MR開発の費用について、「どのくらいが相場なのか」いまいち把握できていない担当者はいらっしゃるのではないでしょうか

MRは、現実空間にデジタル情報を重ね合わせて操作できる技術であり、その特性から「現場作業」と非常に相性が良いとされています。

本記事では、MR開発の費用に関する全体像を掴んでいただくため、以下の点を解説していきます。

  • XR技術(VR/AR/MR)におけるMRの位置づけと違い
  • HoloLens 2などのデバイス代を含めた総額費用の目安
  • 「遠隔支援」や「作業マニュアル」など用途別の費用事例
  • 失敗しないための現実的な始め方(PoC)

この記事を読めば、MR開発の基本的な知識から大まかな費用感までを知ることができますので、MR技術の導入にご興味がある方は、ぜひご覧ください。

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そもそもMR(複合現実)とは何か?

開発費用を理解する前提として、まずはMRがどのような技術なのでしょうか。

MR技術とは

MR(複合現実)とは、その名の通り、現実世界とデジタルな仮想世界を融合させる技術です。

最大の特徴は、専用のデバイス(HoloLens 2など)が現実空間の地形や物体の位置を正確に認識(スキャン)し、その「現実の場所」に3DCGなどのデジタル情報を「固定」して表示できる点にあります。

  • VR(仮想現実)との違い
    VRはゴーグルで視界を完全に覆い、100%デジタルの仮想空間に没入します。
    現実世界は見えません。
  • AR(拡張現実)との違い
    ARはスマートフォンのカメラなどを通して、現実世界にデジタル情報を「重ねて表示」します。
    しかし、その情報は現実空間に固定されておらず、スマートフォンを動かせばズレてしまいます。

MRは、ARのように現実世界が見えている状態で、VRのように高精細な3DCGを「あたかもそこにあるかのように」固定配置できます。
さらに、ユーザーは自分の「手(ジェスチャー)」で、そのデジタル情報に触れて操作できる(例:掴む、拡大する)のが決定的な違いです。

【図解】XR技術(VR/AR/MR)の全体像とそれぞれの違い

こうしたVR、AR、MRといった先端技術は、近年「XR(Cross Reality:クロスリアリティ)」という言葉で総称されることが増えています。

XRは、現実世界と仮想世界をさまざまなレベルで融合させる技術全体のことを指します。

  • VR (Virtual Reality):「仮想現実」、現実から遮断されたデジタル空間への没入体験が可能。
  • AR (Augmented Reality):「拡張現実」、現実世界にデジタル情報を「上乗せ」する。
  • MR (Mixed Reality):「複合現実」、現実世界にデジタル情報を「固定・操作」可能にする。

XRの中でも、MRは最も現実世界と仮想世界の融合度が高い技術として位置づけられています。

なぜMRは製造・建設業のような「現場作業」と相性が良いのか?

MR技術が、特に製造、建設、医療といった「現場」で注目される理由は、その「ハンズフリー」と「空間認識」の特性にあります。

工場のライン作業員や建設現場の技術者は、両手で工具を使ったり、部材を運んだりする必要があります。

スマートフォンを持って作業することは非現実的です。
MRデバイス(HoloLens 2など)はヘルメットのように装着できるため、両手を塞がずに(ハンズフリーで)、現実の作業対象を見ながら、必要なデジタル情報(作業指示書、3D図面、遠隔からの指示)を目の前に表示させることが可能です。

現実の作業を止めずに、必要なデジタル支援をリアルタイムで受けられる点こそが、MRが現場のDX推進、特に「技術継承」や「作業ミス防止」の切り札として期待される最大の理由です。

MR開発の費用相場とは?

MRの導入費用は、主に「①デバイス本体の購入費」と「②専用アプリケーションの開発費」という、大きく2つの要素で構成されています。

基本的に業務用の専用デバイスと、そのデバイスで動かすためのオーダーメイドのソフトウェア開発がセットで必要となります。

【結論】MR開発の総額は数百万円~1,500万円以上が目安

まず結論として、MR開発の総額(デバイス購入費+アプリ開発費)は、最低でも数百万円から、複雑なシステム開発になれば1,500万円以上になるのが一般的な相場です。

費用①:MRデバイス本体の価格(例:Microsoft HoloLens 2)

MR体験の前提となる専用デバイスは、それ自体が非常に高価な精密機器です。

現在、産業用MRデバイスのデファクトスタンダードとなっている「Microsoft HoloLens 2」を例に挙げると、その価格は以下のようになっています。

  • HoloLens 2(通常版): 1台あたり約42万円(税込)
  • HoloLens 2 Industrial Edition: 1台あたり約57万円(税込)
    (※クリーンルームや危険場所に対応した産業用モデル)

現場の作業員が複数名で使用する場合、このデバイス費用だけでも数十万円から数百万円の初期投資が必要となる可能性があります。

費用②:専用アプリケーションの開発費(オーダーメイド開発が基本)

