建設現場における深刻な人手不足や安全管理の課題解決策として、昨今VR(仮想現実)技術への注目が急増しています。

本記事では、建設業におけるVR導入のメリットや注意点といった基礎知識から実際の導入事例まで徹底解説しますので是非最後までご覧ください!

|建設業におけるVRとは?

建設業におけるVR(Virtual Reality:仮想現実)とは、コンピューター上で作成された3Dデータを活用し、建設現場や完成予定の建築物を仮想空間内に再現する技術のことです。

これまでの建設プロセスでは、2次元の図面をもとに完成形をイメージする必要があり、関係者間での認識のズレが生じやすいという課題がありました。

しかし、VR技術を導入することで、以下のことが可能になります。

完成イメージの共有: 設計段階で建物の内部を歩き回るような体験ができ、施主や設計者間での合意形成がスムーズになる。

安全教育の高度化: 墜落や挟まれなどの労働災害を、現実には危険を冒すことなくリアルに疑似体験できる。

施工計画の検証: 重機の配置や部材の搬入経路などを仮想空間でシミュレーションし、手戻りを防ぐ。

特に近年では、BIM(Building Information Modeling)などの3DモデルデータとVRを連携させることで、単なる「映像視聴」ではなく、情報を伴った「シミュレーション」として活用が進んでいます。

建設DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する上で、VRは現場の生産性と安全性を高める重要なツールとして位置づけられています。

BIMとは?CAD・CIMとの違いや導入メリット、注目される理由をわかりやすく解説
BIMとは?CAD・CIMとの違いや導入メリット、注目される理由をわかりやすく解説

|建設業がVRを導入するメリット

建設業においてVRを導入するメリットは、主に「安全教育の質の向上」「合意形成の円滑化」「手戻りの削減」の3点に集約されます。

これまで現場での経験や勘に頼らざるを得なかった情報を可視化・体験化することで、属人化を解消し、業務プロセスを劇的に改善できるからです。

安全教育の質の向上(事故の疑似体験)

従来の座学やビデオ講習では伝わりにくい「現場の恐怖」をリアルに体験できます。

高所からの墜落や重機との接触といった労働災害をVRで我が身として感じることで、作業員の安全意識が大幅に向上し、事故発生率の低減につながります。

合意形成の円滑化(プレゼンテーション効果)

施主や発注者に対し、図面やパースだけでなく、VR空間でのウォークスルーを提供できます。

空間の広さや天井の高さ、日当たりなどを体感してもらうことで、完成イメージの認識齟齬(そご)をなくし、早期の合意形成が可能になります。

手戻りの削減とコストダウン

施工前にVR空間で配管やダクトの干渉チェック、メンテナンス経路の確認を行えます。

設計ミスや不整合を着工前に発見できるため、現場での手戻り工事や追加コストの発生を防ぐことができます。

このように、VRの導入は単なる技術的な先進性を示すだけでなく、コスト削減や安全確保といった建設業が抱える本質的な課題解決に直結します。

|建設業がVRを導入する際の注意点

建設業におけるVR導入は多くのメリットをもたらしますが、一方で導入前に把握しておくべきコスト面や運用面の課題も存在します。

これらを事前に理解し対策を講じなければ、導入しても現場で活用されないという事態になりかねないからです。

初期費用と運用コストがかかる

VRを快適に動作させるためには、高性能なPCや専用のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)、そしてVRコンテンツを作成するためのソフトウェアが必要です。

