高齢化社会の進展により、認知症は社会的・経済的にも大きな課題となっています。
その中で、VR(仮想現実)技術が認知症予防における新たな可能性として注目されています。
記憶力向上や認知機能維持を目指したトレーニングが、医療機関や介護施設で導入され始めています。
本記事では、VRを活用した認知症予防の効果や具体的な活用事例、導入時の課題と未来展望について最新情報をもとに解説します。
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|認知症の現状と課題
認知症は世界的に深刻な課題であり、特に高齢化が進む日本では重要な社会問題となっています。
ここでは認知症の基本的な概要と課題について解説します。
日本の認知症における現状
認知症は、単なる「もの忘れ」とは異なり、脳の病気や障害などによって記憶、判断力、実行機能といった認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障をきたす状態の総称です。
日本は超高齢社会を迎え、認知症患者数が急速に増加しています。
2012年時点で65歳以上の高齢者の約7人に1人(約462万人)が認知症でしたが、2025年には約5人に1人(約700万人)に達すると推計されています。
これは、もはや他人事ではなく、誰もが関わる可能性のある社会的な課題です。
認知症は、ご本人やご家族の生活に大きな影響を与えるだけでなく、医療費や介護費の増大といった経済的な負担も深刻化させています。
2015年にはその社会的コストが15兆円を超え、今後も増加が見込まれています。
こうした状況を受け、国は「共生」と「予防」を二本柱とした施策を推進しています。
認知症になっても安心して暮らせる社会を目指すと同時に、発症リスクを低減する「予防」の重要性がこれまで以上に高まっています。
生活習慣病の管理や社会参加とあわせ、VRのような新しい技術を活用した予防法にも大きな期待が寄せられているのです。
認知症治療と課題
認知症の治療には薬物療法やリハビリテーションが用いられますが、効果や対応範囲には限界があります。
その課題を掘り下げて解説します。
認知症治療の中心は薬物療法ですが、現行の薬剤では進行を抑えることはできても、根本的な治癒は困難です。
例えば、アルツハイマー型認知症ではアセチルコリンエステラーゼ阻害剤が使用されますが、症状を一時的に緩和するに留まります。
また、リハビリテーションでは認知機能の維持や向上を目指しますが、効果には個人差が大きいのが現状です。
さらに、医療現場ではスタッフの不足や患者数の増加に伴い、きめ細やかなケアが難しいという課題も挙げられます。
これらの背景から、予防に重点を置いた新たなアプローチが求められています。
|認知症に対するVRのメリット
VR(仮想現実)技術は、認知症予防やケアの分野で大きな可能性を秘めており、主に5つのメリットが挙げられます。
安全な環境で挑戦できる
仮想空間なら、現実では難しい外出や運動も転倒などのリスクなく安全に体験できます。
これにより、身体機能と認知機能の両方にアプローチが可能です。
高い没入感と意欲向上
360°広がるリアルな映像と音響は、利用者を夢中にさせます。
ゲーム感覚で楽しめるため、単調になりがちなリハビリやトレーニングにも意欲的に取り組めます。
回想法の質の向上
昔の街並みや思い出の場所をVRで再現することで、過去の記憶を鮮明に呼び覚ます「回想法」をより効果的に行えます。
これは、脳を活性化させ、精神的な安定にも繋がります。
認知機能の個別トレーニング
注意力、記憶力、空間認識能力など、低下した特定の認知機能に合わせたプログラムをVRで組むことが可能です。
利用者のレベルに応じた、効果的な個別トレーニングが実現します。
ストレス軽減とQOL向上
美しい自然の風景や旅行体験は、不安や抑うつ気分を和らげる効果が期待できます。
行動が制限されがちな方のQOL(生活の質)向上に大きく貢献します。
|認知症予防のVR技術の事例
日本国内でもVR技術は、認知症の「予防」から「共生」までを支える重要なツールとして急速に進化を遂げています。
単なる目新しさだけでなく、科学的根拠に基づいた多様なサービスが生まれ、医療・介護現場から社会全体へとその活用範囲を広げています。
1. 楽しみが継続に繋がる「運動・認知トレーニング」

出典:https://www.silvereye.jp/service/rehavr.php
認知症予防の基本である運動習慣と知的活動の維持は、しばしば継続が難しいという課題を抱えます。VRはこの課題を「楽しさ」で解決します。
株式会社MEDITAOの「RehaVR(リハブイアール)」では、VRゴーグルとペダルを使い、世界中の観光地や思い出の場所をサイクリングする体験を提供します。
利用者は安全な室内で転倒のリスクなく、美しい景色を楽しみながら自然に体を動かすことができます。
これは「デュアルタスク(二重課題)」と呼ばれる、運動と認知課題を同時に行う効果的なトレーニングです。
景色を見て「きれいだ」と感じたり、次はどこへ行こうかと考えたりすること自体が脳への良質な刺激となり、身体機能と認知機能の双方の維持・向上を目指します。
単調なリハビリとは一線を画す高い没入感が、利用者の意欲を引き出し、継続利用に繋げています。
2. 個人の記憶に寄り添う「回想法セラピー」

出典:https://moov.ooo/article/5eb9f8991b05ee0697dd2862
「回想法」は、昔の思い出を語り合うことで脳を活性化させ、精神的な安定を図る心理療法です。
VRはこの回想法を、かつてないほどリアルで個人的な体験へと昇華させました。
株式会社リプロネクストの「LookBack VR」は、利用者のためだけにオーダーメイドのVR空間を制作します。
Googleストリートビューなどを活用し、若い頃に住んでいた家、通い慣れた商店街、家族と旅行した場所などを360度の映像で再現。
写真や地図では得られない「その場所にいる」感覚は、記憶の扉を開く強力な鍵となります。忘れていたはずの情景や感情が鮮明に蘇ることで、無気力状態(アパシー)の改善や、介護者・家族との豊かなコミュニケーションの創出に貢献します。
これは、単なる記憶の想起に留まらず、その人自身の人生を肯定し、尊厳を支えるケアと言えるでしょう。
3. 社会の「共感」を育む、当事者視点体験
認知症を持つ方々と共生する社会を実現するには、周囲の人々の深い理解が不可欠です。
しかし、ご本人が見ている世界や感じている不安を言葉だけで理解するのは容易ではありません。
この課題に対し、株式会社シルバーウッドの「VR認知症」プロジェクトは、当事者の視点を社会に届ける画期的なソリューションを提供しています。
このVRコンテンツを体験すると、レビー小体型認知症の方が見るリアルな幻視や、空間が歪んで見える見当識障害、周囲の音が正しく認識できない感覚などを、自分自身の体験として感じることができます。
この強烈な体験は、「なぜ大声を出すのか」「なぜ徘徊するのか」といった行動の背景にある不安や混乱を直感的に理解させ、一方的な対応ではなく、相手に寄り添うケアの重要性を教えてくれます。
現在では介護施設や医療機関だけでなく、金融機関やスーパー、警察、自治体など、社会のあらゆる場面で導入が進んでおり、認知症フレンドリーな社会を築くためのインフラとなりつつあります。
|まとめ
VR技術は認知症予防において革新をもたらし、記憶や認知機能の向上を促進する効果が確認されています。
医療現場や介護施設での導入事例は増加しており、患者や家族、介護者に多くのメリットを提供しています。
しかし、コストや技術的課題の克服が求められる一方、AIとの連携やデバイスの進化により、より効果的で身近なケアが可能になると期待されています。
今後もVR技術の発展と普及が、認知症ケアの新たなスタンダードを確立する鍵となるでしょう。
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