「店舗の従業員やアルバイトが集まらない」「オンラインの事業戦略を取り入れたい」
近年、このように感じてビジネスのDX化に興味を持つ方が増えています。
小売業界も他の業界同様、デジタル化の影響を強く受けており、経営を取り巻く環境が大きく変化しています。
DX化についてよく知らないまま、過去のビジネスモデルを改善しないでいると、ライバルたちに遅れをとってしまうかもしれません。
そこでこの記事では、小売業界でのDXについてDX化のメリットや実際の取り組み事例、DX実現のポイントなどを詳しく解説していきます。
この記事を読むことで小売り業界のDXについて詳しく知ることができ、自分の事業にDXが生かせるかわかるようになります。
目次
|DXとはデジタル技術によるビジネスの改善
DXは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略称です。
デジタル技術を用いたビジネスの変革を意味していて、デジタル技術の力で経営課題の解決や業務プロセスの改善を行います。
たとえば、キャッシュレス決済によるレジ待ちの解消や、ビッグデータの活用による経営戦略の立案などが良い例でしょう。
現在、小売業界が抱える様々な問題を解決するため、また各企業の競争力を高めるためにもDXの推進が多くの企業で必要とされています。
|小売業界の課題とDXによる改善
小売業界は以下の課題に直面しています。
・古い経営システム
・人手不足
・顧客の購買行動の変化
・販売データの取り逃し
これらの課題解決にDXが大きな力を発揮します。
ここからは、各課題についてDXで実現可能な解決策を提示していきます。
古い経営システムを刷新 DX化で効率化
【小売業の課題】
小売業の会社の経営システムは古いままである傾向があります。
たとえば、多くの会社で業務が未だにIT化されず、アナログな方法で業務が行われているのが現状です。手書きの在庫管理表や、FAXでのやりとりが未だに見られる会社も散見されます。
古いシステムを放置したままデジタル化が進まないと、業務が非効率で生産性を高められず、コストも余計にかかってしまいます。
【DXにできること】
DX化を行うことで既存のシステムを刷新し、業務を改善できます。
たとえばさまざまな書類をデジタルに置き換えペーパーレス化し、情報の一元管理が可能になります。
情報が整理され使いやすくなれば、必要な情報やマニュアルなどを探す時間が減るなど、時間効率を上げられます。
また帳票の読み取りや在庫管理など、業務によってはAIによる自動化が可能です。
自動化できれば人によるミスも減らせるので無駄な作業が発生せず、業務を効率化できます。
人手不足をDXで改善
【小売業の課題】
小売業界では人手不足が深刻化しています。
薄利多売のビジネスモデルからくる給与の低さや、長時間労働の慢性化などから離職する人材が多く、近年のコロナウイルス感染症対策による業務負担の増加でさらに状況が悪化しています。
【DXにできることできること】
DXによる改善で代表的な例は、スーパーに配置されるようになったセルフレジです。
顧客が自ら会計作業を行えるようになったことで、レジ打ちの従業員数を削減できました。
このようにDX化によって、作業を機械が代替してくれれば、当然人を雇う必要がなくなり人手不足を改善できます。
購買行動の変化にDX化で対応
【小売業の課題】
近年、IT技術の進歩やコロナウイルス感染症の影響によって消費者の購買行動が変化しつつあります。インターネット上での買い物やキャッシュレス決済の機会が増えました。
デジタル技術を活用した購買システムは徐々に常識になりつつあります。しかしこのような変化に対応できている企業は一部であり、多くの会社が未だに十分対応できていない現状があります。
【DXにできること】
現在では、便利なWebサービスが多数存在しており、比較的簡単に自分のECサイトを持てます。また、POSレジを導入すれば、キャッシュレス決済への対応が可能です。
POSレジはメーカー各社がさまざまな機種を提供しており、安価なモデルやレンタルサービスもあるため、業態にもよりますが導入へのハードルは意外に低いです。
顧客情報の取り逃しをDX化で解消
【小売業の課題】
IT化の遅れによって各種データを取り逃している会社があります。
販売データや顧客データは、経営にとって非常に重要です。
たとえば
・商品の入れ替え
・商品の陳列場所の決定
・顧客一人一人に対する最適な購買体験の提供
・新たな商品開発
