VRはゲームや仮想空間上での交流を目的に利用されると思っていないでしょうか。

確かに、非現実的な空間への没入感はVRならではの体験です。

しかし、その特性を活かし、安全教育という形での活用も行われているのです。

建設現場や工場といった、安全面が求められる現場において安全教育は欠かせません。

しかし、座学や単純な映像による研修では、本当の意味で事故の恐怖を感じることは難しいでしょう。

本記事では、そんなVRを活用した安全教育について、導入のメリットからサービスまでを紹介します。

現実では再現出来ない事故の状況を疑似体験することで、実際の現場での安全意識に圧倒的な差が生まれるはず。

ぜひ最後までご覧ください。

|VRによる安全教育を行うメリット

VRを利用した安全教育を行うメリットは、以下のような内容があげられます。

それぞれについて、詳しく解説していきます。

  • 実際の事故を疑似体験できる
  • 場所を問わない研修が可能
  • 危機管理意識の向上

実際の事故を疑似体験できる

VRを活用した安全教育の一番のメリットは、実際の事故をリアルに疑似体験できる点です。

現実世界において、事故の状況や人が怪我を負う場面を再現することは容易ではありません。

しかし、VRであれば主観的な映像を元に、まるで自身が本当に事故にあったかのようなリアルな体験が可能になるのです。

事故、怪我の内容についても、各社から様々な内容が提供されています。

カッター作業による災害を体験することで、刃物の危険性に加えて事故が起きる状況をリアルに再現したもの。

回転する機械に巻き込まれる体験をすることで、稼働中の機械に触れる危険性を伝える。

高所作業による落下事故、エアホースを利用した清掃による事故、可燃性溶剤に静電気が引火して発生する火災など、あらゆる現場を想定した研修が可能です。

座学ではカバーできない臨場感、実際には体験できない事故をリアルに再現できます。

結果として、作業員の安全、危機管理意識の向上に大きく繋がるのです。

場所を問わない研修が可能

通常の研修であれば、大人数が集まれる場所の確保、作業工程を加味した日程の調整といった作業が必要でした。

しかし、VRを利用した安全教育であれば、数人単位でそれぞれの作業時間に合わせながら実施が可能。

時間と場所を問わない研修が簡単に実現します。

VRゴーグルといった機器の購入も必要になりますが、必ずしも人数分を用意する必要はありません。

各作業工程の状況に応じて、数人ずつ実施することで対応できます。

また、個人のスマホやPCを通じた研修も行えます。

そのため、作業の空き時間等に確認することを依頼したり、ちょっとしたスキマ時間を活用したりできるのです。

研修で一度見るだけの映像より、何度も自身のスマホやPCで見返すことで、安全意識を強化することに繋がります。

危機管理意識の向上

熟練者ほど、長期間の作業による慣れから、「自分は事故に合わない」と慢心している場合があります。

また、初心者の場合はどういった状況で事故が発生するのかの予測がつきません。

初心者、熟練者といった作業員に対しても、主観的な映像による事故を体験してもらうことで、危機管理意識の向上に繋がります。

いつもの作業をリアルに再現しながら、実際の事故を体験することで「自分は大丈夫」や「いつもやっているから」といった意識を排除できます。

そして、事故によってどういった怪我を負うのかも鮮明に理解できます。

事故が発生する直前の状況をVRを通して体験することで、実際の作業中の安全意識に繋げるのです。

|VRによる安全教育を導入する注意点

メリットの多いVRを利用した安全教育ですが、以下のような注意点も存在しています。

導入する前には、よく把握しておく必要があります。

  • VR酔いの可能性
  • 初期投資が必要

VR酔いの可能性

VRは専用のゴーグルを着用することで、まるで仮想空間に移動したと錯覚する体験ができます。

しかし、VRに慣れていない体験者の場合、「VR酔い」と呼ばれる症状が発生するかもしれません。

自身の身体の動きと、映像のズレから生じる症状ですが、場合によってはその後の作業に影響を与えることも考えられます。

そのため、無理のない範囲で行うことが重要です。

不安を感じる場合は、VRゴーグルの着用ではなく、スマホ画面を経由した体験にするといった工夫が必要です。

初期投資が必要

VRを活用した安全教育を実施するために、専用ゴーグル、安全教育に必要なソフトウェアといった機器の購入が必要になります。

人数が多い現場の場合、機器の台数もある程度余裕を持って用意したいところ。

グループ内で数台の機器を使い回すことも可能ですが、効率面で懸念が残ります。

一定の初期投資が発生することは、事前に把握しておく必要があるでしょう。

しかし、未然に事故を防ぐことによるメリットが大きく上回ることが考えられます。

バランスを考えながら、機器の購入を検討しましょう。

|VRによる安全教育を提供する企業10選

VRを活用した安全教育を提供する企業は複数存在しています。

こちらでは、その中からおすすめの10社を紹介していきます。

凸版印刷株式会社

出典:https://solution.toppan.co.jp/newnormal/service/safetydojovr.html

凸版印刷は世界でも最大規模を誇る総合印刷会社ですが、「安全道場VR」というソフトを提供しています。

このソフトでは現場で起こりうる7つの災害が体験できます。

カッター作業、回転機械、高所作業といった事例の多い作業が中心になっており、すでに印刷、検察、製紙や食品といった幅広い業界への導入事例があります。

内容についても、長年生産現場に携わってきた作業のプロが監修。

リニューアルも頻繁に行っており、人気の高いVRソフトです。

株式会社スペースリー

出典:https://corp.spacely.co.jp/

スペースリーが提供するVRソフトは、脚立での落下事故や火災事故といった災害を体験可能。

単なる体験だけではなく、シーンごとに現れる選択肢を正解すれば次の場面に移るシステムが採用されています。

