教育現場におけるプログラミング必修化やGIGAスクール構想の進展に伴い、ゲームを応用した教材の活用が急速に注目を集めています。
中でも「Roblox(ロブロックス)」と「Minecraft(マインクラフト)」は、その代表的なプラットフォームとして名前が挙がりますが、教育ツールとしての具体的な違いや、導入時の管理リスクまでは十分に知らないという方も多いのではないでしょうか。
両者は根本的な設計思想が異なり、対象とする生徒の年齢層や学習目的によって最適な選択肢は変わります。
本記事では、教育関係者や導入担当者が知っておくべき両者の機能差、安全性、そして端末スペックの壁について、実務的な視点から解説します。

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両者は似たようなゲームコンテンツに見えますが、学習者が体験するプロセスは大きく異なります。
ここでは、教育現場でどのような学習効果の差として現れるのかについて解説します。
「デジタルな積み木」か「ゲームを作るエンジン」か
Minecraft(マインクラフト)とRoblox(ロブロックス)の最大の違いは、創造における自由度の「ベクトル」にあります。
結論から言えば、マインクラフトは「デジタルな積み木」であり、ロブロックスは「ゲーム制作エンジン」であると定義できます。
マインクラフトは、すでに完成された世界の中で、ブロックを積み上げて建築物を作ったり、回路を繋いで装置を動かしたりする「空間的な創造」に特化しています。
直感的に操作できるため、ITリテラシーの低い段階からでも参入しやすく、空間認識能力や論理的思考を養うのに適しています。
一方で、ロブロックスは「Roblox Studio」という専用の開発ツールを使用し、ワールドの物理法則やキャラクターの動きそのものをプログラムで記述する「システム的な創作」が中心です。
これはUnityやUnreal Engineといったゲームエンジンの簡易版に近い性質を持っており、単に遊ぶだけでなく、コンテンツそのものをゼロから構築するエンジニアリングの要素が強くなります。
教育現場においては、創造性を自由に発揮させたい美術や技術の授業にはマインクラフト、本格的な情報工学やアプリ開発の基礎を教えたい場合にはロブロックスという使い分けが可能です。
学べるスキルの難易度と対象年齢
習得できるスキルセットと推奨される対象年齢についても、両者にはある程度の住み分けが存在します。
マインクラフトは、主に小学生から中学生、あるいはプログラミング初学者を対象とした導入教材として非常に優れています。
その理由は、マイクロソフトが提供する「MakeCode」などのビジュアルプログラミング環境が充実しており、キーボードでのタイピングが苦手な児童でも、ブロックを並べるだけで直感的にコードの概念を学べるからです。
「前に進む」「ブロックを置く」といった単純な命令を組み合わせることで、アルゴリズムの基礎を楽しみながら身につけることができます。
対してロブロックスは、小学校高学年から高校生まで対応できます。
ロブロックスでの開発には「Lua(ルア)」という軽量スクリプト言語を使用するため、本格的なテキストコーディングのスキルが求められます。
変数、関数、条件分岐といったプログラミングの構文を正確に記述する必要があり、学習のハードルは上がりますが、その分、将来的にPythonやJavaScriptなどの実用言語へ移行する際の基礎体力を養うことができます。
したがって、教育カリキュラムを設計する際は、生徒の発達段階や学習のゴール(論理的思考の育成か、実務的スキルの習得か)に合わせて、適切なプラットフォームを選定する必要があります。
教育版・学習カリキュラムの充実度
教育現場への導入において、ソフトウェア単体の機能以上に重要視されるのが、教員が活用できる「教材」や「カリキュラム」の有無です。
マインクラフト:公教育での実績豊富な「Education Edition」
マインクラフトには、「Minecraft Education(旧:Education Edition)」という、教育機関向けに特化した専用アプリケーションが存在します。
これは公教育での導入を強く意識して設計されており、学習指導要領や各国の教育基準に合わせた数百種類以上のレッスンライブラリが標準で用意されています。
例えば、化学の授業で使用できる「化学アップデート」機能では、元素記号を組み合わせて化合物を作るといった実験を、バーチャル空間内で安全に行うことが可能です。