MR導入で最も費用(総額の大部分)を占めるのが、この「専用アプリケーションの開発費」です。 HoloLens 2などのデバイスは、購入しただけでは「高性能な箱」に過ぎません。

自社の特定の業務(例:自社製品Aの組立手順を表示する、自社工場Bの配管図を重ねる等)を実現するためには、その業務内容に合わせた専用のアプリをゼロからオーダーメイドで開発する必要があります。

このオーダーメイド開発には、専門的な技術(Unityなど)を持つエンジニアや3DCGデザイナーの工数(人件費)が数ヶ月単位で発生するため、最低でも数百万円規模の開発費となるのが一般的です。

【ケース別】製造・建設業向けMR開発の費用事例

では実際にどのような開発ケースで、どの程度の費用になるのでしょうか。
ここでは、代表的な3つの用途と、そのアプリ開発にかかる費用事例の目安を解説します。

【500万円~】遠隔作業支援(現場状況のリアルタイム共有)

これは、現場作業員が見ている「HoloLens 2の視界」を、そのまま遠隔地にいる熟練者や管理者のPC・タブレットにリアルタイムで共有するシステムです。

開発費用の目安は500万円程度からとなります。

解決できる課題
現場での突発的なトラブル対応や、若手作業員への指示出しの際に、熟練者が現場に駆けつけなければならないという課題に対して有効です。

このシステムを使えば、熟練者は自席にいながら、現場作業員が見ている作業風景に、直接「矢印」や「手書きの指示」をMRで表示させることが可能です。

費用感の理由
MR開発の中では、比較的シンプルな機能(映像・音声の双方向通信、空間への書き込みなど)で構成されるため、開発費用は抑えやすい傾向にあります。

移動コストの削減や、ダウンタイム(機械の停止時間)の短縮に直結しやすい用途です。

【1,000万円~】デジタル作業マニュアル(手順の3D表示・技術継承)

これは、従来は紙やタブレットで確認していた作業マニュアルを「MR化」し、作業員の手順習熟や技術継承を支援するシステムです。
開発費用の目安は1,000万円程度からとなります。

解決できる課題
熟練者に頼りがちな作業の技術継承や、定期メンテナンス手順の研修など、長期的な教育が必要な場面に有効です。

このシステムは、作業員が目の前の実物(機械など)を見ると、その上に「次に触るべきボルト」や「工具の動かし方」など具体的な手順を、3DCGのアニメーションで表示します。

作業員はハンズフリーで、MRのナビゲーションに従うだけで正確な作業が可能となり、教育コストの削減と作業ミスの防止(ヒューマンエラー対策)に繋がります。

費用感の理由
遠隔支援の機能に加え、作業手順をシナリオ化するシステム開発や、手順を分かりやすく示すための3DCGコンテンツの制作費が必要となるため、シナリオのボリュームに応じて費用が高くなります。

【1,500万円~】施工・設計シミュレーション(3D CAD/BIMデータの可視化)

これは、設計段階の3D CADデータやBIM(Building Information Modeling)データを、HoloLens 2を通じて現実の空間に「原寸大」で重ねて表示するシステムです。
開発費用の目安は1,500万円以上と、最も高額になるケースが多い用途です。

解決できる課題
建設現場において、2Dの図面だけでは施工イメージの共有が難しく、配管の干渉(設計ミス)や施工ミスが発生するリスクに対して、有効です。

このシステムを使えば、まだ何もない建設予定地に「完成後の建物の3Dモデル」を原寸大で表示し、その中を歩き回って問題点(例:配管が壁に干渉していないか)を事前に確認できます。

費用感の理由
大規模で非常に重い3D CAD/BIMデータを、MRデバイスで滑らかに表示させるためには、データを「軽量化・最適化」する高度な専門技術が必要です。

また、現実空間と図面の位置を寸分の狂いなく合わせるための高度なシステム開発が求められ、ベンダー側とユーザー側での長期的なプロジェクトになりがちな為、開発費は最も高額になる傾向があります。

MR開発費用における主な内訳とは

MR開発の費用は、主に「エンジニアの人件費(システム開発費)」「デザイナーの人件費(コンテンツ制作費)」「管理者の人件費(PM費)」で構成されています。

詳しく見ていきましょう。

1. システム開発費(ゲーム開発エンジンでの開発)

これは、MRアプリケーションの「動き」や「機能」をプログラミングするための費用であり、開発費の中で最も大きな割合を占めやすいです。

HoloLens 2などのMRデバイスで動作する3Dアプリケーション開発は、Webシステム開発などとは異なり、主に「Unity(ユニティ)」や「Unreal Engine(アンリアル・エンジン)」といった専門的なゲーム開発エンジンを使用します。

これらのエンジンを扱える高度なスキルを持ったエンジニアが、ジェスチャー操作機能、遠隔通信機能、作業ナビゲーションのロジックなどを構築するために必要な工数(人月)分の費用が、システム開発費として計上されます。

