スポーツ観戦をより楽しく、公平なものにするために、さまざまなテクノロジーが導入されています。
その代表的なもののひとつが、ボールの軌道を可視化する「Hawk-Eye(ホークアイ)」です。
スポーツ好きならば一度は聞いたことがあるかもしれません。
この技術は、テニスやサッカーなどの様々なスポーツで、審判をサポートする役割を担うものです。
今回の記事では、Hawk-Eyeの基本的な仕組みや導入事例を紹介しますので、スポーツ好きの方は是非ご一読くださいね。
目次
|Hawk-Eye(ホークアイ)とは?
ホークアイは、ロケットの弾道研究を行っていた科学者であるポール・ホーキンス氏によって、2001年に誕生しました。
これは、例えばテニスにおいて、テニスコートの上空に配置された高速カメラシステムがボールの軌道をリアルタイムで捉え、そのデータを3Dイメージに変換する審判補助システムです。
2006年のテニス世界大会で、選手が審判の判定に異議を申し立てる際に使用したことで注目を浴びました。
この技術の名前は会社名でもありますが、審判補助技術全般を指す言葉でもあります。
現在、世界中の多くのスポーツイベントで約25競技、90か国、500以上のスタジアムで使用されており、スポーツの公平性とエンターテインメント性を向上させています。
|ホークアイイノベーションズとは
ホークアイイノベーションズは、ソニー株式会社のスポーツ事業の一部として運営されており、日本国内では「ソニーPCL」が「ホークアイ」のサービスを提供しています。
元々1999年に英国で設立され、映像処理、映像再生、映像配信などの分野で強力な専門知識を持つ企業であり、2011年ソニーグループに買収されました。
ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)システムの開発を行い、さまざまな競技で採用されています。
|ホークアイが提供しているサービス
提供しているサービスは以下の通りです。
- SMART
- TRACK
- INSIGHT
それぞれについて詳細を説明しましょう。
SMART
これは、Synchronised Multi-Angle Replay Technology=SMARTと略されます。
この技術は、ビデオキャプチャ、レビュー、クリッピング、そして映像の配信などに幅広く活用されています。
SMARTは、スポーツイベント中に複数のカメラからの映像を、タイムスタンプを使用して同期させる仕組みを持っています。
よって、試合中のプレーを異なるアングルから同時に観察し、高品質なリプレーを提供することが可能です。
例えば、サッカーのVARやラグビーのTMO(Television Match Official)のように、審判判定を補助するためや、視聴者に試合のハイライトを提供するためにも利用されています。
TRACK
これは、パフォーマンストラッキング、ボールトラッキング、およびオブジェクトトラッキングのために使用される光学追跡およびカメラ補正技術を指します。
スポーツ分野において選手やボール、あるいは他のオブジェクトの動きを高精度で追跡し、記録することが可能です。
光学的なセンサーシステムとカメラ補正技術を組み合わせることで、試合中の動きや位置情報を正確に捉え、データとして提供します。
この技術は、競技の分析に貢献するだけでなく、審判員の正確性をサポートします。
例えば、サッカーやラグビーではボールがゴールラインを越えたかどうかを確認する「ゴールラインテクノロジー」、テニスやクリケットではボールの「イン」または「アウト」判定に活用されています。
INSIGHT
このサービスは、データの収集、保管、集約、配信、および視覚化の機能を提供します。
さまざまなスポーツイベントから収集されるデータを集約して一元管理し、これには試合中の選手やボールの位置情報、プレーの統計、試合の進行状況など、多くの情報を含みます。
これをヒートマップ、3Dアニメーション、グラフなどを活用して、データをわかりやすく表現します。
コーチや選手が試合の戦術を洗練させたり、トレーニングを最適化したりするのに役立つサービスです。
|ホークアイの導入事例
ホークアイは既にあらゆるスポーツにおいて導入されています。
こちらでは各競技で、この最先端技術がどのように活用されているのかを具体的に説明していきます。
テニス
テニスでは、試合中のボールのライン判定において、ホークアイが重要な役割を果たしています。
非常に高精度で行われたライン判定映像をリアルタイムで提供し、誤差は2mm以内に収まります。
これは試合の公平性を向上させるだけでなく、視聴者にエキサイティングな瞬間を提供することに繋がります。
さらに、新型コロナウイルスのパンデミックに伴い、密を避けるためにもホークアイが活用されました。
例えば、全豪オープンや全米オープンでは、審判員の数を削減し、主審だけを配置する形式で試合が運営されています。
ウィンブルドンなどのトーナメントでは、全てのコートでホークアイが利用可能で、テニス界において大きな成功を収めていると言えるでしょう。
サッカー
ホークアイは、サッカーW杯においてVARシステムを提供しており、異なるアングルからの映像を即座に評価できるよう支援しています。
試合中に確認が必要な場面が生じると、多数のカメラ映像から最適なアングルを選択し、ビデオアシスタント審判が詳細なチェックを行います。
2022FIFAワールドカップの日本対スペイン戦において、ゴールラインでの判定にこのテクノロジーが貢献したことは記憶に新しいでしょう。
W杯の試合では、会場に設置された42台の放送用カメラを活用し、8台のスーパースローモーションカメラと4台のウルトラスローモーションカメラも導入されています。
この技術は、オフサイド判定に大きな進歩をもたらしたと言えるでしょう。
野球
野球においては、東京ヤクルトスワローズが日本一に貢献したプレー分析サービスとして導入されました。
このテクノロジーは、MLB球団を含む世界中で広く普及しており、日本の球界における先進的な一歩と言えるでしょう。
選手とボールの位置情報を高精度に取得し、投球データの解析や選手のフォーム分析から、ケガ予防やパフォーマンス向上の戦略策定に貢献しています。
このデータの管理と解釈にはデータアナリストが欠かせず、プレー分析の重要性が高まっています。
さらに、野球ファンと選手との新しいコミュニケーション手段となっており、選手の実績を分析してSNS上で選手とファンがデータに基づいて対話するサービスも導入しています。
ラグビー
ホークアイは、審判判定支援サービスとしてTMOを提供しています。
このサービスは、複数のTV中継用カメラで撮影された試合映像を同期再生し、主審の難しい判定を支援するもので、サッカーのVARと同様のコンセプトです。
また、ラグビーにおいては選手の脳振とうの確認を支援する「HIA(ヘッド・インジャリー・アセスメント)」も提供しています。
HIAでは医師とホークアイのスタッフが映像を見て状態を確認し、必要なら選手を一時退出させる判断材料としても役立っています。
これにより、選手の安全確保と公正な試合運営が守られるとともに、ラグビーファンが安心して試合観戦できるための一役を担っていると言えるでしょう。
|まとめ
今回ご紹介してきたように、ホークアイはスポーツ業界で革命をもたらすテクノロジーとして注目されています。
この記事では、その概要と導入事例をご紹介してきましたが、スポーツの公正さ、安全性、そしてスポーツの魅力を向上させる重要な役割を果たしていることが分かりました。
ホークアイのテクノロジーは、スポーツの発展に貢献し、選手とファンにとって新たな世界観を提供しています。
今後もさまざまな競技での導入が期待され、スポーツの未来に革命をもたらすでしょう。