静止画から危険ポイントをチェックする研修もあり、幅広い安全教育が実現します。

すでに不動産や住宅関連の業界を中心に、4,000社を超える導入実績があり、その継続率は99%を誇ります。

明電システムソリューション株式会社

出典:https://www.meidensha.co.jp/products/plant/prod_04/prod_01_05/index.html

明電システムソリューションが提供する「VR安全体感教育」では、はしごからの落下、溶接作業での火災、電動工具での感電など様々な事例が体験できます。

通常のVR機器だけではなく、3軸VRシミュレーターを組み合わせることで、よりリアルな挙動を伴った研修が実現します。

装置が動くことで、視覚効果だけではない臨場感が味わえるのです。

体験後の振り返り学習機能もあり、単なるアトラクションとして終わらない点も、安全教育を強化するポイントになるでしょう。

ミドリ安全株式会社

出典:https://midori-sh.jp/vr_20220527/

安全保護具、衛生用品を取り扱うミドリ安全は、「VR災害シナリオ」を取り扱っています。

災害内容は多岐にわたり、2023年6月時点で114種類にものぼります。

災害シナリオは随時リクエストを受け付けており、今後も増加することが考えられます。

映像でケーススタディを学習した後に災害を体験し、ディスカッションにより理解を深めます。

触覚再現ユニット、風圧再現、床振動装置などのオプションもあり、よりリアルな体験が可能となっています。

NTTテクノクロス株式会社

出典:https://www.ntt-tx.co.jp/products/vr-anzen/

NTTテクノクロスが提供する「VR安全意識向上サービス」は、人間が感じる恐怖に基づいて作成されています。

体験できる災害は引込線撤去作業、ラック、脚立、足場解体、鉄塔など幅広い作業に対応しています。

VRコンテンツをダウンロードするだけで、即座に利用可能です。

災害体験だけではなく、危機予知トレーニングも用意されており、作業現場を確認しながら事故を未然に防ぐことに繋がります。

幅広いケースを想定した研修が実現するでしょう。

株式会社アクトエンジニアリング

出典:https://acte.co.jp/assets/img/virtual-3rd.pdf

アクトエンジニアリングが提供するVRコンテンツは「目撃型」と「行動型」の2種類に分かれます。

「目撃型」では、ダンプとの衝突シーンを目撃するなど「事故災害の現場に遭遇したシーン」を体験できるのです。

自身が事故にあったケースを想定したVRが多い中、第三者の視点に立ったVRは珍しいものとなります。

もちろん、自身が落下事故に遭うといった通常の体験にも対応しています。

両方のパターンを学習することで、自身だけではなく他者に対する注意喚起も可能になるのです。

株式会社積木製作

出典:https://tsumikiseisaku.com/safetyvr/

積木製作が提供する「安全体感VRトレーニング」では、真の体験を提供することを掲げられています。

フルCGによる臨場感あふれる映像によって、重機災害や足場事故、配線作業による感電といった幅広い分野での災害をリアルに体験できます。

コンテンツは各企業からの専門意見を元に作成されており、説得力の高いものとなっています。

また、英語と中国語にも対応しているため、海外の従業員への研修にも役立つはずです。

株式会社アクティオ

アクティオが提供する「VR安全教育システム」最大の特徴は、5K映像を利用したリアルなCGです。

コンテンツとしては、最も多い事故である落下を中心に対応しています。

通常のVR以上にリアリティにこだわり、実際に落下するスピードから転倒時の角度などを、検証を元に正確に映像化しています。

視野角は210度でありますが、再現コンテンツの体験としては十分。

高画質の映像によって、VR酔いの軽減も期待できるでしょう。

NECソリューションイノベータ株式会社

出典:https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/sl/vr/index.html

「VR現場体験分析ソリューション」では、NECソリューションイノベータ独自の「評価・分析」機能が活用されています。

熟練者の感覚などを定量的に理解することで、危険性の判断を鍛えます。

モーションセンサーによる行動を解析することで、画面上に初心者と熟練者の動きを視覚化します。

問題点や課題点、危険性を明確に理解することで事故を未然に防ぐことに繋がるでしょう。

他者との違いを現実世界で明確に理解することは困難です。

このような点も、VRによる安全教育ならではのメリットとなります。

株式会社ビーライズ

出典:https://vrsim.berise.co.jp/

ビーライズが提供する「VR安全シミュレータ」では、主に運転による接触、転倒、落下、挟まれといった事故に対応しています。

本コンテンツは広島市産業振興センターの、成長ビジネス事業化支援事業を活用して事業化されています。

提供するVRソフトは安全教育だけではなく、就労トレーニングやドライビングスクールなど多岐にわたります。

開発元自体がXRを主体としたDXを創造する企業であるため、高い品質が担保された体験が期待できるでしょう。

|まとめ

VRを活用した安全教育について、そのメリットから注意点、そして現在提供されているおすすめのサービスを解説しました。

日頃行っている作業、慣れている作業であればあるほど、危険と隣り合わせだという事実を忘れてしまいがちです。

しかし、VRによって事故を疑似体験することで、安全意識に対する取り組みを改めて考えられます。

そして、事故がどうやって起きるのか、どういった危険性があるのかが分からない初心者にとっても、VRによる研修によって危機回避能力を高められるのです。

事故は発生してからでは遅いです。

未然に防ぐためにも、従業員に対する安全研修は徹底し過ぎるくらいが丁度いいでしょう。

本記事の内容を参考に、VRを活用した安全教育を検討していただけますと幸いです。