また、BIMデータなどをVR用に変換・調整する制作費や、機器のメンテナンス費用も発生します。

予算計画においては、導入費だけでなくランニングコストも含めた費用対効果(ROI)の検討が不可欠です。

「VR酔い」への対策が必要

個人差はありますが、乗り物酔いのように気分が悪くなる「VR酔い」が発生することがあります。特に長時間の安全教育やシミュレーションでは注意が必要です。

適度な休憩を挟む、フレームレート(映像の滑らかさ)が高い高品質な機材を選定するなど、利用者の体調に配慮した運用ルールを定める必要があります。

データ作成の手間と専門スキル

既存のCADデータやBIMデータをそのままVRで見られるわけではありません。

VR空間でスムーズに動くようにデータを軽量化したり、マテリアル(質感)を設定したりする作業が必要です。

社内に3Dデータを扱える人材がいない場合、育成コストがかかるか、外部への委託が必要となります。

VRはあくまでツールであり、導入するだけで課題が解決するわけではありません。

「誰が」「いつ」「何のために」使うのかを明確にし、現場の負担にならない運用フローを構築することが成功の鍵です。

|建設業のVR活用例

ここからは、実際に建築業でVRを導入している企業の事例をご紹介します。

坂田建設

坂田建設では、現場の労働災害ゼロを目指し、VRを活用した「体感型安全教育」を積極的に行っています。

【活用のポイント】

自社で高額なシステムを開発するのではなく、VR機器とコンテンツをレンタル形式で導入することで、コストを抑えながら質の高い教育を実現しています。

【具体的な効果】 従業員はVRゴーグルを装着し、「土砂崩れ」や「足場からの墜落」といった現場特有の事故を被災者視点でリアルに体験します。

従来のビデオ講習とは異なり、「明日は我が身」という強い危機感を持つことができるため、現場での安全意識が格段に向上しています。

ラストマイルワークス

ラストマイルワークスは、建設テック企業として、仮想空間共有プラットフォーム「comony(コモニー)」などを提供し、建設業界のDXを支援しています。

【活用のポイント】

建築や不動産の空間をデジタル化(デジタルツイン)し、世界中どこからでもアクセス可能なバーチャル空間を構築しています。

【具体的な効果】

設計段階の建築デザインをVR空間で共有することで、施主や設計士がリアルタイムに空間内を移動しながら打ち合わせを行えます。

これにより、図面だけでは伝わらない空間の広がりや奥行きを直感的に理解でき、スムーズな合意形成と顧客満足度の向上を実現しています。

奥村組

奥村組では、設計・施工の品質向上を目的に、BIM(3次元モデルデータ)とVRを連携させた高度なシミュレーションを行っています。

【活用のポイント】

構築したBIMモデルをVR空間に原寸大で投影し、実際にその場にいるかのような感覚で施工手順や納まり(部材の接合状況)を確認しています。

【具体的な効果】

鉄骨や足場の配置を実寸大で確認することで、図面上では発見が難しい干渉箇所や作業スペースの問題を着工前に特定できます。

また、一般市民向けのイベントでもVR体験ブースを設け、建設業の魅力を発信するPRツールとしても活用しています。

大林組

大林組は、若手現場監督や検査員のスキルアップを目的に、VRを活用した教育システム「VRiel(ヴリエル)」を開発・運用しています。

【活用のポイント】

建設現場の配筋(鉄筋の配置)状況をVR空間に再現し、そこに含まれる「不具合」をゲーム感覚で発見させるトレーニングシステムです。

【具体的な効果】

熟練者が持つ「違和感に気づく力」を、失敗が許されるバーチャル空間での繰り返し訓練によって効率的に習得できます。

現場でのOJT(実地訓練)が難しくなる中、品質管理能力の均一化と向上に大きく貢献しています。

積木製作

積木製作は、建設業界向けに高品質な「安全体感VRトレーニング」コンテンツを制作・提供している企業です。

【活用のポイント】

高精細なCG技術を活かし、建設現場のリアルな環境と、そこで起こりうる災害を忠実に再現した汎用的なVR教材を多数開発しています。

【具体的な効果】

多くの建設会社が、同社の「建設現場シリーズ(可搬式作業台編、開口部編など)」を導入しています。

自社でゼロからコンテンツを作る予算がない企業でも、プロ品質のVR教材を手軽に導入でき、業界全体の安全教育レベルの底上げを支えています。

|まとめ

建設現場における「人手不足」や「安全管理」といった課題に対し、VRは単なる仮想体験にとどまらず、実質的な業務改善ツールとして定着しつつあります。

これからVR導入を検討される企業様は、まずは「安全教育」や「施主プレゼン」など、解決したい課題を一つに絞り、スモールスタートで取り組んでみてはいかがでしょうか。