最近、ゲームやエンターテイメントなどの領域を中心に「XR(クロスリアリティ)」といった言葉を耳にする機会が増えてきました。

しかし、VR・AR・MRといったよく似た言葉との違いが分かりづらいこともあるのではないでしょうか。

この記事では、「XR」とは? といった基本的な解説から、VR・AR・MRのような類似した技術の違いやそれぞれの活用事例、今実際にどのようなイベントが開催されているのかを紹介させていただきます。さらにXR業界は今後どう発展していくのか、気になるところをお話いたします。

|エンタメ業界でも注目されるXRとは?

そもそも「XR(X Reality、Extended Reality)」とは、『仮想世界と現実世界を融合し、新たな体験をつくり出す』技術の総称です。

VR、ARをはじめ、MR、SRなどの技術で構成されます。

VRとARを組み合わせたゲームや、ARとMRとの間にあるようなコンテンツなど、各技術が融合しているサービスも「XR」と呼ぶことができます。

「XR(Cross Reality)」とは?根底を支える4つの技術と共に解説
「XR(Cross Reality)」とは?根底を支える4つの技術と共に解説

XRを構成する技術は4つ

XRが「VR」、「AR」、「MR」、「SR」を融合させた技術とお話しました。

VRはMetaのCMや報道など、メディアでもよく耳にしますが、その他の技術は意外となじみが少ないのではないでしょうか。

XRの魅力を知る上でそれぞれの技術の特徴をつかんでいただきたいと思います。

AR(拡張現実)

「AR(拡張現実)」は、Augmented Reality (オーグメンテッドリアリティ)の略で、現実空間に仮想世界を重ねて投影して見せる技術です。

例としては、「ポケモンGO」です。

このゲームはスマートフォンのAR機能を使って現実世界にポケモンを表示するゲームです。

駅や公園にはアイテム補給や対戦ができるスポットがあり、プレイヤーは外を歩き回ってポケモンを探して対戦を楽しみます。

ゲームのリリース直後から、プレイヤーが駅や公園を埋め尽くし、社会現象ともなりました。

ポケモンGOの成功は、AR技術の可能性や、人々が新しい形で社会に参加して、コミュニケーションをとることができるという可能性を示した一例と言えます。

AR(拡張現実)とは?活用シーンからVR、MRとの違いまでわかりやすく解説
AR(拡張現実)とは?活用シーンからVR、MRとの違いまでわかりやすく解説

VR(仮想現実)

「VR(仮想現実)」は、Virtual Reality (バーチャルリアリティ)の略で、仮想世界を現実世界のように体験できる技術です。

通常、専用のデバイス(ヘッドマウントディスプレイ)を通じて、CGや360度カメラによって作成された映像を体験するもので、高い臨場感と没入感が得られることが特徴です。

VRと言えば報道やCMでおなじみ、Meta社のQuest2がイメージされるのではないでしょうか。

ヘッドセットを装着してメタバースと言われる仮想空間をアバターの姿で活動したり、ゲームで遊んだりすることができます。

またYouTubeなどの3D映像を利用した疑似体験があります。

その他、住宅の内覧、旅行体験、ファッションショーなどもすでにサービスとして始まっています。

時間や空間の制限を受けないので、私たちの身近に徐々に増えている技術です。

VR(仮想現実)とは?ARやMRとの違い、仕組み、メリット、できることをわかりやすく解説!
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MR(複合現実)

「MR(複合現実)」は、Mixed Reality (ミックスドリアリティ )の略で、現実空間と仮想世界を融合させて見せる技術です。

AR(拡張現実)との区別が難しいですが、ARは現実空間を主体としているのに対し、こちらは現実空間と仮想的なものがリアルタイムで影響し合い、新たな空間をつくりだします。

たとえばARでスマートフォン上に現れたキャラクターを眺めることはできても、近づいたり触れたりすることはできません。

しかしMRならカメラやセンサーを駆使することで、それぞれの位置情報などを細かく算出し、たとえばキャラクターの後ろ側に回り込んだり、近づいて自由な角度から見たり、目の前の空間にさまざまな情報を3Dで表示させ、そこにタッチし入力もできるようになります。