商品の売り上げに大きな影響を与える上記の業務をデータを活用することで適切に行えるようになります。
しかし、古い販売システムを使っているときちんと情報を取り切れず、貴重なデータを逃してしまいます。これは経営にとって大きな損失です。
【DXにできること】
たとえばPOSレジを導入すれば、商品購入の日時や個数などの購買情報を取得できます。
さらにAI搭載のネットワークカメラを設置すれば、性別や年代などの顧客情報も得られます。
購買情報や顧客情報を用いれば、データに基づく予測が可能になり、客観的な意思決定が可能になるため、直感に頼らない効果的な販売戦略の立案ができます。
|DX化で可能になる新たな取り組み
DX化を推進すれば、これまでとは違った事業戦略をとることが可能になります。
ECサイトの展開やOMOの実現はデジタル化によって可能になる戦略のなかでも注目されています。
ECサイトの展開
ECサイトがあれば、インターネット上のWebページを通して、商品の販売を行えます。
ECサイトを持つメリットは以下の通りです。
・時間を選ばずいつでもサイトから商品を販売できる
・地域にとらわれず全国の顧客を相手にできる
・容易に顧客データを集めることが可能で、集めたデータをマーケティングに生かせる
・実店舗と違い感染症対策の必要がない
ECサイトの展開は、DXのなかでも最も馴染み深い基本的な取り組みの一つです。
自社でサイトを開発する方法もありますが、現在は既存のWebサービスを使って個人でも簡単にECサイトを持てる環境になっています。
そのため、まだECサイトがない場合は導入の検討をおすすめします。
OMOの実現
OMOは「Online Merges with Offline」の略称です。
オンラインとオフラインを別々に考えるのではなく、両者を統合してより便利なサービスにすることを目的とするマーケティング戦略です。
たとえば、有名なのは「Amazon Go」です。
顧客が店内でチョイスした商品を自動で認識し、ゲートを通るだけで購入決済が完了するという最先端の店舗です。
この「Amazon Go」は現実世界にある実店舗とオンライン上のシステムが高度に連携し、今までにないような便利なサービスを顧客に提供しています。
今後デジタル化がさらに進むなかで、Web上のシステムやコンテンツを交えた、より便利で新しいサービスを提供することが顧客満足を上げるうえでより一層大切になるでしょう。
|DX化の事例
ここからは、企業が実際にDX化に取り組んだ例をご紹介していきます。
株式会社ヤクルト
株式会社ヤクルトはDXによって売り上げアップのノウハウを発見しました。
【経営課題】
顧客の購買行動について把握できておらず、商品陳列の方法や売り場のアピール方法を決められずにいました。
【DXによる解決】
コニカミノルタマーケティングサービス株式会社の「Go Insight」というサービスを導入し、天井に設置したカメラから顧客の行動パターンをモニタリングしました。
さらに顧客行動を分析することで、商品をどの棚に並べれば売り上げアップにつながるかを突き止めました。
株式会社ローソン
ローソンはDXによって人手不足の解消に取り組んでいます。
【経営課題】
店舗によっては従業員がなかなか集まらず、十分な人員確保が困難でした。
【DXによる解決】
ローソンは2022年から新たな試みである「Lawson Go」を開始しました。
「Lawson Go」はいわゆる無人店舗です。店内に設置されたカメラが、顧客の動きを認識して手に取った商品を判別します。そして顧客が店舗の外に出るだけで登録されているクレジットカードから料金決済ができる仕組みになっています。
無人店舗であれば、従業員を雇う必要がないので、人手不足の解消や人件費の削減が期待できます。
イオン株式会社
イオンはDXの導入によってレジ待ちの時間を短縮しました。
【経営課題】
買い物客が多く訪れる時間帯に長いレジ待ちの行列ができていました。
レジ待ちの時間が長いと、買い物客がストレスを感じてしまい、ライバル店に流れていってしまう恐れがありました。
【DXによる解決】
イオンでは、セルフレジに加え「レジゴー」というサービスを導入しました。
「レジゴー」は買い物客が商品を手に取った段階で、お客自らがスマホから商品のバーコードを読み取り、専用のレジで支払いを済ませる仕組みになっています。これにより従来の方法よりも短時間で会計作業が済むようになりました。
セルフレジや「レジゴー」によって少ない従業員数でも多くの買い物客のレジ対応ができるようになり、レジ待ち行列解消の一助となっています。