また、歴史的建造物の探訪や、SDGsをテーマにしたワールドなど、プログラミング以外の教科横断的な学習(クロスキャリキュラム)に対応している点も大きな強みです。
マイクロソフト社による公式サポートやコミュニティも充実しており、初めてICT教育に取り組む教員にとって、授業進行のガイドラインが確立されている点は非常に安心できる要素と言えます。
教育版は、単なるゲームの流用ではなく、体系立てられた「デジタル教材」として完成されているのが最大の特徴です。
ロブロックス:実践的な「Roblox Studio」とSTEAM教育
一方、ロブロックスにはマインクラフトのような「教育専用の独立したアプリ」は存在しませんが、
「Roblox Education」という教育者向けのリソースハブが提供されています。
ここでは、ロブロックスの開発ツールである「Roblox Studio」を活用した、STEAM教育(科学、技術、工学、芸術、数学)に特化したカリキュラムが無償で公開されています。
ロブロックスの学習コンテンツは、物理演算を利用したシミュレーションや、3Dモデリングによる空間デザイン、そしてゲームエコノミーを通じた経済の仕組みなど、より実社会に近いテーマを扱う傾向があります。
特に、作成したゲームを公開して他のユーザーに遊んでもらうというプロセスを通じて、アントレプレナーシップ(起業家精神)やプロジェクトマネジメントを学べる点は、ロブロックスならではの独自性です。
マインクラフトが「学校の授業を補完するツール」であるとするならば、ロブロックスは「クリエイターやエンジニアとしてのキャリアを切り拓くための実践ツール」という位置づけになります。
そのため、情報の授業や部活動、または民間のプログラミングスクールなど、より専門的なスキル習得を目指す場での採用事例が増加しています。
「安全性」と「管理機能」の比較
学校現場でオンラインツールを導入する際、学習効果以上に懸念されるのが「セキュリティ」と「生徒指導上のリスク」です。
不特定多数の外部ユーザーとの接触や、チャットによるトラブル、授業に関係のない行動を制御できるかといった点は、導入可否を左右する決定的な要因となります。
ここでは、管理者である教員の視点から、両プラットフォームの安全性と管理機能について比較します。
外部との接触リスクとチャット制限の仕様
オンライン上の安全性において、Minecraft Educationは教育機関にとって非常に理想的な環境を提供しています。
その理由は、Minecraft Educationのマルチプレイ機能が、基本的には「同一のMicrosoft 365 Educationテナント内」に限定されているためです。
つまり、同じ学校や組織に所属する生徒と教員以外がワールドに入ってくることはシステム上不可能であり、外部の不審者と接触するリスクを根本から遮断しています。
対してロブロックスは、全世界で数億人がアクセスするオープンなプラットフォームであるという性質上、デフォルトの状態では外部ユーザーとの接触リスクが伴います。
ロブロックスを授業で使用する場合、教員は「プライベートサーバー」を設定し、関係者以外が立ち入れない空間を個別に用意する必要があります。
また、ロブロックスにはAIによる強力なテキストフィルター機能があり、不適切な発言は自動的に伏せ字になりますが、完全にトラブルを防げるわけではありません。
教育利用においては、設定画面からチャット機能を完全にオフにする、あるいは連絡先設定を厳格に制限するといった、事前のアカウント設計(キッティング)がマインクラフト以上に重要になります。
クラスルームモードなど授業運営機能の有無
授業を円滑に進めるための「統率ツール」の充実度に関しても、両者には明確な差があります。
Minecraft Educationには「Classroom Mode(クラスルームモード)」という、教員専用の管理アプリが標準で用意されています。
これを使用することで、教員は散らばった生徒を一箇所に強制テレポートさせたり、授業中のチャットを一時的に無効化したり、特定のアイテムの使用を禁止したりといった制御を手元の画面で一括操作できます。
また、「ボーダーブロック」などの特殊なブロックを使えば、生徒が移動できる範囲を物理的に制限することも可能であり、授業の進行を妨げる「荒らし」行為を未然に防ぎやすい設計になっています。
一方、ロブロックスには、マインクラフトのようにパッケージ化された「教員用管理パネル」は標準では存在しません。
