。

|DX支援企業の選び方

DXを推進するにはIT技術支援とビジネス改革支援が必要とわかりました。

ではDX支援サービスを提供する企業はどう選べばよいのでしょうか。

自社が今課題としていることを明確にし、DX推進によってどう業務を変革したいのか、目的をイメージした上で適切な支援を選ぶことが大切です。

支援方式

DX支援企業は、自社のDX推進において2つの主要な支援方法を提供しています。

ひとつめは、常駐する方式です。企業のDXプロジェクトメンバーに近い人員が定期的に現場に常駐し、現状の把握や問題の解決に積極的に関与します。

ふたつめは、必要な時に相談や助言を提供する方式です。

専門知識を持ったコンサルタントが、常駐することなくプロジェクトに関わり、必要な時に適切なアドバイスやガイダンスを提供します。

自社の希望と支援方式が一致するかどうかを確認することが重要です。

サービス内容

DXと言っても何を変革したいのかによって、求めるサービスも異なります。

「社内業務の効率化」をしたいのか「顧客との関係性の強化」なのか、自社の商材が「ものづくり」なのか「施工管理」なのかもあるでしょう。

それぞれの支援サービス提供会社で、サービス内容や得意な分野、経験が異なります。

まずは自社が求めるサービスを提供しているかどうかを確認しましょう。

サービス内容や得意分野を支援会社に直接確認するのもいいですし、ネットの口コミなどから情報を集めるなどして慎重に検討されるとよいのではないでしょうか。

支援実績     

支援実績は、企業の信頼性や能力を示す重要な要素です。

過去の成功事例や顧客の満足度は、企業の実力や専門知識を裏付けるといえます。

成功したプロジェクトの手法や戦略などから自社のDX戦略や取り組みに役立てることができるでしょう。

また特定の業界における知見やノウハウから、業界特有のニーズや要件に応じたDX変革が可能になります。

さらにDXプロジェクトは大規模かつ重要な変革を伴うことがあるため、信頼性と安定性は重要です。

リスクを軽減し、プロジェクトの成功確率を高めることも大切な要素です。

コスト

DXによる改革には、多くの場合基幹システムやITツールなどを新たに導入することになります。

それらの導入には当然費用がかかります。

初期投資と運用コストを合わせると、かなり大きなコストになるでしょう。

また運用する社員が新しいツールを使いこなすまでの教育にも時間がかかり、その労力が奪われる分も費用となります。

しかしDX推進を避けては、業務を効率化するための機会を失ってしまいます。

DX推進に伴う費用と変革によって得られるメリットのバランスがとても重要です。

|DX支援企業9選

支援企業を選ぶ際には支援方式、サービス内容、支援実績、それとコストが、自社の課題を変革するために重要なポイントであることを述べました。

ではどんな支援会社があり、どんな特徴があるのか、自社に寄り添ってくれるのはどこなのか、具体的に提供サービスを見ながら検討していきましょう。

NTTデータ

NTTデータは、NTTグループの中核企業の1つで、日本国内だけでなく、世界各国で事業を展開しているグローバルなITソリューション企業です。

同社は、顧客の現状ビジネスの紐解きから将来のあるべき姿(Foresight)の策定、そして事業変革のパートナーとして効果の創出まで一気通貫でDXをサポートする、としています。

さらに業種ごとに特化したソリューションやAI、IoT、ロボティクス、ブロックチェーンなどの最新技術を活用したソリューションも提供しています。

中央省庁や大企業を支援する、DX支援売上高で業界トップの企業です。

「テクノロジーによる顧客接点変革のForesight例」には未来の各産業の姿が例示されています。

自社のビジネス変革のヒントが見つかるかも知れません。

NTTアドバンステクノロジ

NTTアドバンステクノロジ株式会社は、「DX支援コンサルティング」によって業務の効率化を指南する企業です。

同社が体験したノウハウを活用してきめ細やかなコンサルティングを行っています。

例として、クラウドサービスの活用や、紙書類・印鑑による承認の電子署名への移行、社内外システム間の連携、そしてテレワークの推進があります。

さらに「DXの落とし穴」を紹介し、その回避方法も同社の体験からコンサルティングしてくれます。

ユーザーオリジナルのDXを推進する際、導入するサービスも数種比較検討するため、顧客ニーズに合った各サービスの提案ができます。

また、非常に有用なサービスについては協業も展開し、導入サービスのスムーズな選定をサポートしています。

富士通

富士通株式会社は、業種や業務に合わせた幅広いDX推進支援を提供しています。

デジタル革新は、「事業」「顧客関係」「組織・働き方」「社会・経済」の4つに分けられおり、さらに「小売」「金融」を含む15の分野に細分化され、あらゆる利用シーンを考慮しています。

「デジタル革新 利用シーンレベル全集」という資料では、AI、IoT、データレイク、クラウドなどの最新のデジタル技術と業種・業務のノウハウを組み合わせ、16の分野と34の利用シーンに分類しています。各利用シーンはイラストで示され、技術的な難易度や規模感が6段階で表現されています。

