弁護士や司法書士、社会保険労務士や税理士といった専門資格を必要とする職業。

末尾に「士」がつくことからこれらの職業に就く人たちは士業と総称されます。

国家資格などの試験に合格しなければ就けないことから、難易度も高く社会的な信用も一般的には高い傾向にあるといえるでしょう。

法律や税務、登記手続きといった各分野のスペシャリストである士業は人気も高く、これから目指そうと考えている方も多いはずです。

しかし、2023年現在はAI技術の進歩がこれまでにない速度で進んでいます。

そういった状況を背景に、これまで各分野の専門家として活躍してきた士業の存在に変化が起きるといわれているのです。

本記事では、AIの台頭によって代替される可能性があるといわれる士業を紹介、今後の対策について解説します。

士業だけではなく様々な職業に影響を与えつつあるAI。

本記事を参考に、AIを仕事にうまく活用する術を学んでみてください。

|AIによって代替される可能を持つ士業7選

AIは膨大なデータを処理し、分析する能力に長けています。

この能力は人間では到底真似できないレベルであり、文字通り「人間離れ」しています。

過去、オックスフォード大学と野村総合研究所が行った研究データによると、AIによって代替される可能性の高い職業として、士業の3つが90%以上という高い数値を示しました。

その他にも80%、もしくは70%以上の可能性を含む士業も存在しており、これまで国家資格の顔とも呼べる存在だった士業の存在が危ぶまれているのです。

こちらでは、AIによって代替される可能性を持つ以下の士業それぞれの業務について解説します。

  • 行政書士
  • 税理士
  • 弁理士
  • 公認会計士
  • 社会保険労務士
  • 司法書士
  • 弁護士

行政書士

行政書士とは、行政書士法に基づく国家資格を有する人物であり、主に行政手続きに関する相談や書類作成などを担当します。

遺言書の作成や遺産分割に必要となる協議書の作成など、生活に関する手続きから雇用、契約書といった書類まで取り扱う業務は多岐にわたります。

しかし、こういった複雑な処理、書類作成といった業務はAIが最も得意とする分野でもあるのです。

高速かつミスのない処理によって、これまで行政書士が担当していた作業はAIによって代替される可能性があると指摘されています。

税理士

税理士は税金に関する業務を担当する職業です。

個人事業主や企業に対して、税務相談を受けアドバイスなどを実施します。

また、財務書類の作成や帳簿記入といった会計業務から、確定申告に必要となる書類の作成までも行います。

税務に関する業務は既に、会計ソフトが各企業から販売されており、専門知識を必要とすることなく誰でも気軽に実施できる状況にあります。

こういった状況も背景に、今後AIの台頭によって税金に関する業務は税理士を必要とすることなく進められると指摘されているのです。

弁理士

弁理士とは、「知的財産」に関する専門家です。

知的財産とは「特許」や「商標」といった分野を指しており、具体的にはアイデアや絵画、発明やロゴといった様々な創造物の権利を保護することを目的としています。

特許庁の審査に対する出願内容を補正したり、最適な権利を出願するなど各種手続きを弁理士が行います。

しかし、業務中に必要となる商品名やロゴといった検索業務はAIが得意とする作業です。

こういった作業内容を背景に、AIによる代替が指摘されています。

公認会計士

公認会計士とは、税務に関する業務の代理や書類の作成などを担当する職業です。

また、会計業務やコンサルティングなどに携わることもあり、監査や会計の専門家として幅広い業務を実施します。

経営戦略から組織再編といった、経営の根幹に関する相談などを受けることもあり、企業にとっても重要なポジションを担います。

しかし、定められたルールに沿って作業を進めることはAIが得意とする分野です。

こういった点を背景に、今後AIによる代替が指摘されています。

社会保険労務士

社会保険労務士とは、年金相談や労働社会保険の手続きといった業務を担当する職業です。

企業における採用から退職といった各ステージにおける相談に応じるなど、業務の幅は非常に広いといえます。