|DX導入の課題
経営にさまざまメリットをもたらすDXですが、導入には以下の課題を乗り越える必要があります。
・DXに明るい人材の確保
・DX化にかかるコスト
・従業員への教育
せっかくDX化を推進しても導入に失敗すれば意味がありません。
DX化を進める際に起こりうる問題を認識して対応できるようにしておきましょう。
DXに明るい人材の確保
DX化を行うには、DXを適切に導入し運用できる人材が必須です。
DXを適切に導入し運用できる人材とは、従来のシステムの問題点を把握できており、DX化を通して何が実現できるのかを理解している人間です。
しかし、社内に必ずしもDXと社内システム両方に明るい人材がいるとは限りません。
そのため、時間をかけて人材を採用し育成したり、DX化のプロに依頼して協力しながら進めたりといったことも視野に入れる必要があります。
DX化には時間と費用がかかる
DX化には時間と費用と労力がかかります。
たとえば
・現状調査と既存システムの問題点の把握
・導入するシステムの比較検討
・DX化のロードマップ作成
・DX化を推進するための体制作り
・システムの購入と導入
・導入後のメンテナンスや不具合の改善
などなど
既存の業務改善は一朝一夕ではできません。きちんとした計画の元に進める必要があります。
従業員の教育
DXを成功させるには従業員のDXに対する理解が必要不可欠です。
DX化後のシステムを従業員が使いこなせなければ、業務は成り立ちません。
たとえば、従業員に対する説明が不十分だったり、従業員の意向を無視して強引な改変を断行したりすると、最悪の場合、従業員からの反発に遭いDX化のプロジェクトが立ちいかなくなる可能性もあります。
そのため、プロジェクトを導入する前段階で、きちんと調査を行い、従業員の理解を得た上でDXを行うのが理想です。
さらに導入後も、新たな仕事のやり方に従業員が馴染めるように、システムの改善や従業員の教育を繰り返し行う必要があります。
|DX化を実現するために
DX化を進めるにあたって以下の点を明確にする必要があります。
・DX化の目的と経営戦略
・業務フロー
・既存システムとの共存
それぞれの点について説明していきます。
適切な目的と経営戦略
DX化をすすめるにはまず、目的をはっきりさせる必要があります。
現在の経営課題を正しく認識し、DX化によって何をどのように解決するのかを明確にしなければ、ただ新しいデジタル技術を導入しただけで、経営の改善に結びつきません。
十分に経営戦略を練り上げて、効果的なDXを行いましょう。
業務フローの明確化
効果的なDXを実施するには、従業員の業務フローを明確化する必要があります。
業務の改善は、業務の内容を知るところからはじまります。
従業員が日々行う業務の中で、時間がかかるもの、負担が大きいもの、非効率的なものを洗い出し、デジタル技術によってどのような改善が可能かをはっきりさせましょう。
DX化には、大きなコストがかかります。便利なシステムを導入しても、ボトルネックになっている業務の改善に結びつかなければ、費用対効果が見合わない場合があります。
既存システムとの連携
DX化を成功させるためには、既存システムとの共存が必要になる場合があります。
既存のシステムにはこれまで培ってきたノウハウや顧客情報など、会社の財産といってもよい資源が多く存在しています。これを全て新しいシステムに入れ替えるには困難が伴います。
既存のシステムで残すべきところとDX化によって変革した部分をきちんと連携させて、業務に支障がでないように対策する必要があります。
|まとめ:小売業界のDX
この記事では、小売業界のDXについて主に以下の内容をお伝えしてきました。
・DXとはデジタル化によるビジネスの改革
・小売業界が抱える課題をDXによって解決できる
・すでにさまざまな企業がDX化に取り組んでおり、成果を出している
・DX化を実現するには時間と労力がかかり、計画的に取り組むことが必要
デジタル技術の進歩は小売業界にも大きな影響を与えています。AmazonのようなECサイトが一般に浸透し、インターネット上での購買が当たり前になりました。
またキャッシュレス決済やセルフレジも今や特別なものではなくなり、端末を見かけないことの方が珍しくなりつつあります。
このような変化のなかでDX化を先送りにすれば、業務効率の面でも顧客満足度の面でも他社に遅れをとることになるでしょう。
もしあなたがDX化の必要性を感じているなら、ぜひこの機会にDXの導入を真剣に検討することをおすすめします。