もちろん、Roblox Studioでスクリプトを組めば同様の機能を実装することは可能ですが、それには教員自身にプログラミングの知識が求められます。
そのため、ITリテラシーに自信のない教員が主導する場合や、準備時間を十分に取れない場合には、管理機能が完成されているマインクラフトの方が、現場の運用負荷は圧倒的に低くなると言えます。
導入前に確認すべき端末スペックとコスト事情の違い
どれほど優れた教育カリキュラムであっても、生徒の手元にある端末で快適に動作しなければ授業は成立しません。
特に公立学校で広く採用されている「GIGAスクール端末」は、予算の関係上、必要最低限のスペックであることが多く、メタバース系アプリの導入には高いハードルが存在します。
ここでは、物理的な動作環境と、導入にかかる費用の観点から両者を比較します。
GIGAスクール端末(Chromebook/iPad)での動作可否
結論から申し上げますと、学習の目的が「プレイ体験」か「本格的な開発」かによって、GIGAスクール端末(主にChromebookやiPad)での対応状況は大きく変わります。
Minecraft Educationは、ChromebookやiPad向けに最適化されたアプリが提供されており、低スペックな端末でも比較的安定して動作するように設計されています。
ただし、生徒が一斉に処理負荷の高い操作を行うと、クラス全員の端末がフリーズするといった現象は頻繁に発生するため、授業構成には工夫が必要です。
一方でロブロックスは、状況がより複雑です。
単にロブロックス内のゲームを遊ぶだけであれば、Chromebook(Google Playストア経由)やiPadでもアプリを動作させることは可能です。
しかし、プログラミング教育の肝となる開発ツール「Roblox Studio」は、現状ではWindowsまたはMacのPC環境でしか動作しません。
つまり、ChromebookやiPadしか配布されていない学校では、ロブロックスを使って「ゲームを作る授業」を行うことは物理的に不可能ということになります。
この「プレイヤーアプリは動くが、開発ツールは動かない」という仕様の違いは、導入後に発覚すると致命的な問題となるため、事前の機材確認が重要です。
ライセンス費用と無料範囲の違い
予算編成に関わるコストモデルについても、両者は対照的なアプローチをとっています。
Minecraft Educationを利用するには、基本的に有料のライセンス契約が必要です。
学校がすでに「Microsoft 365 Education A3」以上のライセンスを契約している場合は追加費用なしで利用できますが、そうでない場合は生徒1人あたり年間数ドル程度のライセンス料が発生します。
コストはかかりますが、その分、アプリ内には広告や課金要素が一切なく、教育委員会や保護者に対して「教材費」としての説明責任を果たしやすいというメリットがあります。
対してロブロックスは、アプリのダウンロードも、開発ツールの利用も基本的には無料です。
初期費用ゼロでスタートできる点は大きな魅力ですが、ロブロックスのビジネスモデルは、アバターの衣装や便利アイテムを購入する「Robux(ロバックス)」という通貨による課金に基づいています。
そのため、教育現場で導入する際は、生徒が誤って課金しないような指導や、魅力的な課金アイテムへの誘惑がある環境でどう学習に集中させるかという、コストとは別の「運用上の配慮」が必要になります。
「有料だがクリーンなマインクラフト」と「無料だが商用要素が含まれるロブロックス」という違いを理解し、学校の方針に合ったツールを選定することが求められます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事では、教育視点でのロブロックスとマインクラフトの違いを解説しました。
結論として、どちらのツールが優れているかではなく、「端末のスペック」と「授業のゴール」に合わせて選ぶことが重要です。
iPadやChromebookなどのGIGA端末を活用し、安全な環境で創造性やアルゴリズムの基礎を育むなら「マインクラフト(教育版)」が最適解です。
一方で、高性能なPC環境が整っており、将来を見据えて本格的なゲーム開発やテキストコーディングスキルに挑戦させたいなら「ロブロックス」を検討してみると良いでしょう。
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