2. 3DCGコンテンツ制作費(CADデータの最適化など)

これは、MR空間に表示する「モノ」(3DCGモデル)を制作・準備するための費用です。
製造業や建設業の場合、すでに保有している3D CADデータやBIMデータを流用するケースもあります。

しかし、これらの設計用データは非常に精細でデータ容量が重すぎるため、そのままではHoloLens 2のようなモバイルデバイスでは描画できません。

そのため、既存のCADデータをMR用に「軽量化・最適化」する専門的な作業(ポリゴン削減、テクスチャ圧縮など)が必須となり、そのための3DCGデザイナーの工数が費用として発生します。

新規に3DCGモデルを作成する場合は、その制作費もここに含まれます。

3. プロジェクトマネジメント費(要件定義・進行管理)

これは、プロジェクト全体を円滑に進めるための「管理費用」であり、プロジェクトマネージャーやディレクターの人件費が該当します。

特にMR開発において重要なのが、プロジェクト初期の「要件定義」フェーズです。

「現場のどの業務を、どのようにMR化すれば本当に課題解決に繋がるのか」を、発注者(現場担当者)と開発会社が綿密にすり合わせ、アプリの仕様を決定する必要があります。

この要件定義の質がプロジェクトの成否を分けるため、専門知識を持った管理者による工数は不可欠なコストとなります。

【初心者必見】MR開発の進め方とは

MR開発を進める上で、ほぼ全ての企業が採用する鉄則が「PoC(概念実証)」からスモールスタートすることです。

いきなり全社導入を目指すのではなく、まずは「小さく試す」ことから始めるのが成功の鍵となります。

”PoC”としてスモールスタートする

PoC(Proof of Concept:概念実証)とは、新しい技術やアイデアを本格的に導入する前に、「それが本当に実現可能なのか」「期待する効果が得られそうか」を検証するために行う、小規模な実証実験のことです。

MR開発は高額であると同時に、実際に現場で使ってみないと分からない要素(例:デバイスの装着感、操作性、通信環境の影響など)が多くあります。

数千万円を投じてフル機能のアプリを開発した結果、「現場では重くて使えない」「操作が複雑すぎて誰も使わない」といった失敗に陥るリスクは、極力回避せねばなりません。

まずは「最も解決したい課題」一つに絞り、最小限の機能だけを実装したプロトタイプで「本当に使えるか」を現場で試すことが重要です。

PoC実施の費用目安と進め方

PoC(概念実証)は、機能を絞り込み、開発期間も1~3ヶ月程度と短期間で実施するため、本開発よりも費用を大幅に抑えることが可能です。

MR開発におけるPoCの費用目安は、一般的に200万円~500万円程度が相場となります。

一般的なPoCの進め方は以下の通りです。

  1. 課題設定と機能定義
    現場の課題(例:熟練者不足)に対し、MRで検証する機能(例:遠隔支援)を定義します。
  2. プロトタイプ開発
    定義した最小限の機能を、HoloLens 2などで動作するアプリとして短期間で開発します。
  3. 現場テスト
    実際の現場(工場、建設現場など)で、作業員がデバイスを装着してアプリを試用します。
  4. 評価・判断
    現場からのフィードバック(例:「操作性は良いが、この機能も欲しい」「通信が途切れる」)を収集・分析し、本開発に進むべきか、または何を改善すべきかを判断します。

この費用で「自社の課題がMRで解決可能か」を判断できるため、本開発への大規模投資を行う前の合理的なステップとなります。

失敗しないMR開発パートナー(開発会社)の選び方

PoCを成功させ、その先の本格導入(スケール)までを見据える上で、開発パートナー(開発会社)の選定は非常に重要です。

  1. 業務理解度
    自社と同じ業種(製造業、建設業など)の「現場業務」を深く理解しているか。
  2. デバイス実績
    HoloLens 2や関連するクラウドサービス(Azureなど)を用いた「産業用MR」の開発実績が豊富か。
  3. 提案力
    PoCの段階から現場の課題に寄り添い、業務フローの改善まで踏み込んだ提案をしてくれるか。

MR開発は、単なるアプリ開発ではなく「現場の業務改革」そのものです。
価格だけで選ぶのではなく、自社の「現場」を深く理解し、二人三脚で課題解決に取り組んでくれるパートナーを選ぶことが、失敗を避けるための最重要事項となるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

MR(複合現実)開発について、VR/ARとの違いから、HoloLens 2導入の総額費用、用途別の事例、そして基本的な進め方までを解説してきました。

MR開発は最低でも数百万円規模の投資が必要となる一方で、製造業や建設業が直面する「技術継承」や「生産性向上」といった深刻な現場課題を解決する強力なポテンシャルを持つことをご理解いただけたかと思います。

弊社では、MRを始めとするXRコンテンツの受託開発を行っております。
作業現場へのMR技術の導入にご興味がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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