現実世界と仮想世界をより密接に融合させ、バーチャルな世界をよりリアルに感じることができるのがMR(Mixed Reality)です。

MR(複合現実)とは?VR・AR・XRとの違いとビジネス別の活用事例をわかりやすく解説!
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SR(代替現実)

「SR(代替現実)」は、Substitutional Reality (サブスティチューショナルリアリティ) の略で、過去の映像を現実世界に重ね合わせて見せることで、過去にあった出来事があたかも今目の前で起こっているかのように見せる技術です。

ヘッドマウントディスプレイを装着して体験します。

SRは人のメタ認知の究明や心理療法としての側面があります。

現実と非現実の区別がつかない体験ができるシステムなので、デジタルコンテンツとの連携によって新しいエンターテインメントとして活用できます。

SRを利用することで、過去を現実だと錯覚させる映像表現は新たなビジネスにもつながるでしょう。

現在、SRを利用した舞台作品が公開されており、SRの普及によって新たな舞台体験が提供されることが期待されます。

SRとは?AR・MR・VRとの違いや注目のSRアプリをご紹介!
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|エンタメにXRを活用するメリット

エンターテインメントにXRを活用することで、どのようなメリットがあるのでしょうか?大きく2つあります。

・物理的な制限なく高い再現性で空間を構築できる

・リアルな体験を提供できる

ということです。

必要性や目的に応じてメリットがうまく活かされ、エンタメに付加価値をつけます。

それぞれ具体的な使用ツールや事例を交えてお話します。

物理的な制限なく高い再現性で空間を構築できる

ユーザーは、時間や場所の制約を受けず、VRゴーグルさえあればどこでもリアルに近い体験ができますし、リアルな写真や動画だけでなく実在しないバーチャルな物も表現できます。

ファンタジーの世界を展開するだけでなく、開発前の商品や完成前の建造物などを一足早くユーザーに見せるといった幅広い活用が可能です。

また、VRはスポーツトレーニングにも活用されています。

東北楽天イーグルスは、VRトレーニングシステムを導入しており、VRをつけると打席から見た空間が投影され、相手球団の投手の投球を体験できます。

医療分野においてVRは、研修目的として使われ、スタンフォード大学では、子供の心臓の機能や疾患を学ぶための「スタンフォード・バーチャルハート」が用いられており、研修生は心臓がどう動くのかを見たり、内部を観察したり、血液の循環を確認したりできます。

リアルな体験を提供できる

紙の映像や、テレビなどの動画ではユーザーの目に届けられる範囲は限定されています。

VRでは360°の幅広い世界を届けられるため、ユーザーはよりリアルに近い体験が可能になります。

世の中には「体験してみないとわからない」「判断がつかない」という場面が数多くあり、購買活動の場もその一つです。

XRを購買体験に活用することで顧客に現実味のある経験を提供できます。

「エンターテイメント」と言うと遊びを強くイメージしますが、中には学校教育や福祉に関わることもあります。

コロナ禍で修学旅行を断念した学校の一部では、VR技術を用いて旅行や宿泊を行う「バーチャル修学旅行」を取り入れました。

さらには高齢のため思うように移動できない高齢者に向けたVR旅行サービスが人気を集めており、今後も貴重なエンターテイメントになることは間違いないでしょう。

|XR×エンタメのイベント事例9選

ここまでXRに含まれる4つの技術(AR、VR、MR、SR)と、それらを組み合わせて得られるメリットについて説明させていただきました。

スポーツ、医療、観光と、とても身近な使われ方に、ご自身の周りにも応用できるのではないか、と感じられたかもしれません。

ここでは、これらの技術とメリットが、実際のイベントでどの部分にどのように活かされたのか、イベント名をあげて9つの事例を紹介していきましょう。

【2023年】XR総合展 夏・秋

出典:https://www.xr-fair.jp/summer/ja-jp.html

あらゆる分野のVR・AR・MR技術が一堂に出展し、XR導入を検討している製造業、建築、不動産、メディア・エンターテイメント、企業の宣伝・マーケティングなどあらゆる業界の方と直接商談できる展示会が行われます。