しかしながら税理士同様、すでに人事労務管理ソフトといったサービスが普及し始めています。

その流れが続き、今後AIによる優れたソフトが登場すると需要が低下する可能性が指摘されているのです。

司法書士

司法書士とは、法律に関する手続きを専門に実施する職業です。

一般的には、不動産の売買や賃貸契約時に行う「不動産登記」においてお世話になることが多いかもしれません。

この他にも、相続や債務整理、企業法務といった幅広い業務を司法書士は担っています。

しかし、現在マイナンバーカードによるデジタル化によって、登記手続きを誰でも簡単に行いやすくなりつつあります。

こういった状況でAIによるサービスが浸透した場合、司法書士が必要なくなる可能性が示唆されているのです。

弁護士

士業の中でもドラマやアニメの題材になることも多く、最も有名といえるかもしれない弁護士。

大きく分けて「民事事件」と「刑事事件」に分かれるトラブルに対応し、事件に関わる一方の代理人となって解決に向けて奔走します。

過去の事例などから判決に向けて動く弁護士ですが、AIであれば膨大な凡例から瞬時に適した例を導き出し、感情に左右されない判断を即座に行えます。

訴訟の過程で必要になってきた時間がAIによって短縮できるとなると、これまでかかってきた費用を大幅に削減できるかもしれません。

こういった可能性を背景に、AIによって代替される可能性が指摘されているのです。

|AI時代に士業が生き残るための対策は?

7つの士業について、AIによって代替される可能性を解説しました。

それでは、今後本格的に訪れるAI時代において、士業が生き残るための対策はあるのでしょうか。

こちらでは、以下の項目に沿って士業が今後存続し続けるための方法を解説します。

  • コンサルティング業務に注力する
  • AIを積極的に活用する

コンサルティング業務に注力する

コンサルティング業務とは、「経営等の方針に対して相談を受け、指導を行う」作業を指します。

多くの士業は大小問わず企業の経営者層との繋がりを持つ点が大きな強みといえます。

そういった顧客の課題に対して寄り添い、課題解決に向けて奔走する存在として重宝されれば、AIによる代替を回避することに繋がるはずです。

そのためにはこれまで以上に対話技術や解決能力といった点が求められるでしょう。

しかし、一度出来た信頼や結びつきは強力な存在として今後もあり続ける可能性が高いのです。

AIを積極的に活用する

AIによる代替を防ぐために、逆説的ですがAIを積極的に活用するという手も考えられます。

AIを士業自身が活用することで、士業による高い専門性とスキルに加え、確実かつ迅速な処理が実現するのです。

受け持つ顧客の数をこれまで以上に増やすことも可能になりますので、価格を下げながらの収益確保も実現できるかもしれません。

集客勝負に望み、価格競争に打ち勝つことで今後も重宝される存在として存続できるのです。

|人間にしか解決できない問題が必ずある

AIは人間には到底真似できない速度で複数の情報を処理し、正確な分析結果を導き出します。

しかし、全ての業務がAIに代替されるかと言えば、決してそうではありません。

士業の業務は人間社会の悩み、人間社会だからこそ発生する課題を解決することを目的にしています。

そのため、人対人でしか共感、解決出来ない問題が必ず存在するといえます。

これまでインターネットなど、新たなサービスの登場によって士業は変化を迫られてきました。

AIの台頭もその中の一つであり、うまく活用することで現在の活動の幅を大きく広げるチャンスに繋がるでしょう。

新技術を活用しつつ、人間にしか行えない業務を磨くことで、今後も士業の多くはこれまで通りの活動を進められるはずです。

|まとめ

AIによって代替される可能性のある士業7つに加え、今後生き残るための可能性について解説しました。

現在AI技術の発展は著しく、今後もその存在は大きくなり続けることが考えられます。

しかし、人間にしか出来ない業務、理解できない問題などは今後も間違いなく存在し続けます。

AI技術をうまく活用しつつ、需要の高い士業であり続けるために、常に最新情報に注目しながら知識をアップデートしていきましょう。