デジタル革新を実現するための検討に「デジタル革新 利用シーンレベル全集」を活用してみてはいかがでしょうか。

みずほリサーチ&テクノロジーズ

みずほリサーチ&テクノロジーズは、DXに関する以下のサービスを提供しています。

人材育成では、DXに必要な知識やスキルを身につける研修プログラムを提供しています。

研修プログラムは、DXの基礎知識から、具体的なプロジェクトの進め方までを幅広くカバーしています。

組織改革では、DXを推進するための組織体制やプロセスの構築を支援しています。

組織体制の構築では、DXを推進するための役割分担や権限移譲などを支援しています。

プロセスの構築では、DXプロジェクトを円滑に進めるためのプロセスを設計・構築しています。

ITシステムの構築・運用では、DXを実現するためのITシステムの設計・開発・導入・運用を支援しています。

日立コンサルティング

株式会社 日立コンサルティングは、日立グループの事業戦略の策定や実行支援、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進、経営改革など、幅広い分野でコンサルティングサービスを提供しています。

新規事業の立ち上げ、既存事業のデジタル化や業務効率化等の支援に加えて、解決したい分野や業種に応じた支援を行っています。

ソリューション別サービスとしては「経営・事業戦略」「業務改革」「グローバル戦略」など9分野のサービスが提示され、業種別サービスとしては「製造」「流通・サービス」「公共」「金融」「ヘルスケア」「エネルギー」と6業種におけるDXで取り組むべき内容が具体的に提示されていますので、日立コンサルティングのサイトから、自社が実施すべきことを確認することができます。

アクセンチュア

アクセンチュアは、DX支援においては世界No.1のシェアを持っているアメリカの企業です。

アクセンチュアのDX支援の特徴として、世界120カ国以上に拠点を持ち、約50万人の従業員を擁しています。

このグローバルなネットワークを活用することで、顧客のグローバルなビジネス展開を支援することができます。

そしてコンサルティング、システム開発、ITインフラの構築・運用、ビジネスプロセスアウトソーシングなど、DXに必要な幅広いサービスを提供しています。

様々な業界にマッチした専門のコンサルタントが戦略を策定します。

昨今注目されているAIやブロックチェーン、メタバースといった最新技術を用いたシステムも構築することができます。

野村総合研究所

野村総合研究所は業界最大級のコンサルティング企業です。

さまざまなジャンル・業種への支援がありますが、同社のDXへの考え方をご紹介します。

DXはデジタルによる変革ですが、システムが古いからと全てを一新するのではなく、費用対効果を検討すべきです。

「社内業務の効率化」に大きくコストをかけるのではなく、インターネットやAI技術が進歩した今、「顧客への価値の提供」を中心にDXを推進するべきとしています。

大切なのは「スピード・アジリティ」と「データ活用」です。

まず目指すべきビジネスの姿を描き、現状とのギャップを逆算して埋めていく。

そして膨大なデータから顧客への価値を創造していくのです。

サイトには業種ごとの具体的は事例が掲載されていますので、自社に近いDXを探してみてください。

エムティーアイ

エムティーアイは女性の健康情報アプリ「ルナルナ」や多くのヘルスケア関連のアプリ/システムを開発している企業として知られていますが、大企業へのDX支援も行っています。

同社は、コンテンツプロバイダーとしての豊富なノウハウを活かし、アプリのデザイン、企画、開発、運用から金融機関向けの高水準セキュリティとオープンAPIを活用したビジネス・システム開発のサポートまで、多岐にわたるサービスを提供しています。

また、生体認証技術やAIを駆使した本人確認サービス、経費精算システムの提供にも力を入れており、幅広い分野で企業のニーズに合わせたDX推進をサポートしています。

マッキンゼー・アンド・カンパニージャパン

マッキンゼー・アンド・カンパニーは1926年に経営コンサルティング会社としてアメリカ合衆国で生まれた会社です。

コンサルティング業界における長い経験を活かしたDXコンサルティングサービスを提供しているのがマッキンゼーです。

長年の幅広いコンサルティング経験と専門知識を基に、DX戦略の策定から実行まで総合的に支援し、様々な業界のプロジェクトに携わった経験により業界ごとの特性や課題を理解して、業界固有のDX推進アプローチや戦略を提案します。

データ分析と洞察に重点を置いた手法から、事実に基づいた意思決定と効果的な戦略立案ができます。

技術とビジネスの両面に精通しており、最新のテクノロジートレンドやベストプラクティスを把握しています。

そのためビジネス目標と技術を統合して、効果的なDX戦略を策定することができるのです。

|まとめ

いかがでしたか?日本のDXの現状からDX支援企業の紹介までを解説いたしました。

自社のビジネスの未来を変えるとき、DX支援を受けることは、革新的なデジタル技術を活用し、競争で優位に立つための有効な手段ということがおわかりいただけたかと思います。

経験豊富な専門家が、戦略立案から実装まで網羅的に支援して、業界知識と最新テクノロジーを融合し、ビジネスの成長を手助けしてくれます。

変化に迅速に対応し、未来における競争力を確立するために、DX支援をぜひご活用ください。