XR総合展の魅力は大きく2つあります。

ひとつ目は、自社のやりたい事を実現する技術を直接体験できること。

XR技術は、製造・建設・医療・エンタメなど、様々な業界で活用されていて幅広いシーンで役立つことがわかっています。

XR総合展に参加することで、実際に製品を見たり、体験することができるので、自社に適したXR技術を見つけることができるのではないでしょうか。

もうひとつは、導入事例や最新動向が分かるセミナーを無料で聴講できることです。

「XRの可能性(予定)」「メタバースは世界をどう変えるか」「XR技術によるDXの実現」をテーマに、最前線で活躍する人々が講演を行っています。

NEWVIEW FEST

出典:https://newview.design/fest2022/

「NEWVIEW」は、3次元空間での新たなクリエイティブ表現と体験のデザインを開拓する実験的プロジェクト/コミュニティーです。

多様なジャンルのアーティストと実験的作品を仕掛けて、新たな表現を社会に提示するほか、「NEWVIEW AWARDS」や、XRを総合芸術として学ぶアートスクール「NEWVIEW SCHOOL」を展開し、次世代クリエイターの発掘・育成・交流・発信を行っています。

「NEWVIEW FEST 2022」は、XRアート&エンターテイメントのイベントで、実験店舗「NEWVIEW MARKET」など、多彩なイベントが展開されました。

またキズナアイの声から生まれた #kzn がXR LIVEを披露したほか、ARコンテンツや「NEWVIEW ULTRA XR LIVE ロケーションフリーAR」も実施されました。

バーチャルマーケット2023 Summer

「バーチャルマーケット2023 Summer」は、メタバース上で開催される世界最大のVRイベントです。「ラスベガス」・「福岡」・「秋葉原」をパラリアル化した3会場を企業出展会場として展開します。

2023年のバーチャルマーケットのテーマは「Connect(繋がり)」です。

メタバースとリアルの両方を繋げるソリューションを提供し、双方が豊かになる世界を目指します。

初めての試みとして、7月29日・30日に秋葉原で「バーチャルマーケット2023リアルinアキバ」という大規模なリアルイベントが開催され、出展企業やクリエイター、VRコミュニティとのコラボ展示や、新しいメタバース体験、リアルとメタバースを連動した配信ステージ、リアルとメタバースを絡めた謎解きなどの企画が用意されるようです。

デジタル恐竜パーク

出典:https://news.microsoft.com/ja-jp/2021/12/07/211207-digital-dinosaur-park/

デジタル恐竜パークは、「いのちのたび博物館」の展示テーマの1つである恐竜が目の前に現れる、3Dホログラムの恐竜世界にトリップできる新感覚アトラクションです。

体験者がHoloLens2を装着することで、現実の公園の中に3Dホログラムの様々な恐竜が登場し、立体的な音響とともにリアルスケールの恐竜を視聴できます。

本イベントには自動運転モビリティにMRを組み合わせたアトラクションやMR単体のアトラクションもあり、常設展示場所や地域に持っていって展開する「どこでもテーマパーク」のパッケージ化も可能とのこと。

MRによるイベントは、これまでに無い新しいアトラクションとして注目されていて、この技術を継続的に活用することで、地域観光需要の創出が期待できます。

MIKU LAND 2023

出典:https://mikuland.com/

「MIKU LAND」は、バーチャルキャストにて不定期でオープンしている初音ミク公式のVRアミューズメントパークです。

ワールド内にはメタバース上ならではの多彩なイベント・アトラクションがそろい、来場者はアバター姿になって仲間と一緒にワールド内を探索しながら写真撮影やショッピングを楽しめます。

「MIKU LAND 2023 New Beginning」では、「Dearクリエイター」をテーマに、来場者一人ひとりがクリエイターとして参加できる催しが展開され、VR空間上のクラブハウスでは、人気楽曲がノンストップで流れる恒例の人気企画「ボカコレVRナイト」も開催されます。

さらに、一般クリエイターが初音ミクなどの二次創作VRグッズ(VCI)を制作して販売できるブースも設置され、来場者と交流することができます。

最先端技術XRをロマンスカーで体験できるモニターツアー

出典:https://www.odakyu.jp/news/dq40940000000v8s-att/dq40940000000v8z.pdf

特急ロマンスカー・VSE(50000形)とXR技術を掛け合わせた限定ツアーです。

VRゴーグルのパススルー機能を利用して、展望席ならではの迫力の車窓に、江戸時代から続く信仰文化「大山詣り」のXR映像を重ね合わせた、これまでにない観光体験が楽しめます。

作中では、精霊を模したキャラクターが「大山詣り」を先導して、巨大な木太刀を江戸から担いでいく様子や、滝で身を清めて奉納する姿などが描かれます。

さくらAR 2023

出典:https://www.starbucks.co.jp/cafe/sakura2023/

スターバックスの「さくらAR」は、2020と2021、2022に続き、今年で4年目。

華やかなさくらドリンクとともに、満開の桜がAR体験できる人気のコンテンツとなっています。

今回は店頭ポスターから読み込む「動きだす!ポスターAR」が追加され、合計4種類のAR体験が楽しめます。

店頭ポスターだけでなく、レシートやショッピングバッグ、店内ミニ看板からもアクセスでき、「桜咲く!さくらAR」では、目の前に満開の桜が出現し、店内でお花見気分を満喫できます。

また、「踊る!ベアリスタAR」では、春が大好きというベアリスタが登場。

軽快なダンスを披露してくれます。アプリのダウンロードは不要なので、お店やおうちで気軽にAR体験できるのが魅力です。

EXPO2020ドバイ

ドバイ国際博覧会のInstagramでは、国際博覧会を想起するようなバルーンや花火が打ち上がる演出をARで提供しています。とてもポップで楽しい印象を与えています。

スワイプすると3つの選択肢から選べるようになっており、国旗をモチーフにした2種のフェイスペイントとサングラスが楽しめます。

会場では、AR技術により膨大な種類のデジタルアートが配置され、UAEの物語や各国のパビリオンを紹介しました。

さらに会場内に遠隔地の友人がアバターとして登場し、一緒に体験をしたり、コミュニケーションを取ることができる他、報酬の宝物を見つけるための手がかりとなる関連アイテムがあったりと、ユーザーが行動するきっかけを与えていました。

世界各地のアーティストが制作したデジタルレプリカには、ダイナミックな照明やアートインスタレーションがあり、見事なスペクタクルが盛り込まれていたのです。

HoloWeen

石川県金沢市に本社を置く株式会社システムサポート(STS)は、最新の複合現実(MR)テクノロジーを広く知ってもらうために、Microsoft Base Kanazawaでハロウィンイベント『HoloWeen』を開催しました。

参加者は、STSが制作したMRコンテンツと、金沢大学との共同研究による最新のMRコンテンツを、Microsoft HoloLens 2を使用して最先端テクノロジーを体験することができました。

参加者は、HoloLens 2を装着し、MRの世界を練り歩き、仮想空間の物体に触ったり操作したりしてMRコンテンツを体験しました。

このイベントは、MRの世界を気軽に体験してもらうために開催されたものです。

|XRを利用したエンタメ業界は今後どう発展する?

2023年には、VR/AR市場が世界で17兆円以上に成長すると予測されており、XR領域は高い成長が期待されています。

XRという言葉が使われるようになった背景には、それぞれの技術における境界線が溶け合ってきたから、と言えます。

たとえばMRに近いAR、VRに近いMRといった技術も登場し、それに伴う体験が創出される中で、より汎用性が高く利用できるXRという表現が必要となったといえます。

エンターテイメントに加えて、教育や医療などあらゆる領域でXRによるサービス開発が進んでいて、求人も多数見受けられてきたようです。

NTTぷららも、5Gを活用した音楽ライブのイベント演出「TECH LIVE」の実証実験を展開しており、ARやMRなどによる仮想世界を用いた幻想的な空間演出の開発を進めています。

XRエンタメは将来的に様々な広がりを見せ、人材はさらに求められていくでしょう。

|XRを活用してエンタメを楽しもう!

今回、ご紹介したXRエンタメの事例9選は、まだほんの一部に過ぎませんが、あらゆる企業や団体が、もっと楽しくエキサイティングな体験を目指してクリエイトしています。

XRはAR(拡張現実)、VR(仮想現実)、SR(複合現実)、MR(代替現実)を融合した技術であり、高度なツールを駆使して誰もが楽しめる空間を演出しています。

まずはご自身でXRエンタメを体験いただき、新たなコンテンツを生み出すきっかけにされてはいかがでしょうか?